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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第三章/三/1 

三 少年の交通犯罪

1 概況

 自動車を運転しようとするには,公安委員会の運転免許を受けなければならないが,大型免許は原則として二〇歳,普通免許等は一八歳,二輪免許,原付免許等は一六歳に,それぞれ達しなければ与えられないこととされている。そのうえ,社会的にも,経済的にも,少年が自動車を運転する機会は,成人に比べてあまり多くないため,交通犯罪のうち,少年によって犯された事件の占める割合も,他の罪種に比べてさほど多くない。しかし,その内容をみると,無免許運転や,無免許運転の際に事故を起こしたものの占める割合が非常に多く,これが,少年の交通犯罪の特色となっている。
 III-147表は,警察から,道路交通法に違反するものとして,検察庁ならびに家庭裁判所に送致された事件(昭和四三年以降は,交通反則通告制度の適用を受けて,反則金を納付した者を含む。)について,最近五年間の総数と少年の占める割合をみたものであるが,昭和四四年は,少年の犯した道路交通法違反が五八一,九七九件で,全体の一四・一%を占めている。

III-147表 道路交通法違反少年事件累年比較(昭和40〜44年)

 昭和四四年における少年の道路交通法違反を態様別にみると,III-14図[1]のとおりであり,これを成人事件についてみた同図[2]と比較すると,その態様にかなりの相違のあることが明らかである。成人事件では,無免許運転が五・二%(前年は五・五%)にとどまっているのに対し,少年の場合には,この割合が二七・四%(前年は二六・一%)にも及んでいるのである。

III-14図 少年および成人の道路交通法違反の態様別百分比(昭和44年)

 次に,検察庁で既済となった人身事故事件の中に,受理時少年であったものの占める割合をみたのが,III-148表である。業務上過失致死傷については,少年の占める割合が,一四・三%ないし一七・五%であるのに対し,重過失致死傷では,四三・〇%ないし四九・四%と,半数近くが,少年によって占められており,無免許運転の多い少年の交通犯罪の特色を明らかにしている。

III-148表 既済事件の受理時少年人員(昭和40〜44年)

 交通犯罪を犯した少年が,家庭裁判所においてどのように処理されているかを,最近五年間についてみたのが,業務上(重)過失致死傷についてのIII-149表と,道交違反(自動車の保管場所の確保等に関する法律違反を含む。)についてのIII-150表である。これによると,検察官への逆送率は,業務上(重)過失致死傷で約三六ないし三九%,道交違反で約一三ないし一八%であるが,昭和四三年は,前年より,いずれも逆送率が低下している。これに対し,審判不開始または不処分に終ったものが,前者で六割に近く,後者で八割をこえており,逆送率の低下とうらはらに,いずれの場合にも,昭和四二年から四三年にかけて,その割合を増している。なお,その割合は少ないながらも,業務上(重)過失致死傷と道交違反のいずれについても,保護観察に付されるものが,年を追って増加していることが注目されるところである。

III-149表 業務上(重)過失致死傷の家庭裁判所終局決定人員と比率(昭和39〜43年)

III-150表 道路交通事件の家庭裁判所終局決定人員と比率(昭和39〜43年)