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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第三章/四/1 

1 BBS運動

 BBS運動とは,非行に陥り,または非行をするおそれのある少年をよくしようとする青年たちの運動で,このような少年たちのよき友人となり,ある場合には兄や姉の立場にたって,かれらの傷つき,いためつけられた心になぐさめと励ましとをあたえ,かれらに社会生活をつづけるうえでの正しい勇気と力とを育てていこうとする,青年の純粋な気持から発した奉仕運動である。
 この運動は,その目的を達成する方法として,まず,少年の「ともだち」になろうとする。そして,成立した「ともだち」関係の持続を通じて,少年に好ましい影響をあたえつつ,少年の反社会性や要保護性を除去していこうとする。これを,「ともだち活動」とよぶが,保護司の行なう保護観察活動に,その協力者としてBBS会員が参加し,青少年対象者のよきともだちとなってくれることは,保護司と対象青少年とのあいだの年齢的な隔たりからくるケースワークの不円滑化をおぎなう働きをはたすことになり,保護観察の充実と対象青少年の更生に役だつものとして大きな期待がもたれる。
 わが国のBBS運動は,終戦後間もない昭和二一年に,当時の京都少年審判所のきもいりで,同志社や立命館などの大学生たちによってはじめられた。それは,アメリカのビッグ・ブラザー運動の方式をとり入れたものではあるが,わが国情に適するようにあらためられ,京都少年保護学生連盟として組織され,活動を開始した。
 終戦後の混乱した世相のなかで目標をうしなって転落しゆく少年たちを救う運動が,青年の手によってわかわかしくはじめられたということは,わが国の少年保護の歴史に深く銘記されねばならぬところであろう。この運動は,おなじ気持をいだいていた各地の青年の魂をゆすぶり,BBS運動の組織が相ついで結成されるにいたり,昭和二三年には,全国九団体の代表が東京に会合して,BBS団体代表者会議を開催した。昭和二五年の六月には,法務省の支援のもとに,全国二四団体の代表が東京に参集して協議の結果,日本BBS運動団体連絡協議会が結成された。その後,しだいに強化されて,昭和二七年に,全国三九府県団体をもって日本BBS連盟が誕生したのである。
 BBS運動団体の組織は,その統合体として「日本BBS連盟」があり,その下に全国を八ブロックに分け,それぞれのブロックに「地方BBS連盟」,また,都府県には各一,北海道に三(函館のみ未結成),計四八の「都府県BBS連盟」が結成されている。そして,都府県BBS連盟は,それぞれ,その管下の地区BBS団体をもって構成され,地区BBS団体の数は,全国で三六六に達している。昭和三三年一一月一日現在の会員総数は,八,二六一人(男子六,五一二人,女子一,七四九人)で,うち一,六五三人が,現に,少年のよき「ともだち」として,活動をつづけている。
 BBS運動は,発足の当初から,保護観察のケースに対する協力を「目的達成のもっとも適切な場として」いるのであるが,さらに,その目的にかんがみ,余力のある場合には,家庭裁判所,児童相談所,警察署,学校などからの依頼も喜んでうけ,地元保護司の助言をうけつつ,協力をつづけている。また,「ともだち活動」のほかに,保護司会その他関係機関団体と協力して,活発な地域社会浄化活動を展開している。