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令和2年版 犯罪白書 第7編/第2章/第1節/1

1 覚醒剤

我が国においては,法律上「覚醒剤」とされるのはアンフェタミンメタンフェタミン等であり,主にメタンフェタミンが乱用されている。主に無色又は白色の結晶性粉末であるが,氷砂糖のような結晶体のものや「ヤーバー」と呼ばれる錠剤型のものもある。鼻からの吸引,吸煙又は経口摂取のほか,液体に溶かして注射するなどの方法により摂取される。

結晶状の覚醒剤【写真提供:警察庁刑事局】
結晶状の覚醒剤
【写真提供:警察庁刑事局】

アンフェタミン及びメタンフェタミン(以下「アンフェタミン等」という。)は,摂取により,多幸感及び自信感が増大し,作業能力が向上するほか,眠気や食欲を抑えるなどの効果がある。一方,攻撃的行動,幻覚,妄想等のほか,頻脈,高血圧,発汗,高熱,瞳孔散大等を引き起こし,死に至ることもある。また,長期の摂取により,栄養失調及び口腔(くう)健康障害をもたらすほか,偏執性妄想を特徴とする覚醒剤精神病(アンフェタミン精神病)を発症することがある。精神的依存性が強く,使用を繰り返すことにより耐性(薬物を繰り返し摂取することにより,同様の効果を得るためにはより多くの薬物を摂取しなければならない状態をいう。)が形成される。離脱により,激しい疲労,過眠,食欲亢(こう)進等を引き起こすほか,抑うつ状態になり,自殺の危険性も高まる。