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2 保護 昭和四四年中の保護観察新受総人員のうち,その罪名が道路交通法違反,業務上または重過失致死傷である者の数は,III-160表のとおりで,新受総人員の二七・八%(一五,六五四人)にあたる。これを,保護観察の種別ごとにみると,保護観察処分少年四六・六%(一二,一一六人),少年院仮退院者〇・五%(二一人),仮出獄者一四・五%(二,七八四人),保護観察付執行猶予者一〇・二%(七三三人)となっており,とくに,保護観察処分少年についてみると,新受人員総数の半数近くが交通犯罪者によって占められていることとなる。
III-160表 保護観察新受人員中,交通犯罪を犯した者の数(昭和44年) 次に,これら交通犯罪を犯した保護観察対象者の種類を,昭和四一年以降について,道路交通法違反と,業務上(重)過失致死傷とに分けてみたのが,III-161表である。これによると,起伏はありながら,おおむね増加の傾向にあることが認められる。III-161表 交通犯罪の保護観察対象者受理状況(昭和41〜44年) さきの二つの表にみるとおり,交通犯罪を犯して保護観察の対象となる者の大半は,保護観察処分少年によって占められているが,III-162表に示すとおり,保護観察処分少年の新受人員総数が,漸減の傾向にあるのに対し,交通犯罪を犯して保護観察処分に付される少年の数は,逆に漸増の傾向にあるため,総数に占める割合は,昭和四一年の三一・〇%から,同四四年の四六・六%へと,大きく増加している。III-162表 交通犯罪により保護観察処分に付された少年(昭和41〜44年) このような事情に加えて,交通犯罪少年には,交通法規や安全運転に関する知識を欠き,あるいは,これを軽視する態度が共通してみられることなどから,現在,全国の約半数の保護観察所において,交通犯罪を犯した保護観察処分少年に対する効果的な処遇方法の一つとして,いわゆる集団処遇が採り入れられている。その具体的な方式は各地の実情に応じて異なっているが,たとえば,講話,映画,パネルディスカッションなどを通じて,交通事故の現状や原因を理解させるとともに,生活態度の是正と安全運転に必要な知識,技術を習得させることを目標とする合同交通安全講習,保護観察中に,再び同種の犯罪に及んだ者を対象に,交通の法令,構造テスト,運転適性検査などを行ない,その結果をふまえて基礎的再教育を行なう交通教室,対象者に自由討議させながら,安全運転に必要な基礎的知識と基本的な運転態度を習得させる地区交通安全座談会などの方法が採用され,かなりの効果をあげているとみられている。おわりに,これら交通犯罪を犯した保護観察対象者の保護観察終了時の成績を,昭和四四年について,保護観察終了者全員のそれと対比すると,III-163表のとおりである。これによると,例数のきわめて少ない少年院仮退院者を例外として,他のすべての種別において,交通犯罪者の方が,成績「良好」の占める割合が高く,「不良」の占める割合が低いという結果となっており,交通犯罪を犯した者の保護観察成績は,比較的良好であるということができよう。 III-163表 保護観察終了人員中,交通犯罪を犯した者の終了事由別状況(昭和44年) |