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 昭和45年版 犯罪白書 第一編/第二章/三/1 

1 精神障害者に対する措置状況

 わが国における最近の精神障害者数は明らかでないが,昭和三八年当時でも,厚生省の行なった精神衛生実態調査によれば,全国推定数は一二四万人とされ,必ずしも少ない数字ではない。精神衛生法により,都道府県知事は,医療および保護のために入院させなければ,その精神障害のために自身を傷つけ,または他人に害を及ぼすおそれがあると認めた精神障害者を,本人および関係者の同意が得られなくても,強制的に病院に入院させることができることになっている(同法第二九条,以下,これを「措置入院」という。)。この措置入院による入院患者は,昭和四五年二月末現在で,七六,五一九人であるが,前年同期に比べて,一,五四一人増加しており,精神科病床数の約三分の一を占めていることになる。
 次に,精神衛生法によれば,精神障害者またはその疑いのある者を知った場合は,誰でも,その者について,精神衛生鑑定医の診察および必要な保護を,都道府県知事に申請することができる(第二三条)とされている。また,警察官は,これらの者を職務執行中に発見したとき(第二四条),検察官は,これらの者について,不起訴処分を行なったとき,または,自由刑の実刑の言い渡し以外の裁判が確定したとき等(第二五条),保護観察所の長は,保護観察の対象者がこれらの者であることを知ったとき(第二五条の二),矯正施設の長は,これらの者を釈放・退院または退所させようとするとき(第二六条),それぞれ都道府県知事に通報の義務を負っている。
 右に述べたような申請または通報について,最近一〇年間の統計を示すと,I-39表[1]および[2]のとおりである。一般からの申請は,昭和三六年を頂点として,その後,しだいに減少しているが,警察,検察,保護,矯正関係からの通報件数は急激に増加し,昭和四一年の八,〇七六人を頂点として,その後は,七,〇〇〇人台を上下している。申請または通報に基づいて精神障害者と認定された者の数も同様の傾向をもって増減している。

I-39表 精神衛生法による申請・通報件数および精神障害者数