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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第一章/二/1 

二 捜査

1 捜査の開始

 捜査開始の事由は,千差万別であるが,昭和三三年中に検察官が処理した事件(道路交通取締関係法令を除く)について,その捜査の端緒を大別すれば,II-1表のとおりである。これによれば,検察官の処理した事件のうち,九六・一パーセントまでは,警察が捜査の端緒をつかみ,これを検察官に送致した事件である。警察が捜査の第一次的責任を負う点からみれば,当然のことであろう。

II-1表 捜査の端緒別検察庁処理人員等(昭和33年)

 捜査の中心課題は,犯罪が行なわれたことと犯人と犯罪とのむすびつきとを証するにたりる証拠資料を収集するにあるが,かならずしもこれにかぎらず,広義の情状についても,環境の影響と犯人の素質との両面にわたって,広範囲に資料を収集しなければならない。しかし,現実の捜査活動は,犯罪事実の証明という点に主力がおかれ,情状の点については,犯人の経歴,犯罪の動機,犯罪の手段,態様,社会的影響など,ふるくから問題とされてきた点についての資料を収集するにとどまり,環境および素質に関する諸因子の刑事学的解明には,十分に手がとどいていない実情にある。これについては,現在の刑事学自身が科学として未成熟の段階にあることにも一半の責任があるが,このほか,捜査活動に対する法律上の制約とくに時間的制約が,資料の収集をおもうにまかせないことも,考慮に入れなければならない。
 捜査の端緒のうちで,注目すべきものは,告訴と告発である。昭和三三年における告訴,告発事件は,六三,〇一一人であるが,このうち,告訴は約六一パーセントにあたる三八,八九八人であり,告発は,約三九パーセントにあたる二四,一一三人である。