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 昭和42年版 犯罪白書 第三編/第二章/三/1 

三 少年の仮釈放および保護観察

1 少年の仮釈放

 少年の仮釈放には,少年院からの仮退院,少年のとき懲役または禁錮の言渡しを受けた者の少年刑務所からの仮出獄および少年のとき拘留の言渡しを受けた者の拘留場からの仮出場がある。
 このうち,少年の拘留刑は,皆無に等しいので,ここでは,仮退院と仮出獄について述べる。

(一) 少年院からの仮退院

 少年院からの仮退院は,原則として,少年院で処遇の最高段階に達した者について,本人の性格,行状,態度,施設内での成績,帰住後の環境等から判断して,保護観察に付することにより,その更生がおおむね期待できるようになったとき,地方更生保護委員会がこれを許すことになっている。ただし,処遇の最高段階に達しない者であっても,更生に努力し,本人の向上しうる段階の限度に達したと認められ,かつ,保護観察に付することにより,本人の更生がおおむね期待できるときも,仮退院を許可することができる。
 最近五年間における仮退院の申請受理と許否決定の状況については,すでに述べたが,これら仮退院者が,仮退院期間中に,非行を犯し,刑事処分または保護処分を受けた状況を,最近五年間について,各年次ごとにみると,III-106表のとおりである。仮退院当年では,四・九%ないし六・一%,仮退院後第二年まででは,一八・七%ないし二〇・七%に達している。この状況は,仮出獄者が仮出獄期間中に再犯等で仮出獄を取り消された状況が,それぞれ,一・八%ないし二・一%および三・六%ないし四・一%であるのに比べると,仮退院者は,きわめて高い率を示していることとなる。このことは,一般に,仮退院者の更生の困難さを示すものといえるであろう。

III-106表 少年院仮退院者の仮退院期間(保護観察期間)中の非行により処分を受けた者の状況(昭和37〜41年)

(二) 少年の仮出獄

 少年で,懲役・禁錮の実刑を科せられ,仮出獄の対象となる者は,昭和四〇年では,第一審で不定期刑の言渡しを受けた者八七六人,無期懲役刑七人,有期の懲役刑一一一人(七四〇人中執行猶予六二九人であるため),禁錮刑一〇人(三三四人中執行猶予三二四人であるため)計一,〇〇四人である(以上昭和四〇年司法統計年報による。)。すなわち,全体の八七・三%が不定期刑受刑者である。このように,少年の仮出獄では,不定期刑受刑者の仮出獄の占める率がきわめて高いので,ここでは,不定期刑受刑者の仮出獄についてみる。
 最近五年間における不定期刑受刑者で,仮出獄許可になった者は,III-107表のとおりで,仮出獄総人員のわずか三・二%ないし三・六%を占めるにすぎず,人員としては,昭和三七年の八五九人が最も多く,以後,累年漸減しているが,総人員中に占める割合は,ほぼ一定している。

III-107表 定期・不定期別仮出獄状況(昭和37〜41年)

 つぎに法務総合研究所が行なった不定期刑仮出獄者に関する調査(昭和三六年中に関東地方更生保護委員会が仮出獄許可の決定をした全不定期刑仮出獄者で,現に仮出獄をした一個の不定期刑のみを科せられた者について,昭和四二年一月現在で,法務省矯正局保管の指紋原紙によりその再犯入所状況を調べたもの)で,その再入状況をみると,III-108表のとおりで,不定期刑仮出獄者二〇一人中三三人(一六・四%)が仮出獄後一年以内に,二五人(一二・四%)が一年をこえ,二年以内に,再犯入所(仮出獄後実刑言渡しの日までに関するもの)し,五年間の累計では,八七人(四三・三%)が再犯入所しており,その成行きは,必ずしも良好とはいえない。また,仮出獄期間六月以内の者で,二二人(二八・六%)が,同じく六月をこえ,一年以内の者で,九人(一八・〇%)が,同じく一年をこえ,二年以内の者で,二人(三・七%)が,それぞれ,仮出獄後一年以内に再犯入所していて,仮出獄期間の短い者ほど,短期間に再犯入所する者が多いことがわかる。

III-108表 不定期刑仮出獄者の再入状況