昭和四四年における刑法犯について，主要罪名別に，その発生と検挙の状況をみたのが，I-10表であり，このうち，発生件数の罪名別比率を円グラフにしたのが，I-5図[1]である。昭和四四年の刑法犯発生件数一，八四八，七四〇件のうち，最も多いのは窃盗で，全体の五四・五％(昭和四三年は五六・〇％，以下同じ。)を占め，これに次ぐのが，業務上(重)過失致死傷の三二・三％(二九・三％)である。続いて，詐欺の三・二％(三・五％)，傷害・同致死の二・九％(三・三％)，暴行の一・八％(二・一％)，恐喝の一・〇％(一・一％)となっており，殺人，強盗，強姦，放火などの凶悪犯罪の比率は，きわめて少ない。I-5図[2]は，試みに一〇年前の昭和三四年における，刑法犯発生件数の罪名別比率を円グラフにしたものであるが，さきのI-5図[1]と比較すると，業務上(重)過失致死傷の占める比率の増加が顕著である。

I-10表　主要罪名別刑法犯の発生・検挙件数と検挙人員(昭和43,44年)

I-5図　主要罪名別刑法犯発生件数の百分比

　次に，同じ表によって検挙率をみると，刑法犯全体の検挙率は六八・七％で，前年のそれが六九・二％であったのに比較して，やや低下している。罪名別にみると，業務上(重)過失致死傷の九九・九％をはじめ，殺人，横領，強姦・同致死傷，暴行，傷害・同致死の検挙率がいずれも九〇％以上となっているが，発生件数の過半数を占める窃盗の検挙率が四五・〇％と低く，しかも，前年の検挙率四七・五％より低下していることが，刑法犯全体の検挙率が低下したおもな原因となっている。
　次に，同じ表の検挙人員の罪名別比率を円グラフにすると，I-6図[1]のとおりである。昭和四四年の刑法犯検挙人員九九九，九八一人のうち，最も多いのは，業務上(重)過失致死傷で，総数の六二・五％を占め，これに次ぐ窃盗の一六・〇％をはるかに上回り，次いで傷害・同致死の六・七％，暴行の三・九％，詐欺の一・六％，恐喝の一・四％の順となっている。以前は，刑法犯の検挙人員中最も多いのは窃盗であり，毎年総数の三〇％以上を占めていたのであるが，昭和三九年以後は，業務上(重)過失致死傷が窃盗をしのぐこととなり，昭和四二年は総数の五〇・一％，四三年は五七・七％と，その比率が上昇し，昭和四四年には，ついに総数の六割をこえるに至った。さきのI-5図[2]と同様，昭和三四年の検挙人員の罪名別比率を円グラフにしたのが，I-6図[2]であるが，昭和四四年のそれと比較すると，右のような推移が明らかとなろう。

I-6図　主要罪名別刑法犯検挙人員の百分比