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1 精神障害者の概数とその処遇 最近においても,精神障害者による凶悪な犯罪の発生は,一般市民に深刻な恐怖感を与えており,犯罪対策を含めて,精神障害者対策の問題は,その重要性を,さらに広く認識されてきた感がある。
わが国の精神障害者の概数については,今日では,すでに古い数字となったが,昭和三八年に厚生省が行なった精神衛生実態調査の中に示されたものがある。これによると,精神障害者の全国推定数は,一二四万人であり,病種別では,精神薄弱(白痴および痴愚程度のもの)が四〇万人,精神病が五七万人,その他(精神病質等)の精神障害が二七万人という結果になっており,なお,精神病につき,病名別の概数は,精神分裂病二二万人,躁うつ病二万人,てんかん一〇万人,脳器質性精神障害二一万人,その他の精神病二万人となっている。 次に,この一二四万人の精神障害者に対して,どのような処置が必要であるかについては,精神病院に入院治療を要する者が二八万人,精神病院以外の施設に収容を要する者が七万人,在宅のまま精神科医の治療や指導を要する者が四八万人,在宅のままその他の指導を要する者が四一万人あったとされている。昭和四〇年に精神衛生法の一部改正が行なわれて,精神障害者をは握する体制の整備,通院医療費公費負担制度の創設,在宅精神障害者の指導体制の強化充実がはかられ,また,精神科病床数も,昭和四三年末で,二二七,一五一と,三八年末にくらべ約九万の増加となっているが,依然としてわが国の入院治療施設が不足しており,人口に比較した病床数にも著しい地方差のあることが問題となっている。 精神衛生法によれば,都道府県知事は,医療および保護のために入院させなければ,その精神障害のために自身を傷つけ,または他人に害をおよぼすおそれがあると認めた精神障害者を,本人および関係者の同意が得られなくても,強制的に病院に入院させることができることとしている(同法第二九条,以下これを「措置入院」という。)。この措置入院による入院患者は,昭和四四年二月末現在で,七四,九七八人であるが,前年同期に比べて,二,四九九人増加しており,精神科病床数の約三分の一を占めていることになる。 次に,精神衛生法によれば,精神障害者またはその疑いのある者を知った場合は,誰でも,その者について,精神衛生鑑定医の診察および必要な保護を,都道府県知事に申請することができる(第二三条)とされている。また,警察官は,これらの者を職務執行中に発見したとき(第二四条),検察官は,これらの者について,不起訴処分を行なったとき,または,自由刑の実刑の言渡し以外の裁判が確定したとき等(第二五条),矯正施設の長は,これらの者を釈放・退院または退所させようとするとき(第二六条),保護観察所の長は,保護観察の対象者がこれらの者であることを知ったとき(第二五条の二),それぞれ都道府県知事に通報の義務を負っている。 右に述べたような申請または通報について,最近一〇年間の統計を示すと,I-107表[1]および[2]のとおりである。一般からの申請は,昭和三六年を頂点として,その後,しだいに減少の傾向を示しているが,警察,検察,矯正,保護関係からの通報件数は,昭和四一年まで,逐年かなりの割合で増加し,昭和四二年にわずかに減少したが,昭和四三年には,再び増加している。ここで,当然のことながら,申請または通報の増減に比例して,精神障害者と認定された者の数が増減していることに留意する必要があろう。前記の通報件数の内訳としての,警察官,検察官,矯正施設の長,保護観察所長の各通報件数の推移をみると,実数も,全体的な増加の割合も,おおむね右に掲げた順になっているが,昭和四三年については,警察官による通報件数のみが増加し,その他は,わずかながら減少している。 I-107表 |