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令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/コラム8

コラム8 過剰収容に対応するためのハード面における工夫~平成16年版犯罪白書より~

刑務所等の過剰収容が問題となっていた平成16年版犯罪白書発行当時,同白書において,「過剰収容を抜本的に解消するためには,施設を整備して収容定員を確保するとともに,人的体制を整備することが必要になるが,新たに施設を建設するには多額の費用と長い期間が必要」とした上で,当面の対応として,様々な工夫がなされていることを紹介している。そのうち,ハード面の工夫を取り上げた同白書の本文,写真及び図について,以下のとおり,本コラムでほぼ原文のまま(写真は一部のみ掲載。「居房」・「雑居房」・「独居房」・「行刑施設」は,現在,それぞれ「居室」・「共同室」・「単独室」・「刑事施設」と呼ばれている。なお,図中の各矯正管区ごとの収容定員等は平成15年末現在のものである。)紹介することにより,当時の過剰収容への対応状況を理解する一助としたい。

【過剰収容に対応するためのハード面における工夫(平成16年版犯罪白書より)】
ア 居房の確保

被収容者が増加した場合に,まず問題となるのは,居房の確保である。定員を超える人員を収容しなければならないことから,多くの施設で,二段ベッドを設置して室内のスペースを確保した上,雑居房に定員(一般的には6名)を1名ないし2名超えて収容するなどの措置がとられている。また,やむを得ない場合には,独居房に2名を収容するいわゆる「2名独居」が実施されることもある。そのほか,倉庫,教室,集会室等を改修・模様替えして,居房として利用する施設も少なくない。

平成16年5月31日現在における二段ベッドの設置状況を見ると,医療刑務所を除く63施設(刑務所55,少年刑務所8)のうち48施設で雑居房に二段ベッドを設置しており,また,23施設で独居房に二段ベッドを設置している(法務省矯正局の資料による。)。

また,最近3年間において,模様替えによって既決収容定員を増加させた施設は,平成13年度が45施設(定員増1,377人),14年度が該当なし,15年度が23施設(同323人)である(医療刑務所を除く。法務省矯正局の資料による。)。

イ 工場,食堂等のスペースの確保

過剰収容の影響を受けるのは居房だけではない。受刑者の大半を占める懲役受刑者は,刑務作業に従事することとされているが,就業人員の増加に伴って工場内の作業スペースが不足するようになったため,教室等を模様替えして工場に変更したり,隣接する倉庫等を工場に併合して作業スペースを拡張し,あるいは,舎房通路の一部を作業場として利用するなどの措置がとられている。また,工場作業に従事する受刑者は,工場付設の食堂で昼食をとることとなっている場合が多いが,全員が食堂に入りきれないため,工場内の通路や作業スペースにテーブルを並べて食事をさせたり,他の場所を改修して食事場所として利用する施設も少なくない。