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 昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/五/2 

2 外国人犯罪の概況

 検察庁の新規受理人員(I-62表)によって最近の外国人犯罪の動きをみると,特別法犯には増減があるが,刑法犯については大きな変化はなく,昭和三二年,三三年は,昭和三一年にくらべて,ある程度減少している。被疑者全数に対する百分率では,刑法犯は四パーセント余,特別法犯は三パーセントから二パーセントで,全人口が一パーセントにたりないところからすれば,いずれも相当な高率である。なお,これらの事件の起訴率(起訴数の起訴と起訴猶予との合計数に対する割合)は,昭和三三年は刑法犯につき約五八パーセント,特別法犯につき約七一パーセントで,全被疑者についての起訴率と対比すると,特別法犯のそれはかなり下回っているが,刑法犯については,おおむね同率である。

I-62表 外国人犯罪の検察庁新受人員

 外国人刑法犯の受理総数が,近ごろ漸減の傾向にあることは前述したが,減少の傾向の認められるものは,罪名別では,放火,窃盗,詐欺,賍物罪などで,とくに,賍物罪は,昭和三三年において,大幅に減少している。他方,増加の傾向の認められるものには,強制猥褻,強姦,恐喝,傷害などがあって,殺人と強盗とは一進一退である。つまり,日本人一般の犯罪とほぼ似た動きをみせている。特別法犯では,一般の場合と同様,覚せい剤取締法違反の減少がめだつ。外国人登録法違反は増減の波がはげしいが,これは,昭和二九年末と昭和三一年末とを中心とした大量の登録切替えにともない発生した違反数が,受理数の増加となってあらわれたものであろう。
 昭和三三年における外国人被疑者数の全被疑者数に対する割合を罪名別にみると(I-63表),公務執行妨害,賭博,傷害,傷害致死,強盗(強盗致死傷,強盗強姦をふくむ),賍物関係の各罪において,総数の比率を上回る比率を示し,賍物関係についてとくにいちじるしい。特別法犯は,総数において一パーセントをしめているのに対し,暴力行為等処罰に関する法律,決斗罪に関する件,爆発物取締罰則,火薬類取締法,麻薬取締法,覚せい剤取締法,酒税法,たばこ専売法などの各法令違反では,総数の比率を上回り,とくに,たばこ専売法,酒税法,麻薬取締法などいちじるしく上回っているのが注目される。

I-63表 外国人被疑者の検察庁新受人員等(昭和33年)