裁判員制度は,広く国民が刑事裁判の過程に参加し,裁判の内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解と支持が深まり,長期的に見て,司法がより強固な国民的基盤を得ることを目指し,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号。以下「裁判員法」という。)により創設され,平成21年5月21日から実施されている制度である。
裁判員裁判(裁判員の参加する刑事裁判)の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く。))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし,被告人の言動等により,裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって,そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には,裁判所の決定によって対象事件から除外される(平成28年において,同決定がなされた終局人員は5人であった。最高裁判所事務総局の資料による。)。また,27年6月に裁判員法が改正され(平成27年法律第37号),審判に著しい長期間を要する事件等を対象事件から除外することが可能となった(同年12月12日施行。28年にはそのような決定はなかった。最高裁判所事務総局の資料による。)。なお,対象事件に該当しない事件であっても,対象事件と併合された事件は,裁判員裁判により審理される。
裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この節において同じ。)人員の推移(最近5年間)を罪名別に見ると,2-3-2-5表のとおりである。平成28年の新規受理人員は,殺人(自殺関与及び同意殺人を除く。255人)が最も多く,次いで,強盗致傷(224人),現住建造物等放火(124人)の順であった。
なお,平成28年に第一審で判決を受けた裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合され,裁判員裁判により審理された事件。少年法55条による家裁移送決定があったものを含み,裁判員が参加する合議体で審理が行われずに公訴棄却判決があったものは含まない。以下この節において同じ。)における審理期間の平均は10.0月であり,6月以内のものが31.2%を占めた。また,開廷回数の平均は4.6回であり,3回以下が33.8%,5回以下が約8割を占めた(最高裁判所事務総局の資料による。)。
2-3-2-6表は,平成28年において,第一審の終局処理に至った裁判員裁判対象事件について,無罪の人員及び有罪人員の科刑状況等を罪名別に見たものである。