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 昭和46年版 犯罪白書 第一編/第二章/七/1 

七 公務員犯罪

1 公務員犯罪の受理と処理

 公務員による犯罪には,公務員の職務に関して行なわれるもの(たとえば収賄)と,その職務に関係なく行なわれるものとがあるが,ここでは,その両者を含めた,公務員により行なわれる,すべての犯罪について述べることとする。I-63表は,昭和四一年以降,検察庁で新たに受理された公務員犯罪(道交違反を除く。)を主要罪名別に集計したものであるが,公社や公団の職員のような,いわゆる「みなす公務員」による犯罪は含まれていない。各罪名についてみると,職権濫用が昭和四一年において,その前後の年次に比して著しく増加しているが,これは,同年に,自己の処遇に関係のある公務員を,相次いで告訴した特殊な受刑者が少なくなかったことなどの理由に基づくものと考えられる。後にも述べるように,同罪については,本来犯罪の嫌疑の乏しい告訴事件が多いことに留意する必要がある。次に収賄は,四三年,四四年と増加を続けたが,四五年においては若干の減少をみている。この種犯罪は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられ,特定の被害者が存在しないため,きわめて潜在性が強く,その取締りが困難であるため,相当数の暗数がありうると考えられる。その他の罪名について,昭和四五年の数字を前年と比較すると,横領が減少しているが,窃盗,偽造が増加し,ことに窃盗は,昭和三八年以降最高の数字を示している。

I-63表 公務員犯罪主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和41〜45年)

 業務上(重)過失致死傷については,統計の都合で,四三年以前の年次を比較できないが,昭和四四年の受理人員九,四八七人が,前年の,同罪を含むその他の刑法犯の数字を上回っているのみならず,四五年の同罪の数字が四四年の同罪の数字を相当程度上回っているところより,その激増ぶりをうかがうことができる。以上の各罪種を合計した公務員犯罪全体は,四一年以降,逐年激増の傾向にあるが,その主たる原因は,自動車の普及による業務上(重)過失致死傷の増加によるものである。
 次に検察庁における公務員犯罪の処理状況を,最近五年間にわたってみると,I-64表のとおりである。

I-64表 公務員犯罪主要罪名別起訴:不起訴人員と起訴率(昭和41〜45年)

 各罪名別に,その処理状況をみると,まず,職権濫用の起訴率がきわめて低いことが目につくが,この種の事件の大部分は,さきに述べたように,警察,検察庁,裁判所,矯正施設などの職員に対する告訴,告発事件であって,もともと犯罪とならないもの,告訴,告発時にすでに公訴時効が完成しているものや,犯罪の嫌疑がないか,あるいは,不十分なものが多いためである。逆に,最も起訴率が高いのは業務上過失致死傷であるが,起訴の大半は,略式命令を請求したものである。したがって,実質的に,最もきびしい処理がなされているのは,起訴率が五割をこえている収賄をあげるべきであろう。一方,窃盗,詐欺,横領,偽造の起訴率は,あまり高いとはいえないが,これは,この種の公務員犯罪は,犯人が,おおむね初犯者で,被害も回復されており,再犯のおそれも少ない事例が多いことなどによるものであろう。