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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第二章/三/3 

3 都市と犯罪

 一般的にいって,犯罪は,田舎よりも都会に多い。そして,都市の人口増加に伴って,犯罪も増加する。その根本的な原因として社会学者のあげる都市の特徴は,住民の異質性,人口の移動性,社会的または倫理的連帯性の欠如,匿名性,家庭や個人の孤立または無力化および多種多様の不良刺激の存在である。このような都市的性格の濃厚なものがスラム街,歓楽街その他の不良地域で,これらの不良地域が犯罪などの社会的培養基であることについては,クリフォード・ショオが,一九二六年にシカゴ市について,犯罪が同市のスラム街地域に集中していることを明らかにしたのが有名であるが,このほかにも,多くの同種研究が内外においてなされている。また,歓楽街の青少年不良化の影響力については,とくにバートが強調した。
 右に,犯罪は都会に多いといったが,これは,そこにも述べたように,一般的のことであって,近時の研究によれば,刑法犯の罪種別に検挙人員率をみると,窃盗,強盗,恐かつなどは田舎よりも都市に多く,暴行,傷害などの身体犯は,都市よりも田舎に多いとされている。都市には,混雑する百貨店や交通機関などがあり,これらは,万引,スリなどの発生を容易ならしめるであろうし,その他の財産犯についても,都市の方に発生を可能ならしめる条件が多いと考えられる。身体犯が田舎に多い理由は,田舎では,平素は人間関係が親密であるが,これに一度ひびがはいると,従来の親密に反比例して大きな反感がいだかれることになり,暴力沙汰が多く発生するのではないかと考えられる。なお,都市の犯罪問題に関連して流入少年の問題があるが,これについては別に述べた。