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 昭和44年版 犯罪白書 第二編/第二章/一/2 

2 受刑者の収容状況

(一) 収容人員

 刑務所および拘置所の収容者には,受刑者および未決拘禁者(被告人・被疑者)のほか,死刑確定者,罰金未納による労役場留置者などがある。
 昭和四三年における一日の平均収容人員は,五六,二五七人で,昭和四二年の一日平均収容人員六〇,八三七人に比べると,四,五八〇人減少している。このうち,女子は,一,三二九人で,全体の二・三%にあたる。
 この全収容人員中の八五・四%にあたる,四八,〇九四人は受刑者で,これも前年に比べて,三,八三四人の減少である。昭和三九年以降の,刑務所および拘置所における各種収容者の一日平均収容人員ならびに昭和二〇年以降の,全収容者と受刑者の推移は,II-54表およびII-5図に示すとおりである。いずれも昭和二五年を頂点として,昭和四〇年まで漸次下降し,昭和四一年にやや増加を示したが,その後は再び減少している。

II-54表 刑務所・拘置所一日平均収容人員(昭和39〜43年)

II-5図 一日平均収容人員累年比較(昭和20〜43年)

(二) 新受刑者

 裁判の確定により,一年間に,新たに入所した受刑者を新受刑者という。この中には,死刑の執行を受けた者が含まれ,その執行前は死刑確定者として扱われている。

(1) 人員数

 昭和四三年の新受刑者数は二九,四〇二人である。
 新受刑者数は,戦後,昭和二三年には七万人をこえたが,これを頂点として,その後は多少の起伏はありながらも漸次減少し,昭和三九年には三二,七五七人となり,昭和四〇年,同四一年には一時再び増加をみせたが,昭和四二年には三〇,六一七人と減少に転じ,昭和四三年には前年より一,二一五人減少して,戦後の最低人員を示した(II-6図参照)。

II-6図 新受刑者人員累年比較(昭和20〜43年)

(2) 性別

 昭和四三年における新受刑者のうち,女子は七七六人で,前年より一〇〇人減少している。女子の総数に対する比率は,II-55表に示すとおり,昭和三九年以降,二・九%をつづけていたが,昭和四三年においては,二・六%となった。

II-55表 新受刑者数と指数(昭和39〜43年)

(3) 年齢

 昭和四三年の新受刑者を年齢層別にみると,II-56表のとおりで,二〇〜二九歳の者が最も多い。この年齢層の者は,男子では四九・七%とほぼ半数を占めており,ついで三〇〜三九歳の者が三一・五%であるが,女子では,三〇〜三九歳の者が最も多く三四・九%を占め,ついで四〇〜四九歳の者の二八・五%であり,二〇〜二九歳の者は二五・五%にすぎない。

II-56表 新受刑者の年齢層別・性別人員の比率(昭和39〜43年)

 女子は,総じて男子よりは年長に傾き,四〇歳以上のものが,男子では一六・二%であるのに,女子では三九・五%に達している。

(4) 刑名と刑期

 新受刑者を刑名別にみると,II-57表のとおりで,昭和四三年においては,懲役は九一・七%で大半を占め,禁錮は七・九%,拘留は〇・四%である。

II-57表 新受刑者の刑名別人員と比率(昭和39〜43年)

 最近五年間の傾向をみると,懲役の割合が減少しているのに対し,禁錮の割合および実人員の増加が著しく,昭和四三年においては,禁錮の新受刑者は二,三三七人で前年より二七二人増加している。これは,交通事犯による業務上過失致死傷事件の激増によるものである。
 新受刑者の刑期はII-58表のとおりで,例年あまり大きな差異がない。昭和四三年においては,懲役刑については,六月以下が一二・六%,六月をこえ一年以下が三四・八%であって,刑期一年以下の者が半数近くである。五年をこえるものは三・三%であり,無期は四一人で〇・二%にあたる。

II-58表 新受刑者の刑期別人員の比率(昭和39〜43年)

 禁錮の刑期は,六月をこえ一年以下のものが最も多く,四九・〇%であり,六月以下は四一・三%であって,刑期一年以下の者が九割を占めている。

(5) 犯数

 新受刑者のうち,有期懲役受刑者について,刑法上の累犯者とそうでない者とに分けて,その比率をみると,II-59表に示すとおり,累犯は,昭和四三年においては,五一・三%で過半数を占めているが,昭和四二年の五一・五%に比べ,やや減少しており,最近五年間の推移をみると,累犯の占める比率はしだいに低下している。累犯の割合を男女にわけてみると,男子では,五一・三%,女子では五三・一%で,女子の割合が男子をややしのいでいる。

II-59表 新受刑者の犯数別人員の比率(昭和39〜43年)

(6) 入所度数

 新受刑者を入所度数別に分けてみると,II-60表に示すとおりである。昭和四三年においては,入所初度の者は,一三,八六二人(うち男子一三,五二八人,女子三三四人)で,新受刑者の四七・一%(男子は四七・三%,女子は四三・〇%)にあたる。

II-60表 新受刑者の入所度数別人員の比率(昭和39〜43年)

 最近五年間の傾向をみると,初度の者の割合が逐年増加し,昭和四三年には新受刑者総数のほぼ半数に近づいてきている。

(7) 刑事処分歴および保護処分歴

 昭和四三年の新受刑者のうち,刑事処分歴のある者は,六八%(二〇,〇〇一人)で,その内訳は,実刑が五二・九%,執行猶予が一五・二%である。執行猶予のうちでは,保護観察等の付されない執行猶予が多い。
 最近五年間の比率をみると,II-61表のとおり,刑事処分歴のある者の割合が逐年減少している。

II-61表 新受刑者刑事処分歴別人員の比率(昭和39〜43年)

 次に保護処分歴についてみると,II-62表に示すとおり,昭和四三年においては,二五・三%(七,四三二人)が前歴者である。その内訳は,少年院送致が二〇・三%,保護観察に付されたものが四・二%,教護院または養護施設送致が〇・七%である。

II-62表 新受刑者の保護処分歴別人員の比率(昭和41〜43年)

 最近三年間の推移をみると,保護処分歴のある者の比率は増加の傾向にあり,これは主として少年院送致の増加による。
 新受刑者中,初入受刑者に限って,その保護処分歴,執行猶予歴を調べてみると,II-63表のとおりである。少年院送致が一六・〇%,保護観察に付されたもの四・九%,教護院・養護施設送致〇・七%で,保護処分の前歴がある者は二一・六%である。

II-63表 初入受刑者の保護処分歴・執行猶予歴別人員と比率(昭和41〜43年)

 執行猶予歴のあるものは,三二・二%で,このうち単純執行猶予が二〇・一%,保護観察付執行猶予が一二・〇%である。
 最近三年間の推移をみると,保護処分歴においても,執行猶予歴においても,その前歴あるものは,わずかながら減少傾向にある。

(8) 罪名

 新受刑者の罪名をみると,II-64表および65表に示すとおりで,昭和四三年においては,刑法犯(準刑法犯を含む。)二七,四九二人(九三・五%),特別法犯一,九一〇人(六・五%)で,刑法犯が圧倒的に多い。

II-64表 新受刑者の罪名別人員の比率(昭和39〜43年)

II-65表 新受刑者男女別・罪名別人員と比率(昭和43年)

 刑法犯では,最も多いものが,窃盗の三九・九%であり,ついで傷害・暴行の九・七%,業務上過失致死傷の九・〇%,詐欺の七・八%,強姦の五・二%の順である。
 特別法犯のうちでは,道路交通法違反の二・八%が最も多い。
 女子について罪名別人員をみると,最も多いものは,刑法犯では,窃盗の四七・七%である。ついで,詐欺一〇・四%,殺人四・八%,放火二・三%である。特別法犯は,その大部分を売春防止法違反(二六・七%)が占めている。
 最近五年間の推移をみると,刑法犯では,業務上過失致死傷の増加の割合が著しく,強姦も増加しており,これに対し減少の傾向にあるものは,窃盗,詐欺,横領や恐喝などである。窃盗は,前述のように,刑法犯では依然として多数を占めているが,昭和三九年には四三・九%であったものが昭和四三年には四〇%を割るに至った。
 特別法犯においては,麻薬取締法違反が激減し,覚せい剤取締法違反,売春防止法違反も減少を示しているが,道路交通法違反が増加の傾向にある。

(9) 国籍

 昭和四三年の新受刑者の国籍については,II-66表に示すとおりで,外国人のなかでは朝鮮人が最も多く一,〇八〇人(三・七%)である。

II-66表 新受刑者の国籍別人員と比率(昭和39〜43年)

(10) 教育程度

 新受刑者の教育程度を,学歴についてみると,II-67表のとおりである。昭和四三年においては,不就学が二六三人(〇・九%)である反面,大学卒業は四一〇人(一・四%)である。戦後の学制改革以前に学業を修了した高年齢の者も含まれてはいるが,仮に中学卒業以上の者の率を出してみると,八一・六%となって,八割以上が義務教育を修了しており,しかもこの比率はしだいに高くなっている。

II-67表 新受刑者の犯時学歴別人員の比率(昭和39〜43年)

 なお学業を中途でやめた者の多いことが注目されるが,大学,高校についてみると,全員に対する割合で,卒業者が一二・三%に対して,中退者は,一一・三%である。中学校,小学校についてみても,中退者は八・二%である。中学校,小学校の中退者については,昭和三九年の一〇・八%より逐年減少している。

(11) 入所前職業

 新受刑者の入所前(犯行時)の職業についてみると,昭和四三年においては有職者は一八,九二三人(六四・四%)である。
 有職者の男女別の割合につき,最近五年間の推移をみると,II-68表に示すとおりで,女子は昭和四一年に減少した後再び増加の傾向にある。これに対し男子は,昭和三九年以降漸増傾向を示している。

II-68表 新受刑者のうち有職者の比率(昭和39〜43年)

 有職者の職業の内訳は,II-69表に示すとおりで,最も多いものは,技能工および生産工程従事者で,有職者総数の約三分の一にあたる。ついで,他に分類されない単純労働者二一・〇%,販売従事者一三・二%,運輸通信従事者一三・二%,サービス職業従事者八・四%などとなっており,この傾向は最近五年間同じである。

II-69表 新受刑者の犯行時有職者職業別人員の比率(昭和39〜43年)

(12) 人格特性

 新受刑者の人格特性を示す一つの指標として知能指数をみると,II-70表のとおりで,指数七九以下の,知能の低いことが予想されるものの比率は,男子では,総数の三六・七%,女子では,総数の五六・五%である。女子の受刑者の半数以上が知的な低格者と疑うことができる。一方,精神診断面からは,II-71表のとおりで,男女ともに,正常者はその半数に達していない。また,精神薄弱,精神病質など特殊な処遇を必要とする精神障害者は,男子では約一〇%,女子では約一四%に達している。

II-70表 新受刑者の知能指数段階別人員と比率(昭和43年)

II-71表 新受刑者の精神診断別人員と比率(昭和43年)

(13) 再入受刑者

 昭和四三年の新受刑者のうち,前に入所したことのある,再入受刑者は,一五,五四〇人で,新受刑者総数の五二・八%にあたる。
 再入受刑者の罪名を初入受刑者のそれと比較してみると,II-72表に示すとおりで,再入受刑者の五〇・九%が窃盗である。初入受刑者に比べ,窃盗の割合は高く,また詐欺(九・五%)も多い。

II-72表 新受刑者中初入者と再入者の罪名比較(昭和43年)

 再入受刑者について,前刑釈放後本犯までの期間(再入期間という。)を調べると,II-73表のとおりである。再入受刑者の一八・四%(二,八〇六人)は,再入期間が三月未満である。他方,九・四%(一,四三七人)は再入期間が五年以上である。再入期間の短い方から比率を累積してみると,再入受刑者の約三分の一は,前刑出所後六月未満で,また半数以上(五二・八%)は,一年未満で再入している。

II-73表 再入受刑者の前刑刑名別・再入期間別人員と比率(昭和43年)

 次に,前刑出所事由の仮釈放,満期釈放別に,再入期間を調べると,II-74表に示すとおりである。満期釈放者の方が再入期間の短い者の率が高く,とくに三月未満においては,仮釈放による者の一二・五%に対し,満期釈放による者は二三・九%である。

II-74表 再入受刑者の前刑出所別・再入期間別人員と比率(昭和43年)

(三) 入出所

 刑務所および拘置所における,昭和四三年の入出所総人員は,二五一,八三五人で,前年に比べ約二三,〇〇〇人減少しており,その内訳は,II-75表に示すとおりである。直入(刑務所,拘置所以外からの新たな入所をいう。)は,七七,六八二人で,前年より八千八百余人減少している。また,昭和四三年において,刑務所および拘置所に,新たに八三,一九一人が入所しているのに対して,八七,五〇〇人がそこから出所している。なお,昭和四三年においては,毎日全国で,六九〇人が,刑務所および拘置所に出入していることになる。

II-75表 刑務所・拘置所における入出所総人員(昭和39〜43年)

 次に,受刑者の入出所の状況についてみると,II-76表[1]および[2]に示すとおりである。

II-76表 受刑者の入出所事由別人員(昭和39〜43年)

 刑務所に入所する受刑者の入所事由には,新入所のほか,仮釈放取消し,刑執行停止取消し,労役場留置から刑の執行へ移行,余罪取調終了などの復所および施設間の移送による受入れがある。
 昭和四三年における入所人員は,施設間移送による受入れ三七,七六一人を除くと,三〇,九一六人で,その内訳は,同表[1]に示すとおりである。すなわち,その大部分である二九,四〇二人は,この一年間に新たに刑が確定して入所した新受刑者であり,仮釈放の取消しなどによる復所者は,一,五一四人である。前年に比ベると,新受刑者で,一,二一五人,復所で,二三二人減少している。なお,昭和四三年においては,毎日全国で,八〇・五人が,新たに刑が確定して入所していることになる。
 昭和四三年における出所人員は,施設間移送を除くと,三四,四三七人であり,前年に比べ一,九四三人減少している。受刑者の出所事由には,施設間移送のほかに,満期釈放,仮釈放,不定期刑終了による釈放,恩赦,刑の執行停止,逃走,死亡(死刑の執行を含む。)などがある。昭和四三年におけるこれら出所者の出所事由別内訳は同表[2]に示すとおりである。移送を除いた出所者の大部分を占める満期釈放者と仮釈放者とについてみると,満期釈放一三,七二三人,仮釈放一九,五二三人であり,この両者の合計は,三三,二四六人で,前年に比べ,一,六六三人減少している。最近五年間の,満期釈放と仮釈放の比率の推移については,II-77表に示すとおりで,昭和四三年においては,満期釈放四一・三%,仮釈放五八・七%で,昭和四一年以降,仮釈放になる者の比率が漸増している。昭和四三年においては,毎日,全国で九一人が満期釈放か,仮釈放で出所していることになる。

II-77表 釈放受刑者の満期釈放・仮釈放人員と比率(昭和39〜43年)

 これらの受刑者の受刑期間(実際に刑を受けた期間)をみると,II-78表のとおりである。昭和四三年において,受刑後一年以内に出所したものは,一四,四八九人であり,これは釈放受刑者の総数の四三・五%にあたっている。ちなみに昭和四二年のそれは,四三・八%である。

II-78表 釈放受刑者の受刑期間別人員と比率(昭和39〜43年)

 受刑期間を,満期釈放,仮釈放別にみると,昭和四三年においては,II-79表のとおりで,受刑期間が長くなるほど,仮釈放で出所する者の割合が大きくなっている。

II-79表 釈放受刑者の受刑期間別出所事由別人員(昭和43年)

 なお,釈放受刑者は,出所時に作業賞与金の支給を受ける。II-80表は,最近三年間の釈放受刑者の作業賞与金給与額別人員とその比率を示したものである。作業賞与金一万円以下を受ける者の比率が年々減少し,一万円をこえる金額を受ける者の比率が増加してきているが,昭和四三年においてその比率はなお,釈放受刑者総数の三分の一に達していない。また,昭和四三年において,出所時に衣類や旅費の支給その他の保護を受けた者の数は,三,八五七人で,釈放者の約一一・七%である。女子のみについてこれをみれば,釈放受刑者九三五人中一六四人(一七・五%)がこれらの保護を受けて出所している。

II-80表 釈放受刑者の作業賞与金給与額別人員と比率(昭和41〜43年)