検察官が行う起訴処分には,公判請求と略式命令請求があり,不起訴処分には,<1>訴訟条件(親告罪の告訴等)を欠くことを理由とするもの,<2>事件が罪にならないことを理由とするもの(心神喪失を含む。),<3>犯罪の嫌疑がないこと(嫌疑なし)又は十分でないこと(嫌疑不十分)を理由とするもののほか,<4>犯罪の嫌疑が認められる場合でも,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないこと(起訴猶予)を理由とするものなどがある。
検察庁終局処理人員総数(過失運転致死傷等及び道交違反を含む。以下この節において同じ。)について,処理区分別構成比及び公判請求人員・公判請求率の推移(平成元年以降)は,3-1-2-4図のとおりである。検察庁終局処理人員総数は,元年以降,200万人台ないし220万人台で推移していたが,17年以降は減少し続けており,30年は99万6,145人(前年比6万7,175人(6.3%)減)であった。なお,その内訳は,公判請求8万3,768人,略式命令請求22万4,953人,起訴猶予56万8,392人,その他の不起訴6万3,931人,家庭裁判所送致5万5,101人であった。公判請求人員は,元年から6年まで減少傾向にあった後,7年以降,16年まで増加し続けたが,17年からは減少傾向に転じ,30年は前年より220人(0.3%)減少した。また,30年の略式命令請求人員は,ピークである2年(120万4,085人)の5分の1以下に減少している(CD-ROM参照。30年における罪名別の検察庁終局処理人員については,CD-ROM資料3-3参照)。公判請求率は,平成期を通じ上昇傾向にあり,とりわけ26年以降上昇して30年は8.9%(前年比0.5pt上昇)であった。
起訴,起訴猶予及びその他の不起訴の人員並びに起訴率の推移(平成元年以降)を,刑法犯,道交違反を除く特別法犯に分けて見ると,3-1-2-5図のとおりである。刑法犯の起訴人員は,元年から8年まで減少傾向にあった後,9年以降,18年まで増加傾向にあったが,19年以降は,年々減少し続けており,30年は6万8,153人であった。他方,道交違反を除く特別法犯の起訴人員は,元年以降,増加傾向にあったが,18年以降,減少傾向に転じ,30年は4万5,503人であった。
なお,平成期における検察庁終局処理人員の起訴猶予人員は,平成19年から年々減少しているが,前記のとおり,それを上回る勢いで略式命令請求人員が減少していることから,起訴率は,元年の73.6%をピークに,年々低下傾向にあり,30年は32.8%であった(CD-ROM資料3-2参照)。
平成元年・15年・30年における不起訴処分を受けた者(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)の理由別人員は,3-1-2-6表のとおりである。30年に起訴猶予により不起訴処分とされた者の比率は,15年と比較すると1.2pt,元年と比較すると5.7ptそれぞれ低いのに対し,嫌疑不十分(嫌疑なしを含む。)により不起訴処分とされた者の比率は,15年と比較すると1.0pt,元年と比較すると4.5ptそれぞれ高い(CD-ROM参照)。
検察庁終局処理人員総数,刑法犯及び道交違反を除く特別法犯の起訴猶予率の推移(平成元年以降)を見ると,3-1-2-7図のとおりである(過失運転致死傷等及び道交違反の起訴猶予率の推移については,4-1-2-2図CD-ROM参照)。起訴猶予率は,総数,刑法犯及び道交違反を除く特別法犯のいずれも,おおむね上昇傾向にあるが,道交違反を除く特別法犯は,総数と比べると一貫して低く,また,刑法犯は,9年までは総数よりも一貫して高かったものの,10年以降,一貫して低い。30年における総数の起訴猶予率は64.8%であった。なお,年齢層別の起訴猶予率の推移については,4-8-2-1図参照。