前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第4節/2

2 再犯状況
(1)再犯者の人員と再犯率
ア 再犯の概要

再犯調査対象者について,その再犯率(再犯を行った者の比率をいう。以下この節において同じ。)を,総数のほか,出所受刑者の出所事由別,執行猶予者の区分別に見ると,6-4-4-1図のとおりである。

6-4-4-1図 再犯調査対象者 再犯率(出所事由等別)
6-4-4-1図 再犯調査対象者 再犯率(出所事由等別)
Excel形式のファイルはこちら

再犯調査対象者の総数1,484人のうち,全再犯ありの者は307人であり,全再犯率(全再犯を行った者の比率をいう。以下この節において同じ。)は20.7%であった。そのうち,性犯罪再犯ありの者は207人で,性犯罪再犯率(性犯罪再犯を行った者の比率をいう。以下この節において同じ。)は13.9%であり,全再犯ありの者のうちの67.4%を占めていた。また,性犯罪再犯ありの者の内訳を見ると,性犯罪再犯(刑法犯)ありの者は51人,性犯罪再犯(条例違反)ありの者は156人であった。

ここで,出所受刑者について,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点までの再犯可能期間を算出するに当たり,刑事施設における服役期間を減じた日数の平均値(以下この節において「平均再犯可能期間」という。)を求めると,出所受刑者総数では3年弱(1,007日)であった。

出所事由別に再犯率を見ると,仮釈放者の性犯罪再犯率が10.3%であるのに比して,満期釈放者の性犯罪再犯率は25.4%と顕著に高く,性犯罪再犯(刑法犯),性犯罪再犯(条例違反)別に見ても,いずれも満期釈放者の方が高かった。満期釈放者について,帰住先別に再犯状況を見ると,帰住先が親族等(雇主,更生保護施設,社会福祉施設等を含む。)の者では229人のうち72人(31.4%)が,適当な帰住先がない者では113人のうち51人(45.1%)が全再犯に及んでいた。

執行猶予者の区分別に再犯率を見ると,性犯罪再犯率は共に約1割であるが,保護観察付執行猶予者において,性犯罪以外による再犯(以下この節において「その他再犯」という。)の割合が高かった。

イ 年齢層別

再犯調査対象者について,出所事由等別の再犯率を年齢層別に見ると,6-4-4-2図のとおりである。出所受刑者のうち,仮釈放者では40〜49歳の者において全再犯率が最も高かった。また,満期釈放者では,いずれの年齢層でも全再犯率が比較的高かった。

6-4-4-2図 再犯調査対象者 再犯率(出所事由等別,年齢層別)
6-4-4-2図 再犯調査対象者 再犯率(出所事由等別,年齢層別)
Excel形式のファイルはこちら

執行猶予者のうち,保護観察付執行猶予者では30〜39歳の者において全再犯率が最も高く,性犯罪再犯(刑法犯)があるのは29歳以下の者のみであった。一方,単純執行猶予者では,65歳以上の者の全再犯率が低いほかは,その他の年齢層で全再犯率に大きな差はなかった。

ウ 性犯罪者類型別

再犯調査対象者について,性犯罪者類型別に再犯率を見ると,6-4-4-3図のとおりである。性犯罪者類型によって,実刑に処せられた者の割合や調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点においても服役中の者の割合に偏りがあるほか,出所受刑者に関しては,再犯可能期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,全再犯率は,痴漢型が最も高く,次いで,盗撮型,小児わいせつ型,強制わいせつ型,小児強姦型,単独強姦型の順となっており,集団強姦型が最も低かった。性犯罪再犯率に限っても同様の傾向が認められた。なお,性犯罪再犯(刑法犯)の再犯率が最も高いのは,小児わいせつ型であり,その再犯の内容を性犯罪者類型に当てはめてみると,9人のうち8人の再犯が小児わいせつ型に該当した。

6-4-4-3図 再犯調査対象者 再犯率(性犯罪者類型別)
6-4-4-3図 再犯調査対象者 再犯率(性犯罪者類型別)
Excel形式のファイルはこちら

同様に,再犯調査対象者について,性犯罪者類型別の再犯率を,出所受刑者,保護観察付執行猶予者,単純執行猶予者の別に見ると,6-4-4-4図のとおりである。

6-4-4-4図 再犯調査対象者 再犯率(出所受刑者・執行猶予者の区分別,性犯罪者類型別)
6-4-4-4図 再犯調査対象者 再犯率(出所受刑者・執行猶予者の区分別,性犯罪者類型別)
Excel形式のファイルはこちら

ここで,調査対象事件で実刑に処せられた者について,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点における出所受刑者の占める割合を性犯罪者類型別に見ると,大半の者が出所している類型(強制わいせつ型で92.9%,小児わいせつ型で90.7%,痴漢型で99.4%,盗撮型で100.0%),半数程度の者が出所している類型(単独強姦型で51.0%,集団強姦型で61.5%),3割程度の者が出所している類型(小児強姦型で29.4%)があるほか,類型別の平均再犯可能期間においても,単独強姦型の577日から痴漢型の1,491日まで開きがあり,出所受刑者の再犯率を見るに当たっては留意する必要がある。

再犯調査対象者のうち,出所受刑者の全再犯率は,盗撮型が最も高く,次いで,痴漢型,強制わいせつ型,小児わいせつ型,単独強姦型,集団強姦型の順であった。また,盗撮型では,その他再犯の再犯率も2割弱と比較的高かった。小児強姦型の出所受刑者は10人と少数であり,再犯者はいなかった。また,再犯調査対象者のうち,保護観察付執行猶予者及び単純執行猶予者について,それぞれ性犯罪者類型ごとの再犯率を見ると,性犯罪再犯(刑法犯)の再犯率は小児わいせつ型が最も高く,全再犯率は痴漢型が最も高く,かつ,その他再犯の再犯率も痴漢型が比較的高かった。

再犯調査対象者のうち性犯罪再犯があった者について,再犯が可能となった日から再犯までの期間を性犯罪者類型別に見ると,6-4-4-5図のとおりである。ここでは,性犯罪再犯に及んだ者がいなかった集団強姦型や,性犯罪再犯に及んだ者が2人の単独強姦型,1人の小児強姦型は分析の対象から除外した。 同図は,再犯期間(執行猶予者については調査対象事件の裁判確定日から,出所受刑者については刑事施設を出所した日から,それぞれ最初の性犯罪再犯の犯行日までの日数をいう。以下この節において同じ。)の分布状況を性犯罪者類型ごとに比較したものである。具体的には,性犯罪者類型ごとに,再犯期間の短い者から順に左から並べ,全体の4分の1番目に当たる者の再犯期間が箱の左端,真ん中に当たる者の再犯期間が箱の中の太線,4分の3番目に当たる者の再犯期間が箱の右端で示されており,箱の中には全体の約半数の者が含まれている。

6-4-4-5図 再犯調査対象者 性犯罪者類型別再犯期間
6-4-4-5図 再犯調査対象者 性犯罪者類型別再犯期間
Excel形式のファイルはこちら

同図からは,性犯罪再犯に及んだ者の中でも,性犯罪者類型によって,再犯期間に長短があることや再犯が比較的集中している時期に差異があることが見てとれる。すなわち,痴漢型の再犯期間は非常に短く,290日経過時点で約半数の者が性犯罪再犯に及んでいる一方で,他の性犯罪者類型では,半数の者が性犯罪再犯に及ぶまでに500日程度が経過している。また,同一の性犯罪者類型にある者でも,再犯期間が最短の者と最長の者を見ると,かなりのばらつきがある。

さらに,痴漢型の者(115人)の性犯罪再犯について詳しく見ると,再犯期間が3か月未満の者は26人(22.6%)であり,それらの者の性犯罪再犯の約9割が痴漢行為であった。また,26人のうち18人(69.2%)は,最初の性犯罪再犯で有罪の裁判を受けた後も,更なる性犯罪再犯に及び有罪の裁判を受けており,痴漢型の中には短期間のうちに性犯罪再犯を反復する者が存在する。

エ 執行猶予者の累積再犯率

再犯調査対象者のうちの執行猶予者について,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点までに再犯した者の累積人員の比率を累積再犯率とし,これを全再犯と性犯罪再犯の別に見るとともに,これを執行猶予の区分別に見ると,6-4-4-6図のとおりである。 同図<1>の全再犯の累積再犯率では,最初の4か月までは,保護観察付執行猶予者,単純執行猶予者共に同じように緩やかに上昇しているが,その後,徐々に両者の差が開き,調査対象事件の裁判確定から5年経過時点の全再犯率では8.2ptの差が生じている。一方,同図<2>の性犯罪の累積再犯率については,保護観察付執行猶予者と単純執行猶予者の間に大きな差はなかった。

執行猶予者全体の再犯状況について詳しく見ると,全再犯の再犯者人員のうち約半数の者が,調査対象事件の裁判確定日から22か月が経過するまでの間に再犯に及び,性犯罪再犯の再犯者人員のうち約半数の者が,24か月が経過するまでの間に再犯に及んでいる。

6-4-4-6図 執行猶予者 累積再犯率(全再犯・性犯罪再犯別,執行猶予の区分別)
6-4-4-6図 執行猶予者 累積再犯率(全再犯・性犯罪再犯別,執行猶予の区分別)
Excel形式のファイルはこちら
(2)再犯者の動機等

再犯調査対象者のうち,最初の再犯が性犯罪であった者(197人)について,刑事確定記録を用いた調査から把握可能な範囲において,性犯罪再犯に係る犯行の計画性とその動機について調べた。その結果,犯行時に通常の通勤等のルートとは異なる電車に乗って移動していたり,犯行場所の下見をしたりするなどの何らかの計画性や,事前に犯行に関連するような性的な思考や空想が認められた者は,160人(不明を除く有効回答に占める割合が89.4%)であった。

次に,動機については,想定し得る項目をあらかじめ複数設定した上で,主として捜査段階及び裁判時における供述内容を基に,性犯罪再犯に至った動機として前記項目に該当するものを選別して集計する調査を行った(重複計上による。)。該当する比率が高かった項目を順に示すと,性的欲求充足のほか,接触欲求充足が117人(不明を除く有効回答に占める割合が65.0%),ストレス等の発散が70人(同38.7%),スリルが37人(同20.6%),支配欲求・優越欲求充足が12人(同6.7%),自暴自棄が8人(同4.4%),その他が64人(同35.6%)であった。