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2 交通事故事件の最近の傾向 III-131表は,昭和四四年の死亡事故事件のうち,その主たる原因が車両にある事件について,事故発生の原因となった違反ないし過失の内容を,態様別にみたものである。これによると,わき見運転が総数の二割をこえて最も多いが,酒酔い運転を原因とする死亡事故事件も,一四・八%と,原因中の第二位を占めていることが注目される。
III-131表 原因別死亡事故件数(昭和44年) この酒酔い運転は,もともと自動車を運転すること自体を禁止される状態にあったのに,あえて運転を開始する事犯であって,同表にみられるとおり,その危険性はきわめて高く,この種事犯に対して,きびしい取り締まりが望まれているところである。第六三回特別国会において成立した,「道路交通法の一部を改正する法律」(昭和四五年五月法律第八六号,同年八月二〇日施行)は,これまで酒酔い運転の法定刑が,一年以下の懲役または五万円以下の罰金とされていたのを,二年以下の懲役または五万円以下の罰金とし,また,これまで,特定の違反事件の刑を加重する事由となるにとどまっていた酒気帯び運転を,それ自体処罰の対象に加えることとしたほか,酒酔い運転,無免許運転等を命じ,あるいは容認した安全運転管理者等に対する法定刑を引き上げて,運転者のそれと同一とするなど,この種事犯の絶滅を願う世論にこたえたものということができよう。 次のIII-132表は,人身事故事件について,事故の主たる原因があるとされた自動車の種別ごとに,それぞれ一万台当たりの発生件数をみたものである。一般に,自家用のそれに比して,事業用の事故率がはるかに高く,ことに,ハイヤー・タクシーの属する事業用普通乗用自動車のそれが著しく高くなっている。また,自家用普通乗用自動車と軽四輪乗用自動車の事故率が,増加する傾向にあることは,いわゆるマイカー事故の増加を反映するものであろうか。二輪車についてみると,大型,高速力の自動二輪車の事故率が,軽自動二輪車以下のそれを大きく上回っていることが目立っている。次に注目されるのは,マイクロバスの事故率である。すなわち,自家用自動車の中では,マイクロバスの事故率が,他の車種を圧して最も高く,事業用自動車の中では,他のすべての車種の事故率が,昭和四三年から四四年にかけて減少しているのに,マイクロバスのそれのみが上昇をみせている。前記道交法改正に基づく同法施行規則の改正により,乗車定員一一人以上のマイクロバスの運転にも大型免許を要することとされたことは,このような事情を反映して,この種の自動車を運転する者の資質を向上させ,事故の防止を図ったものにほかならない。 III-132表 事故の主たる原因となった車種別人身事故率(昭和41〜44年) 次のIII-133表は,自動車による人身事故を,事故の類型別に分類して,最近四年間の状況をみたものである。これによると,いずれの類型についても実数の増加がみられるが,総数に対する構成比を比較すると,車両相互の事故は,昭和四一年には総数の五九・五%であったのが,逐年増加して,昭和四四年には六八・六%となり,一方,人対車両の事故の割合は,昭和四一年の三一・三%から,同四四年の二四・二%に減少している。このように,事故類型別にみると,最近の傾向としては,歩行者が被害者になることよりも,自動車間の衝突等の事故による被害者が増加していることである。なお,警察庁交通局の統計によると,車両相互の事故のうち,最も多いのは追突事故であり,出合いがしらの衝突がこれに次ぎ,人対車両の事故では,横断歩行中の事故が最も多く,路上への飛び出しによる事故がこれに次いでおり,この傾向は,例年ほとんど変わりがない。III-133表 事故類型別発生状況(昭和41〜44年) III-134表は,交通事故による死亡者と負傷者について,七大都市所在の都府県内における数が,全国総数に占めている比率を示したものである。これによると,死亡者と負傷者のいずれについても,おおむね,大都市の占める比率が減少して,交通事故事件の地方化ないしは全国化の傾向がみられるが,昭和四三年から四四年にかけて,全国の死亡者総数に占める七大都市所在都府県の比率が,わずかに増加していることが注目される。なお,昭和四三年から四四年にかけて,最も増加率の大きかった地域は,死亡者については,栃木県(四一・一%増)で,福島県(四〇・一%増)がこれに次ぎ,負傷者については,香川県(五四・八%増),宮崎県(四六・五%増)の順となっている。III-134表 全国および7大都府県の死傷者数(昭和40〜44年) ところで,年を追って増加する交通事故によって,被害を受けることの最も多いのは,どの年齢層の者であろうか。III-135表は,年齢層別に,それぞれ人口一〇万人当たりの交通事故による死傷者数を算出し,昭和四〇年と,四三年とについて比較したものである。これによると,一〇万人当たりの死亡者数では,六〇歳以上の老年層において,最も高い割合を示しているのに対し,負傷者数では,一六ないし二九歳の青少年層が最も高く,三〇歳台の者がこれに次いでいる。また,死亡者と負傷者のいずれについても,六歳から一五歳までの小・中学生層が,最も低い割合を示している。次に,昭和四〇年と四三年の二つの年次を比較してみると,負傷者については,人身事故事件の激増を反映して,いずれの年齢層においても,一〇万人当たりの数に,かなりの増加がみられるが,死亡者の発生する割合では,五〇歳以上の高年齢層と,自己の粗暴な運転の結果死亡することも少なくないと思われる,一六ないし一九歳の少年層において増加のみられるほかは,多少の増減はあるものの,おおむね横ばいといってよい推移を示している。III-135表 交通事故による死傷者の年齢層別発生状況(昭和40,43年) |