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2 犯罪者のうちの精神障害者の率 では,いったい,精神障害者のうちからどれくらいの率で犯罪者がでるのであろうか。あるいは,犯罪者のうちにどれくらいの率の精神障害者がいるのであろうか。この答を全国的な規模において正確な数字でだすのは,決して容易なことではない。精神衛生法の申請および通報の規定(第二三条,第二四条,第二五条,第二六条)によって,申請され通報された者の昭和二九年から昭和三三年までの五年間の平均は,一九,九三八件で,このうち第二四条,第二五条,第二六条による通報で精神障害者と認められたものについて,五ヵ年間の平均をとると一,七二三件となる。これを申請通報の総数の平均に対する比率でみると,八・六パーセントとなる。しかし,この数字だけから,精神障害の内容は明らかにされない。もし,精神衛生法の規定どおりに精神薄弱や精神病質をまで精神障害のなかに含めるならば,法律の規定による申請の数は,もっと多くなるはずである。年間一万人におよぶ少年院出院者のうちで,精神障害者の比率は三〇パーセントをくだらないという十分な根拠があるからである(IV-13図参照)。I-34表は,全国の少年鑑別所に収容された者についての精神診断の結果,これによっても,精神薄弱が一〇パーセント前後,精神病質が八パーセント前後だから,他の精神障害を加えると二〇パーセント前後となる。
I-34表 少年鑑別所における精神診断結果別百分率 裁判所,検察庁,警察などであつかう犯罪者のうち,精神障害者の比率は明らかでない。少年鑑別所における比率よりは低くなると推定されるけれども,精神衛生法による通報件数ほどに少ないとは,とうてい考えられない。I-35表は,心神喪失の理由で不起訴となった者,または,第一審で無罪となった者,および,刑の減軽事由として心神耗弱の認められた者の数である。もちろん,心神喪失や心神耗弱は刑法上の用語で,精神医学的な術語とは内容のちがったものであるが,心神喪失と認められた者の大部分は精神病者であり,心神耗弱とされた者のうちには,比較的重症の精神薄弱者が多い。I-35表 心神喪失と心神耗弱の人員 なお,そのほか,官庁統計のうち,犯罪原因または動機として精神異常の項目を設けているところもあるが,その判定は,精神医学の専門家によらないので,遺憾ながら,資料として信頼がおけない。そこで,種々の犯罪者について行なわれた専門家の手による調査研究の成果を整理しながら,精神障害と犯罪との関係を究明してみたい。 |