前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第一章/一 

第四編  少年犯罪とその対策

第一章 少年犯罪の概観

一 序説

 罪を犯せば,普通の場合,刑法やそのほかの刑罰をきめた法令で裁かれるのであるが,少年については,どの国でも,特別な法律を設けて,刑罰ではなくて,教育や保護を主眼とする措置を講ずることになった。わが国にも,さきに,大正一一年の旧少年法があり,現在は,昭和二三年の少年法がある。現行少年法は,二〇才未満の者を「少年」とよび,これらの者が,犯罪をした場合には,家庭裁判所で審判してその措置をきめることにしている。また,罪を犯したというのではないが,保護者の正当な監督に服しなかったり,正当な理由がなく家庭に寄りつかないなどの非行があって,将来,罪を犯すおそれのある少年も,家庭裁判所が審判をして,その措置をさだめることができることになっている。さらに,罪を犯しても,一四才未満の者は法律上刑罰を科することができないが,これらの者に対しても,家庭裁判所は,審判でその措置をさだめる。
 つまり,少年法の対象となる少年は,三種に分けられる。犯罪少年,虞犯少年,触法少年である。この三種の少年に対し,少年法はその措置として保護処分をさだめる。犯罪少年に対しては,事情により刑罰を科する。保護処分というのは,性格の矯正と環境の調整とに関する処分である。すなわち,少年の犯罪や非行は性格と環境との合力であるから,少年の性格を矯正するとともに,少年に適切な保護的環境を開拓してゆくのが必要だという見地にたっているわけである。保護処分には,保護観察,養護施設または教護院送致,少年院送致の三種があるが,このほかに,実質上の保護的措置が行なわれる。都道府県知事または児童相談所への送致,審判の不開始または不処分(不起訴にあたる),他の家庭裁判所への移送,検察官への送致(刑罰が適当とおもわれるものにつき行なわれる)である。
 本編では,このように,少年法によって特別にあつかわれている部門につき,その経過と,措置とその内容などをみようというのである。