前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第一章/一 

第三編 犯罪者の矯正と保護

第一章 犯罪者処遇の回顧

一 三つの曲り角

 人類のながい犯罪対策の歴史のなかで,この四百年ばかりのあいだに,注目すべき変革があった。少なくとも,この間に三つの曲り角がある。一は,自由刑の発見,二は,少年裁判の創始,三は,保護観察など非拘禁的処遇の進出である。総じていえば,これは,一つにはヒューマニティ,一つには科学主義,このふたつにささえられた人間の見方の変化からでている。犯罪人は憎悪すべき存在であるにはちがいない。それはいまでもかわらない。しかし,憎悪をむきだしに犯罪人になげつけるかわりに,犯罪人のなかにも潜む人間性を信頼して,異質の敵としてではなく,同類の人間として考える,これがヒューマニティの考え方である。同時に,なぜそのような憎悪すべき存在がうまれるのか,どうすれば,その存在を消すことができるか,これが科学主義の考え方である。このふたつは,かならずしもその結論をおなじくしない。犯罪の対策は,このふたつのものの均衡のうえにうちだされる。のみならず,これに正義の問題がからみあう。この四百年のあいだに,犯罪対策に変革が訪れたとはいうものの,それは,ただひとすじの傾斜ではない。ときには,うしろ向きに,ときにはまえ向きに。そのデコボコの発展のうちで,三つの曲り角は,今日の犯罪対策をハッキリと特徴づけている。