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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/三/2 

2 統計からみた三号観察

(一) 三号観察対象者の数

 昭和三三年中に,仮出獄をして保護観察をうけることになった者の数は,三二,〇四六人であるが,同年末の現在人員は,一三,〇八五人である。昭和二八年以来年間の新受の人員は,だいたい三万三千人前後であるが,その終了人員も,年間,ほぼ新受の数とみあって,新受と終了の数とのバランスがとれているため,現在員数は,一万三,四千人という線におちついている。しかし,III-39表にみるように,年間の総取扱件数は,五万台を前後し,五つの保護観察のうち第一位をしめているが,これは,三号観察は保護観察の期間が短かく,ために年間の出入りがはげしいからである。

III-39表 三号観察新受・年間取扱人員

(二) 三号観察対象者の特徴

 三号観察対象者の刑務所入所以前の前歴の有無をみると,その約七四パーセントまでが何らかの前歴をもっている(III-46表参照)。前歴種別は,法務統計によると,昭和三三年の延総数二四,九八六人の約八二パーセント(二〇,四三〇人)は刑事処分の前歴があり,また約一三パーセント(三,一三五人)は保護処分の前歴がある。保護観察の経験度数という点からすると,III-40表にみるように,その過半数すでに保護観察をうけた経験をもっている。現在の刑務所で再入者が受刑者の過半数をしめているのからみると,仮出獄者の多くがすでに保護観察の経験をもっていることは,あやしむに足りないであろう。なお,保護観察の期間は,残刑期間とさだめられているため,個々の事件によってまちまちだが,平均をみると,III-41表にみるように,約七ヵ月前後である。

III-40表 新受三号観察対象者の保護観察度数別人員と率(昭和33年)

III-41表 三号観察の平均観察期間

(三) 三号観察の成績―とくにその取消について

 保護観察の結果は,どうであろうか。III-20図III-42表43表は,これを示すものである。まず,III-20図は,昭和二四年七月以降保護観察の終了した者につき,年次別に期間満了と取消とに分け,期間満了をさらに成績によって「良好」「稍良」「普通」「不良」等に分類したものであるが,三号観察対象者の大多数は,一応大過なく期間を満了していること(そのうち成績普通のものが六四・五パーセント程度),再犯や遵守事項違反で仮出獄を取り消されたのは約四・七パーセント(昭和三三年)にすぎないことがわかる。また,III-42表は,昭和三三年における期間満了者と取消者との数とその内訳を比率でみたものである。つぎに,取消率をみると,III-43表のように,昭和二四年の一・三パーセントを最低として,近年は,年をおって少しづつながら,上昇の傾向にあるのは,注意を要する。

III-20図 保護観察終了時成績別人員百分率

III-42表 三号観察対象者の終了事由別人員と百分率(昭和33年)

III-43表 取消事件の人員と率

 なお,三号観察は,保護観察の期間が一般にみじかいので,そのあいだに罪を犯したり,遵守事項に違反したりするおそれは,四号観察にくらべて,少ないといえよう。
 保護観察は,本人の改善更生を助けるのが目的であるから,保護観察中はもとより,その終了後もふたたび罪を犯すことがないのが理想であるが,今日の段階では右に述べたように,犯罪による取消率はかならずしも減少していない。しからば,取り消された者に,つき,保護観察開始後どのくらいの期間で再犯し,または遵守事項違反となる非行をおこしたかを調べると,III-44表にみるように,保護観察開始後六ヵ月内に事故をおこしたのが七五パーセント前後となっている。このような傾向は,満期釈放者にもみられる一般的傾向なので,仮出獄を取り消された者にかぎらず,すべての仮出獄者を対象としてみると,前述のように,保護観察中の取消率は低いから,保護観察は,たとえその者が再犯に陥るとしても,再犯までの期間を多少延長させる効果はあったといえよう。つぎに,昭和二五年から昭和三三年までのあいだ刑務所に再入した者のうち前刑で仮出獄した者の数とその比率をみると,III-45表のとおりである。これによると,昭和二五年の七三・八パーセントから昭和三三年の六三・五パーセントまで,年をおって減少の傾向をみせている(前出二五〇頁,再入状況参照)。

III-44表 経過期間別三号観察中仮出獄を取り消された人員の百分率

III-45表 再入受刑者中の仮出獄者の人員と比率

(四) 三号観察の問題点

 三号観察で問題となるのは,保護観察の期間の短いことである。これは,その期間が残刑期間と同一であるためであるが,法務統計によれば,三月以内のものが約五八・四パーセント,これに六月以内のを含めると,約八〇・〇パーセントという程度に,大多数が短期間で,一月以内というのが約二四・七パーセント(以上いずれも昭和三三年)もある。このような短期間では,保護観察の実効をあげることは不可能にちかいというべきであろう。ドイツやスェーデンなどでは,仮出獄の保護観察の期間を残刑期と関係のない一定の期間(たとえば,一年)とさだめているが,これらの立法例は,大いに参考とされねばなるまい。