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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第四章/五/2 

2 少年の保護観察

 少年に対する保護観察の実施状況は,概括的には,すでに本編第四章で述べているので,ここでは,その他の重要な事項のみをとりあげることにする。

(一) 概況

(1) 保護観察処分少年

 保護観察処分少年とは,犯罪や非行があって,家庭裁判所の,保護観察に付する処分を受けた者である。
 昭和四三年中に,新たに保護観察処分を受けた少年の数は二八,五四九人であり,同年末現在の保護観察処分少年は六〇,四七六人で,全保護観察対象者総数(一〇〇,五八五人)の六〇・一%を占めている。
 昭和四三年の保護観察処分少年の新受人員について,年齢層別および性別にみると,II-229表のとおりである。男子では,年長少年(一八歳以上)が六二・八%と,きわめて高い割合を占めている。これに対し,女子では,中間少年(一六-一七歳)と年長少年とが,いずれも四〇%台で,ほぼ同じ割合となっている。保護観察処分少年の新受人員について,最近五年間の年齢層別の推移を示すと,II-12図のとおり,年長少年が,年少少年(一五歳以下)および中間少年をかなり上回って,顕著な増加傾向を示している。

II-229表 保護観察処分少年の年齢層別性別人員(昭和43年)

II-12図 保護観察処分少年の年齢層別構成の推移(昭和39〜43年)

 昭和四三年の保護観察処分少年の新受人員について,その行為別状況をみると,II-230表のとおりで,最も多いのは,窃盗の二九・五%,次いで,道路交通法違反の二八・二%となっているが,とくに道路交通法違反がこのように高い割合を占めていることが注目される。

II-230表 保護観察処分少年(新受人員)の行為別状況(昭和43年)

(2) 少年院仮退院者

 少年院仮退院者とは,地方更生保護委員会の決定により,少年院から仮退院を許された者である。
 昭和四三年中に,新たに仮退院を許され,保護観察を受けた者の数は五,〇一六人であり,同年末現在の少年院仮退院者は七,七七七人で,全保護観察対象者総数の七・七%を占めている。
 昭和四三年の少年院仮退院者の新受人員を,年齢層別および性別にみると,II-231表のとおりで,年長少年では,男子が七三・一%,女子が六二・三%と,いずれも,高率であるが,中間少年および年少少年では,保護観察処分少年と同じく,女子の割合が,男子よりも高くなっている。

II-231表 少年院仮退院者の年齢層別性別人員(昭和43年)

 最近五年間の年齢層別の推移からは,II-13図によれば,年長少年の顕著な増加傾向と中間少年および年少少年の減少がみられる。

II-13図 少年院仮退院者の年齢層別構成の推移(昭和39〜43年)

 昭和四三年の少年院仮退院者の新受人員について,行為別状況を示すと,II-232表のとおりで,窃盗が五二・三%で最も多く,保護観察処分少年のそれが二九・五%であるのに比べて,かなり高い割合を示している。

II-232表 少年院仮退院者(新受人員)の行為別状況(昭和43年)

(二) 保護観察の成績等

(1) 保護観察処分少年

 最近五年間に,保護観察を終了した保護観察処分少年について,終了事由別に,その人員をみると,II-233表のとおりである。これによれば,昭和四三年の終了人員のうち,成績良好により保護観察を「解除」された者は三四・一%であり,「期間満了」で終了した者が五五・九%である。再非行により刑事処分または新たに保護処分がなされた場合に,競合する処分を調整するため,保護処分の「家裁取消し」となった者が九・六%,「その他」の事由によって保護観察を終了した者が〇・四%である。さらに,「期間満了」で終了した者について,終了時の保護観察成績をみると,「良」が,終了人員総数の一四・五%,「やや良」が一一・五%,「普通」が一七・九%,「不良」が二・〇%,「所在不明」が六・七%である。また,最近五年間の保護観察終了事由別の推移においては,「解除」・「良」・「やや良」を合計した,いわゆる良好群が増加し,「不良」・「所在不明」・「家裁取消し」を合計した,いわゆる不良群の減少がみられ,好ましい傾向を示している。

II-233表 保護観察処分少年の保護観察終了事由別人員累年比較(昭和39〜43年)

(2) 少年院仮退院者

 最近五年間に,保護観察を終了した少年院仮退院者について,終了事由別に,その人員をみると,II-234表のとおりである。昭和四三年の終了人員のうち,成績良好により「退院」を許され,保護観察を終了した者が二・六%,「期間満了」で終了した者が七六・七%,「家裁取消し」となった者が一九・四%,遵守事項違反によって,少年院に「戻し収容」された者が〇・八%となっている。さらに,「期間満了」で終了した者について,終了時の保護観察成績をみると,「良」が,終了人員総数の一三・三%,「やや良」が一二・三%,「普通」が二五・五%,「不良」が五・一%,「所在不明」が一〇・九%となっている。

II-234表 少年院仮退院者の保護観察終了事由別人員累年比較(昭和39〜43年)

 また,終了事由により,良好群(退院・良・やや良)と,不良群(家裁取消し・戻し収容・不良・所在不明)とに分けて,両群が占めている割合をみると,良好群が二六・七%,不良群が三六・一%となる。これを,良好群が六〇・一%,不良群が一八・四%であった保護観察処分少年と比較すると,少年院仮退院者の成績は,良好とはいえない。このように少年院仮退院者の成績が悪いのは,少年院に送致される者の中に,後で述べるように,資質や環境の面に問題のある者が多いためと考えられる。
 なお,最近五年間の終了事由別の推移では,「退院」により保護観察を終了した者の漸増と「不良」の成績で終了した者の漸減がみられるが,これも,さほど顕著な傾向とはいえず,それ以外の終了事由についでは,年次によって変動を示している。

(三) 保護観察の対象少年

 昭和四三年中に,保護観察を終了した保護観察処分少年(三二,六六九人)と,少年院仮退院者(六,七五七人)について,その資質および環境の状況を,昭和三九年中に,保護観察を終了した少年の状況を参考にして,みることにする。

(1) 精神状況

 保護観察の終了までに,少年鑑別所の鑑別または精神医の診断等が行なわれた者だけについて,その精神状況をみると,II-235表のとおりである。昭和四三年中に,保護観察を終了した保護観察処分少年(一五,七七一人)では,「正常」が六・八%,「準正常」が八三・八%,「精神障害」が九・四%である。これに対して,少年院仮退院者(六,一九二人)では,「正常」が三・二%,「準正常」が八一・二%,「精神障害」が一五・四%となっている。すでにみたように,少年院仮退院者の保護観察成績が,保護観察処分少年の場合に比ベて,必ずしも良好とはいえないのは,このように精神障害者の多いことも,その一つの理由として指摘されよう。また,少年院仮退院者において,精神病質者の占める割合は,昭和三九年よりもいくぶん高くなっていることに注意する必要があろう。

II-235表 保護観察処分少年・少年院仮退院者の精神状況(昭和39,43年)

(2) 保護観察を受けた回数

 昭和四三年の保護観察処分少年のうち,はじめて保護観察を受けた者は,II-236表のとおり九四・四%,二回目の者が四・八%,三回目以上の者が〇・六%である。他方,少年院仮退院者では,はじめて保護観察を受けた者が四八・二%,二回目の者が四四・八%,三回目以上の者が六・九%となっている。

II-236表 保護観察処分少年・少年院仮退院者の保護観察回数状況(昭和39,43年)

 このように,少年院仮退院者の半数以上が保護観察の前歴者であり,少年院仮退院者に再非行の傾向の強い者が多く含まれていることがうかがわれる。こうした保護観察の前歴者の処遇にあたっては,前回の保護観察の実施状況を,よく検討し,同じてつを踏まぬよう工夫することが望まれる。
 なお,昭和三九年の保護観察終了者に比べると,昭和四三年の保護観察処分少年,少年院仮退院者いずれにおいても,二回以上保護観察を受けた者の割合が,わずかではあるが減少している。

(3) 教育程度

 保護観察終了時の教育程度を学歴によってみると,II-237表のとおりで,昭和四三年の保護観察処分少年においては,義務教育未修了者の割合が三・〇%,中学校を卒業した者が六六・二%,そして,高等学校以上に進んだ者が三〇・七%である。これを,少年院仮退院者の学歴に比較すると,少年院仮退院者においては,義務教育未修了者が一二・二%,中学校を卒業した者が七七・二%,そして,高等学校以上に進んだ者が一〇・四%となっているから,少年院仮退院者は,保護観察処分少年よりも,教育程度が低く,この面においても不利な条件にあるものが多い。

II-237表 保護観察処分少年・少年院仮退院者の教育程度の状況(昭和39,43年)

 また,昭和三九年の保護観察終了者に比べ,昭和四三年の保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれにもみられることは,義務教育未修了者の減少と高等学校以上に進んだ者の増加である。これは,一般的な進学率の向上という社会的事情を反映したもので,今後,さらに増加の傾向をたどるものと考えられる。なお,高等学校以上に進んだ者のうちで,注目されるのは,保護観察処分少年の中で,高等学校を中途退学した者が増加していることである。

(4) 実父母の有無

 保護観察終了時の,実父母の有無の状況をみると,II-238表のとおりである。昭和四三年の保護観察処分少年では,「実父母あり」の者が,最も多く七三・五%を占め,次いで,「実父母のうちいずれかなし」の者が二三・二%,「実父母なし」の者が二・九%となっている。少年院仮退院者でも,「実父母あり」の者が最も多いが,しかし,その割合は保護観察処分少年に比べてかなり低く五七・七%にとどまり,「実父母のうちいずれかなし」の者が三五・七%,「実父母なし」の者が六・一%である。

II-238表 保護観察処分少年・少年院仮退院者の実父母の有無の状況(昭和39,43年)

 実父母の欠損の割合は,保護観察処分少年では二六・一%,少年院仮退院者では,四一・八%となっている。

(5) 居住状況

 保護観察終了時の居住状況は,II-239表のとおりで,昭和四三年の保護観察処分少年および少年院仮退院者の七〇%以上が,家族または親族と同居している。それ以外の保護観察処分少年では,少年院仮退院者よりも,単身で生活している者(三・四%),雇主宅に起居している者(一七・四%)の割合が,わずかながら高くなっている。他方,少年院仮退院者では,保護観察処分少年に比べて,保護委託先(おもに更生保護会)に起居している者(三・九%)の割合が高い。

II-239表 保護観察処分少年・少年院仮退院者の居住状況(昭和39,43年)

 また,昭和三九年の保護観察終了者との比較で注目されるのは,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれも,単身で生活している者や雇主宅に起居している者が増加していることである。これらの少年に対しては,親のもつ保護機能が及ばない場合が多いから,雇主に理解と協力を求めるほか,担当者がいっそう接触を密接にし,適切な指導と助言を行なうことが期待される。

(四) 道路交通法違反により,保護観察に付された少年の状況

 道路交通法違反により,保護観察に付された少年(道路交通法違反少年)の新受人員は,II-240表のとおりで,近年,著しい増加を続けている。昭和四三年の道路交通法違反少年の新受人員は八,〇六三人であり,保護観察処分少年の新受人員総数の二八・二%を占めている。

II-240表 道路交通法違反により保護観察処分に付された少年(昭和39〜43年)

 最近五年間における,道路交通法違反少年の保護観察の終了状況はII-241表のとおりである。昭和四三年では,「解除」された者が六二・六%を占めており,この割合は,同年に保護観察を終了した保護観察処分少年のそれに比較すれば,二倍に近い高率となっている。また,「期間満了」で終了した者の成績は,「良」が一〇・八%,「やや良」が七・七%であり,保護観察処分少年の終了人員総数の場合よりも低いが,これは,積極的に解除の措置がとられているためであろう。他方,成績「不良」が〇・八%,「所在不明」が二・二%,「家裁取消し」が二・九%であり,不良な状態で保護観察を終了する者の占める割合がきわめて低く,道路交通法違反少年の成績は,がいして良好といえよう。また,昭和四三年に「解除」された者について,保護観察の開始から解除までの経過期間をみれば,五六・三%の者が,一年以内に解除されている。

II-241表 道路交通法違反により,保護観察処分に付された少年の保護観察終了事由別状況(昭和39〜43年)

 なお,最近五年間の終了事由別の推移では,昭和四一年から,「解除」された者の増加と,「期間満了」で終了した者の減少がやや目だっているが,「家裁取消し」となった者は,年次によって,二%ないし四%台で増減し,明らかな傾向はみられない。
 道路交通法違反少年に対する特別な処遇の方法として,最近,とくに注目されているのは,保護観察官の専門性と技術とを活用して行なわれる集団処遇であり,全国のほとんどの保護観察所において,意欲的に実施されている。その形態は,さまざまであるが,多くは,本人,場合によっては保護者や雇主を含め,一〇人ないし五〇人ぐらいずつを集めて,交通法規とか,自動車の運転技術および車両構造に関する講話や,あるいは集団自由討議を,おもな内容として行なわれており,かなりの実績をあげつつある。
 ちなみに,昭和四三年における,東京保護観察所の道路交通法違反少年に対する集団処遇(集団講習)の状況をとりあげると,II-242表のとおりで,合同交通安全講習,交通教室,地区交通安全座談会の三種の講習を実施している。合同交通安全講習は,おおむね,すべての道路交通法違反少年を対象とし,交通事故の現状および原因を理解させ,生活態度の是正と安全運転とに必要な知識・技術を習得させる目的で,同保護観察所の管内を六ブロックに分け,一ブロック当たり,年間一回ないし二回実施している。また,交通教室においては,保護観察の期間中に,再び道路交通法違反があった者など,再教育の必要を認めた者に対して,毎月一回,講習が行なわれ,地区交通安全座談会では,二つの保護区の道路交通法違反少年の一部を,無免許者と免許取得者との二班に編成して,処遇の効果を検討しながら,毎月一回,班の成員を変えず,継続的に実施している。

II-242表 道路交通法違反少年の集団講習実施状況(昭和43年)