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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第一章/二/3 

3 刑事訴訟法第二二六条(証人尋問請求)の運用状況

 捜査機関は,参考人の出頭を求めてこれを取り調べる権限をもっているが,犯罪の捜査にかくことのできない知識をもっていると明らかに認められる者が,任意の出頭または供述を拒んだ場合には,刑事訴訟法第二二六条により,検察官から裁判官に対して,その者を証人として尋問することを請求することができる。この請求があったときは,裁判官は,その者を召喚し,宣誓させたうえ,尋問するのである。この規定は,捜査にかくことのできない知識を有する者が捜査に協力し,真実発見のために証言すべき義務のあることを前提としたものである。この規定によって裁判官が証人尋問をした人数は,最高裁判所事務総局刑事局の「刑事事件の概況」(法曹時報一一巻一〇号)によると,昭和二八年に一四三人,昭和二九年に八一人,昭和三〇年に六五人,昭和三一年に四三人,昭和三二年に三四人と,しだい減少の傾向を示したが,昭和三三年になると,四二六人と大幅に増加した。これは,主として勤評斗争その他いわゆる公安事件について,検察官の取調に応じない参考人が激増したためである。真相究明のためには,国民は捜査に協力する義務があるといわねばならないから,この種の事件が増加するのは,好ましいとはいえないであろう。