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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/一/8 

8 少年事件の刑事裁判

 起訴された少年について,どのような刑事裁判があったか。その状況を見よう。
 昭和三三年中に,地方裁判所および簡易裁判所の通常第一審(これは,第一審のうち,略式命令および即決裁判で罰金の言渡をうけた者を除いたもの)で有罪の言渡をうけた刑法犯の被告人は八八,五四六人,うち犯行時の年齢が二〇才未満であった者は,一四才以上一六才未満者が三人,一六才以上一八才未満の者が二六九人,一八才以上二〇才未満の者が一,八八四人,合計二,一五六人で,被告人総数の二・四パーセントにすぎない。これら有罪の言渡をうけた者について,前科のあるものとないものとを比較してみると,一六才以上一八才未満では,前科者が一二人,初犯者が二五七人で,一八才以上二〇才未満では,前科者が一八八人,初犯者が一,六九六人である。成人のとくらべると,二〇才以上二五才未満の青年層では,初犯者が一八,〇二〇人,前科者が一三,九〇五人,二五才以上三〇才未満では初犯者が七,一五四人,前科者が一三,九七七人となっている。これでもわかるように,少年には,前科者の割合がいちじるしく少ない。しかし,ここで初犯者といわれる者のうちには,少年院送致や保護観察に付された前歴のある者を含むから,実際の初犯者はこの数字よりもはるかに少ないわけである。その他,実際に犯罪を行なって不開始や不処分に付された場合も考慮に入れると,純粋の意味での初犯者はもっと少ない。しかし,これらの者については指紋もとられていないところから,正確な数を確認できないため,統計が作られていない。
 有罪の言渡をうけた少年の年齢別と罪種別の比率をみよう。一八才未満の年少少年と一八才以上の年長少年について昭和三四年一月から六月までの分の法務省刑事局の調査によるIV-42表(年少少年)についてみると,この期間に懲役,禁錮の実刑に処せられた者は一二六人,懲役,禁錮で執行猶予となった者は八三人,罰金刑に処せられた者は三,二二七人で,その比率は,自由刑が四パーセント,執行猶予が二パーセント,罰金刑が九三パーセントとなっている。自由刑の実刑では,窃盗の四八人,猥褻,姦淫などの一七人,強盗の一七人,恐喝の一二人,殺人の一一人,傷害等の一一人などである。罰金刑は道路交通関係の二,八八一人がもっとも多く,過失傷害等の三三一人がこれについでいる。

IV-42表 刑事裁判所の少年事件処理別主要罪名別人員(年少少年)(昭和34年1〜6月)

 つぎに,IV-43表(年長少年)についてみると,自由刑の実刑に処せられた者の六四九人,執行猶予は三五九人,罰金は九,一九一人,その比率は,自由刑の実刑が六パーセント,執行猶予が三パーセント,罰金刑が八九パーセントで,年少少年にくらべて,自由刑言渡の比率がとくに実刑において,やや高くなっている。自由刑の実刑では,窃盗の二六五人がもっとも多く,強盗の一〇三人,猥褻,姦淫などの七三人,傷害等の五〇人,恐喝の四九人,殺人の四三人がこれにつづいている。年少少年に比し,強盗が強姦を上回っているのに注意したい。罰金刑は,道路交通関係の八,〇〇六人,過失傷害の一〇五三人がその大部分をしめるのは年少少年とかわらないが,傷害や暴行などで罰金刑に処せられた者が七八人にあがっているのが目だっている。なお,麻薬取締法違反で自由刑の実刑が五人と執行猶予が三人あること,覚せい剤取締法違反で罰金が一三人あることに留意したい。

IV-43表 刑事裁判所の少年事件処理別主要罪名別人員(年長少年)(昭和34年1〜6月)