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 昭和45年版 犯罪白書 第二編/第二章/二/2 

2 処遇の概要

 婦人補導院における処遇は,在院者が社会生活に適応するために必要な生活指導と職業補導,さらに,更生の妨げとなる心身の障害に対する医療処置を行なうことに,重点がおかれ,各個人の特性に応じた処遇が行なわれている。
 生活指導は,院内生活のすべてを通じて行なわれ,各種の教育的行事やクラブ活動によって,徳性と情操の向上が図られている。
 なお,篤志面接委員により,精神的な悩みの解決や職業相談なども活発に実施されている。
 在院者のほとんどは,知能が低く,婦人として自活するに足りる職業の知識と技能の習得は困難なので,職業補導のねらいは,正常な職業生活になれさせ,勤労意欲を高めることにおかれている。職業補導としては,家事サービス,園芸,洋裁,手芸などのほか,施設の日常用務である炊事,清掃,洗濯および補綴なども行なわせているが,社会の需要にそっており,知能の低い者にも習得が容易であることから,家事サービスの訓練に重点がおかれている。
 職業補導を受けた者に対しては,職業補導賞与金が支給される。昭和四四年の出院者について,出院時の支給額をみると,一〇九人中,七〇人が五,〇〇〇円未満であり,六,〇〇〇円以上の者は五人である。
 新収容者については,心身両面の検診を行なっている。これによると,性病にかかっている者が四三・〇%,性病以外の傷病が三二・六%で,疾患のなかった者は,二四・四%にすぎず,傷病を有する者の割合は,若干増加の傾向にある。更生のためには,まず,この疾患の治療が必要とされるが,収容期間の関係で,未治ゆのまま出院せざるをえない者の割合が,昭和四四年では,性病で四六・〇%,その他の傷病で二〇・〇%であり,性病でかなり高率になっているのが現状である。
 また,出院者の帰住先についてみると,昭和四四年の出院者一〇九人のうち,夫または親族のもとに帰住している者は,三四人(約三〇%)にすぎず,その他の者は,知人,雇傭主,婦人保護施設,病院などに帰住しており,帰住地の環境整備を必要とする者が多い。
 このように,在院者の中には,心身に障害のある者や帰住地の環境に恵まれない者が多く,さらに,処遇期間も六月に限られているなど,その処遇の効果をあげるには,種々の困難な事情がある。補導処分の効果を十分発揮するためには,処遇面に改善工夫の必要なことはいうまでもないが,退院後も,関係各機関の協力によって,社会復帰のための指導や援助の施策を進めることが必要であろう。