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平成26年版 犯罪白書 第6編/第3章/第3節/2

2 保護観察対象者等の特性に応じた施策・処遇
(1)高齢・障害者

高齢又は精神障害を有する保護観察対象者に対しては,類型別処遇に基づき「高齢」又は「精神障害等」の類型に認定し(2-5-2-5表P79参照),その問題性等に焦点を当てた処遇を実施している。また,平成21年度から,全国の保護観察所では,高齢又は障害により自立困難で住居もない受刑者等について,特別調整を実施している。指定更生保護施設に指定された更生保護施設では,高齢又は障害により自立が困難で,かつ適当な住居のない保護観察対象者等に対する処遇を特に実施している(第2編第5章第5節2項P88参照)。

(2)少年

窃盗は,少年非行の大きな部分を占めており,また,非行の初期段階であることが多いことなどから,少年に対して非行の早期の段階で,窃盗の再非行防止策を実施することは重要である。

保護観察処分少年のうち短期保護観察の対象者は,非行性の進度がそれほど深くないなど,短期間の保護観察により改善更生を期待できる者である。この対象者の処遇に当たっては,毎月,「生活の記録」(生活状況報告書)を保護観察所に提出させ,また,具体的な課題を毎月履行させることにより処遇を行う。この課題について,金銭管理に関する内容のものを設定する場合もある。

以下では,窃盗事犯の短期保護観察対象少年の処遇事例を紹介する。なお,事例の内容は,個人の特定ができないようにする限度で修正を加えている。

事例3 金銭管理に関する「課題」を履行させた短期保護観察対象者の事例

B少年(18歳)は,高校中退後,建設作業員として稼働していた。バイクの修理をしようとしたところ,必要な工具がなかったことから,量販店で修理工具を万引きして,短期保護観察処分に付された。

保護観察所は,B少年に対して,具体的な課題として,「家計簿を書いて,無駄遣いなどせずしっかり金銭管理ができているか書くこと。」を設定した。

B少年は,毎日,支出額・項目等を記入し,担当保護司との面接で,これまでいかに無駄遣いが多かったかに気付いた。その後,徐々に毎月末の残金も多くなり,少年自身も「今月は結構なお金が残った。」と感想を述べるようになった。

B少年に対する保護観察は,開始当初の金銭管理の問題点が解消され,保護観察の解除により終了した。

(3)女子

女子の保護観察対象者に対する処遇においては,その年齢,生活環境等を踏まえ,同居している家族等の協力を得ながら,心身状況に配慮し,また,余暇の利用にも注意を払っている。

女子を対象とする更生保護施設においては,特に,その心身状況に配慮しながら処遇を実施するなど,独自の取組をしている施設が見られる(本章第4節2項事例2P262参照)。