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 昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/六/4 

4 酩酊による交通犯罪

 自動車などのいわゆる酔っぱらい運転による交通事故の昭和二三年以降の推移をみると(I-70表),年々増加しているが,とくに最近は増勢がいちじるしく,昭和三四年には合計一一,五六五件,事故総数の五・八パーセントに達している。これは,徐行義務違反の三四・九パーセント,追越不適当の一〇・三パーセント,わき見操縦の九・七パーセント,操縦未熟練の六・六パーセントにつぐ多数をしめ,スピード違反の三・九パーセントをしのいでいる。また,被害者側に事故の原因があるものについて,その原因別をみると,歩行者などの被害者で酩酊徘徊中であったのが,四九八件で全体の四・九パーセントをしめ,車の直前直後の横断が五六・二パーセント,幼児のひとり歩きが七・二パーセント,路上遊戯が六・五パーセントに対し,これにつぐ数字を示している。このように,酩酊が交通事故に相当の多い原因をなしていることが,まず注目されてよいであろう。

I-70表 自動車等の「酔っぱらい」運転による道路交通事故件数

 そこで,昭和三四年の一月から六月まで半年間の警察庁の統計によって,酩酊運転,速度違反,無免許運転に対する取締りの実態をみると,第一に,酩酊運転は,当然のことながら少年よりも成人に多いこと,第二に,酩酊運転に対しては,送致率や行政処分の率が他の違反にくらべて高く,きびしい措置がとられているのがわかる。ここで酩酊運転というのは,単なる酒気をおびた運転ではなく,「酒に酔い正常な運転ができないおそれがあるにかかわらず」運転することである。参考までに,昭和三二年における過失傷害と交通犯罪とによる自由刑の実刑言渡人員の人口に対する率をイギリスや西ドイツと比較してみると,イギリスはわが国の約一〇倍,西ドイツは三〇数倍で,わが国の刑の寛大さがうかがわれる。なお,これらの国では,青少年のそれに対しても罰金その他で厳重な処置をとっているので,全般的に,わが国との差はいっそう大きいようである。