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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/一/1 

第三章 犯罪者の保護

一 保護観察とは何か

1 犯罪者に対する更生保護

 更生保護とは,罪を犯した者を自由社会のうちにおいて改善し更生させようとするもので,それには,国家の強制力をともなう保護観察と,強制力をともなわない更生(緊急)保護とがある。どちらも,「本人の年齢,経歴,心身の状況,家庭,交友その他の環境等を充分に考慮して,その者にもっともふさわしい方法を採らなければならない」(犯罪者予防更生法第二条)とか,「本人の年齢,性格,行状,経歴,環境等を考慮し,その者にもっともふさわしい方法」(更生保護の措置に関する規則第三条)によるなどとあるとおり,ケースワークなのである。
 更生保護は,近世における人間に関する諸科学の成果と刑事政策における自由刑に対する反省との帰結としてうまれた新しい犯罪対策である。そこでは,犯罪は,根本的には疾病や貧困とおなじく,社会に適応できなかった現象の一つとして考えられ,したがって,対策として,犯罪者をして,自由を拘束する施設のうちでなく,自由社会で生活をつづけさせつつ,本人とその環境とにはたらきかけて,その人格を開発し環境を調整し,本人が社会環境に適応するよう指導し援護することを考えているのである。