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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第二章/二/1 

1 収容状況

 補導処分による収容期間は,売春防止法第一八条によって六か月と定められている。
 昭和三三年五月,婦人補導院が発足して以来,一一年間の入院状況は,II-128表のとおりで,昭和四三年末までの新入院者は,二,七六二人であり,昭和三五年の四〇八人を頂点として,逐年減少している。昭和四三年の新入院者は,一二三人で,前年に比べて二七人の減少となっており,最も多かった年の約三〇%にすぎない。

II-128表 婦人補導院入院状況(昭和33〜43年)

 入院者の入院度数についてみると,II-129表のとおりで,年次による大きな変動はみられない。昭和四三年では,初入院者が,総数の六一・〇%を占め,二度目の者が一八・七%,三度目の者が一二・二%,四度目の者が四・九%で,五度目以上の者は三・三%となっており,初入院者の割合が,前年までと比較して,わずかに増加している。

II-129表 婦人補導院新収容者入院度数(昭和39〜43年)

 新収容者の入院時年齢をみると,II-130表のとおりである。年により変動はあるが,二五歳から三四歳までの者が例年最も多くなっている。しかし,三五歳以上の高年齢者の占める割合は,昭和四三年では,四三・一%と,五年前の三八・七%よりかなり増加し,最近における新収容者に,年長者増加の傾向がうかがえる。

II-130表 婦人補導院新収容者の年齢別人員(昭和39〜43年)

 知能検査に現われた知能指数の分布をみると,II-131表に示したように,昭和四一年では,知能指数四九以下の痴愚段階の精神薄弱が最も多かったが,昭和四二年と四三年では,知能指数六〇ないし六九の段階にある軽愚級の精神薄弱が最も多くなっている。知能指数六九以下の精神薄弱を一括してその比率をみると,過去五年間を通じて,在院者の半数以上を占めており,とくに昭和四三年では,その増加が目だっている。

II-131表 婦人補導院新収容者の知能指数別人員(昭和39〜43年)

 これに対し,一般社会人の知能指数の分布では,一〇〇を中心として九〇ないし一〇九の段階にある者が多いのであるが,在院者では,この段階にある者は,わずか四・九%で,知能指数四九以下の重症な精神薄弱者の比率一四・六%よりもはるかに少ないという異常な傾向を示している。これをまた,昭和四三年における一般女子新受刑者七七六人の知能指数と比較してみると,女子受刑者では,普通またはそれ以上と思われる知能指数を示す者が一三・八%で,在院者よりもはるかに多く,六九以下が四八・三%で,在院者よりも少ない。これによっても,婦人補導院の在院者に低知能者の多いことがわかる。
 次に,在院者の精神状況をみたのが,II-132表である。正常者と準正常者とを加えた割合が,昭和四三年では,女子受刑者の場合七七・七%であるのに,この表によると,在院者は四八・八%であり,不詳〇・八%を除く残り五〇・五%は精神障害者となっているが,この割合に例年大きな変化はみられない。また,精神障害者のうち,精神薄弱では,在院者四一・五%に対し,女子受刑者で九・七%,精神病質(精神病質傾向を含む)では,在院者九・〇%に対し,女子受刑者三・七%で,いずれも在院者の方がはるかに高率である。

II-132表 婦人補導院新収容者の精神状況(39〜43年)

 このように,精神状況の面から,一般女子受刑者と比較しても,婦人補導院の在院者は,知能においても,性格の面においても,多くの問題をはらんでいることが理解される。