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 昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/六/2 

2 わが国の交通事情と交通事故

 わが国の交通事情を概観するために自動車の増加状況をみると,昭和二三年には約二三三,〇〇〇台であった自動車が,昭和三三年には,じつに,その一〇倍の約二三三二,〇〇〇台になっている。この間における世界各国平均の車輌数の増加は約二倍程度にすぎないから,いかに近時わが国で車輌が急激に増加したかがわかる。もっとも,四輪車以上の自動車の普及率は,わが国では国民一三一人に一台で,アメリカの二・六人に一台,イギリスの八人に一台,西ドイツの一七人に一台,イタリーの三〇人に一台にくらべて,いちじるしく低い。なお,原動機付自転車までいれると,現在のわが国には,国五〇万台をこえる車輌がある。
 ところで,このあいだに,わが国の道路事情はどのように改善されたかというと,過去十年間に国道と道府県道の総延長は約一三二,〇〇〇キロから約一四七,〇〇〇千キロメートルにふえている。しかし,有効幅員五・五メートル以上の優良道路はわずかに約七,五〇〇キロメートルを増したにとどまり,しかも,それがこれら主要道路のうちにしめる比率は,昭和三三年でも,わずか一七パーセントにすぎない。いかにわが国の道路事情が悪いかをものがたるものといえる。さらに,都市における自動車交通量をみると,日中一二時間の一日平均によると,東京の日比谷交叉点で昭和二四年に一九,七五四台であったのが,昭和三四年には一〇八,一八四台,つまり約五・四倍の交通量となっており,大阪の梅田新道を例にとると,このあいだに,交通量は約八倍にのぼっている。このような状況のもとに,交通事故は,I-65表のとおり,年々いちじるしく増加し,昭和三三年の事故件数は,昭和二三年の約八倍,昭和二三年から昭和三四年までの一一年間の事故件数は約九〇万件,死者約六万人,負傷者約七〇万人というおどろくべき数字を示している。自動車一万台あたりの死者の数を諸外国と比較すると,昭和二六年には日本が最高であったが,昭和三一年も日本三八・二人,イタリー二一・五人,フランス一九・四人,イギリス一〇・五人,アメリカ六・〇人で,依然日本が高率を示している。

I-65表 交通事故の件数と死傷者数等