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1 被疑事件の受理 (一) 概況 昭和四三年中の全国の検察庁における新規受理人員数(新規に検察庁で受理した司法警察員等からの送致・送付にかかる人員数および検察官の認知・直受にかかる人員数をいう。以下,本項において同じ。)は,四,〇四九,四四七人である。これを刑法犯(準刑法犯を含む。以下,本項において同じ。),道路交通法違反(以下,本項において,「道交違反」という。)および道交違反以外の特別法犯(以下,本項において,「特別法犯」という。)の別に,昭和四二年の数とともに示すと,II-1表のとおりとなる。総数の二五・二%が刑法犯であり,特別法犯が五・一%,道交違反が六九・七%を占めている。昭和四三年の数字を前年と比較すると,総数において二九・〇%減少しており,その内訳は,刑法犯の一四・九%増加,特別法犯一五・二%,道交違反三八・二%の各減少となっている。刑法犯の増加は,主として,業務上過失致死傷の増加によるものであり,特別法犯減少のおもな理由は,昭和四三年中に行なわれた全国的規模をもつ選挙が,同年七月の参議院議員通常選挙のみであったため,衆議院議員総選挙と統一地方選挙が施行された昭和四二年に比較すると,公職選挙法に違反した被疑者の新規受理人員が,大幅に減少したことによるものである。道交違反の著しい減少は,いうまでもなく,昭和四三年七月一日から,いわゆる「交通反則通告制度」が施行されたことによるものである。
II-1表 検察庁新規受理人員の内訳(昭和42,43年) 次に,昭和四三年中における刑法犯の新規受理人員数を,主要罪名別に分けて,前年と対比したのが,II-2表である。構成の割合をみると,業務上過失致死傷が最も多く,刑法犯新規受理人員総数の五六・九%を占め,次いで,窃盗一七・〇%,傷害・暴行一一・〇%,詐欺二・五%,恐喝一・六%,暴力行為等処罰に関する法律違反一・五%の順となっている。前年と比べて増加の著しいのは比率では,公務執行妨害の八六・四%,贈収賄の五三・五%,業務上過失致死傷の三一・八%であり,実数では,業務上過失致死傷が一四〇,一五三人と最高の増加を示している。反対に,前年に比べて減少をみたのは,賍物関係が減少率一八・三%,恐喝八・四%,強盗致死傷・同強姦七・五%の順となっており,実数では,傷害・暴行の三,五四七人減少(三・一%減)が最も著しい。II-1図[1]は,この昭和四三年の新規受理人員総数を,円グラフにしたものであるが,一〇年前の昭和三三年について,同様の試みをした同図[2]と比較すると,業務上過失致死傷の激増,財産犯の減少という最近一〇年間の犯罪の傾向を,顕著に示すものとなっている。II-2表 刑法犯主要罪名別検察庁新規受理人員(昭和42,43年) II-1図 刑法犯主要罪名別検察庁新規受理人員の百分比 次に,特別法犯の新規受理人員について,先のII-1図[1]・[2]と同様に,昭和四三年,同三三年の二つの年次を比較したのが,II-2図[1]および[2]である。昭和三三年には,食糧管理法違反や酒税法違反が,総数に対して,かなり高い比率を占めていたが,昭和四三年には,両者とも主要罪名の中から姿を消し(総数に占める割合が,いずれも〇・一%未満となっている。),その代わりに,自動車の保管場所の確保等に関する法律違反や,自動車損害賠償保障法違反といった,自動車に関する法律違反が,大きな割合を占めるに至ったことは,最近一〇年間の変遷を,最もよく現わすものであろう。II-2図 特別法犯主要罪名別検察庁新規受理人員の百分比 (二) 被疑者の逮捕と勾留 捜査は,任意捜査を原則とし,強制捜査は,法律の定める条件を満たす場合に限って行なうことができる。強制捜査には,捜索・差押・検証等もあるが,ここでは,被疑者の身体を拘束する,逮捕と勾留についてみていくこととしたい。
まず,最近五年間における刑法犯と特別法犯との検察庁の既済人員について,逮捕された者,そのうち勾留請求された者,さらにそのうち勾留された者の各人員数と,既済人員のうちに占めるそれぞれの割合をみたのが,II-3表である。これによると,逮捕された者等は,いずれも逐年減少の傾向にあることがわかる。昭和四三年についてみると,既済総人員一,二五〇,三六四人のうち,逮捕された者は,その一四・〇%にあたる一七四,四九七人である。すなわち,九割近い者が逮捕されず,いわゆる在宅事件として処理されているのである。この逮捕された者のうち,警察で釈放された者は,一七,八四六人で,警察における逮捕者総数の一〇・三%にあたり,残る八九・七%は,逮捕のまま,検察庁に送致されている。なお,検察庁ではじめて逮捕された者もあるが,その数は九六四人にすぎない。 II-3表 刑法犯・特別法犯の逮捕勾留別人員(昭和39〜43年) 検察官が身柄を拘束された被疑者を受理した後の身柄の取扱いは,勾留請求,逮捕中起訴または家庭裁判所送致,釈放などがある。昭和四三年中に,検察官が勾留請求した者の数は,一〇〇,三四二人で,その結果,勾留された者の数は,九七,一〇五人である。勾留請求が却下された者は,三,二三七人で,却下率は,請求総数の三・二%にあたる。なお,検察官が釈放した人員数は,三九,一二八人で,検察官が身柄事件として受理した被疑者総数の二五・〇%にあたる。勾留された者が,その後どのような処分を受けたかを,昭和四三年の統計によって調べてみると,II-4表のとおりで,起訴された者が六八・六%,起訴猶予一六・五%,家庭裁判所送致一〇・八%,嫌疑不十分などの理由で不起訴となった者が三・八%強,中止処分が〇・三%となっている。 II-4表 勾留被疑者の処分別人員(昭和43年) 次に,勾留された被疑者が,どの程度の期間勾留されているかについて,期間を五日ごとに区分した百分率をみると,II-5表のとおりである。勾留された者のうち,八四・〇%が一〇日の勾留期間内に処理され,残る一六・〇%が,勾留期間を延長されている。なお,この表で,二〇日をこえる者が三一五人いるが,このうち騒擾罪により勾留され,刑事訴訟法第二〇八条の二の規定によって勾留期間を再延長された四人を除く三一一人は,同一被疑者が,他の事件で引き続き勾留され,前の期間と合計して二〇日をこえることとなったものである。II-5表 被疑者勾留期間別人員(昭和43年) |