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平成25年版 犯罪白書 第7編/第4章/第2節/3

3 捜査・訴追における国際協力
(1)犯罪者の国外逃亡

日本国内で犯罪を行い,国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下この項において「国外逃亡被疑者等」という。)の人員の推移(最近10年間)を日本人と外国人の別に見ると,7-4-2-2図のとおりである。


7-4-2-2図 国外逃亡被疑者等の人員の推移
7-4-2-2図 国外逃亡被疑者等の人員の推移
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平成24年末現在における国外逃亡被疑者等の罪種別人員を日本人と外国人の別で見るとともに,外国人の国外逃亡被疑者等の人員を国籍等別に見ると,7-4-2-3表のとおりである。


7-4-2-3表 国外逃亡被疑者等の人員(罪種別・国籍等別)
7-4-2-3表 国外逃亡被疑者等の人員(罪種別・国籍等別)
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平成24年末現在における国外逃亡被疑者等(日本人を含む。)の人員を,その推定逃亡先の国・地域別に見ると,中国(台湾及び香港等を除く。)210人,ブラジル80人,韓国及びフィリピンがそれぞれ53人の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。

(2)逃亡犯罪人の引渡し等

我が国は,外国から逃亡犯罪人の引渡しの請求を受けた場合,その国との間で犯罪人引渡条約を締結していなくても,逃亡犯罪人引渡法(昭和28年法律第68号)が定める要件及び手続に基づき,相互主義の保証の下で,その請求に応ずることができる。また,これによって外国に対して相互主義の保証を行うことが可能であるため,その国の法令が許す限り,犯罪人引渡条約を締結していない外国から逃亡犯罪人の引渡しを受けることもできる。

さらに,我が国は,日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約(昭和55年(1980年)発効)及び犯罪人引渡しに関する日本国と大韓民国との間の条約(平成14年(2002年)発効)を締結している。これらの条約は,一定の要件の下に逃亡犯罪人の引渡しを相互に義務付けているほか,我が国の逃亡犯罪人引渡法で原則として禁止されている自国民の引渡しを被要請国の裁量により行うことを認めることにより,締約国との間の国際協力の強化を図るものである。

外国との間で逃亡犯罪人の引渡しを受け,又は引き渡した人員(最近10年間)は,7-4-2-4表のとおりである。なお,我が国から国外に逃亡犯罪人の引渡しを要請する場合,検察庁が依頼する場合と警察等が依頼する場合とがある(いずれも外務省を経由して相手国に要請する。)。


7-4-2-4表 逃亡犯罪人引渡人員
7-4-2-4表 逃亡犯罪人引渡人員
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グローバル化が進展する中で,逃亡犯罪人引渡条約の重要性は,今後ますます増すものと考えられる。

また,逃亡先の国が被疑者の国籍国であるなどして引渡しを受けることが望めない場合等に,被疑者等が行った犯罪に関する証拠や資料等を逃亡先の国の捜査機関等に提供するなどして,その国における国外犯処罰規定の適用を促すこともなされている。逃亡先の国において,国外犯処罰規定が適用された件数及び人員(最近10年間)は7-4-2-5表のとおりである。


7-4-2-5表 逃亡先国における国外犯処罰規定の適用件数・人員
7-4-2-5表 逃亡先国における国外犯処罰規定の適用件数・人員
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(3)捜査共助等

我が国は,逃亡犯罪人の引渡しについてと同様に,捜査共助条約を締結していない外国との間でも,その国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供の共助の要請を受けた場合,国際捜査共助等に関する法律(昭和55年法律第69号)が定める要件及び手続に基づき,相互主義の保証の下で,外交ルートを通じ,捜査共助を行うことが可能であり,また,これによって,その国の法令が許す限り,捜査に必要な証拠の提供を受けることもできる。

さらに,我が国は,刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約(平成18年(2006年)発効),刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約(平成19年(2007年)発効),刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約(平成20年(2008年)発効),刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国香港特別行政区との間の協定(平成21年(2009年)発効),刑事に関する共助に関する日本国と欧州連合EUとの間の協定(平成23年(2011年)発効)及び刑事に関する共助に関する日本国とロシア連邦との間の条約(平成23年(2011年)発効)を締結している。これらの刑事共助条約又は協定は,拒否事由がない限り,相互に共助の実施を義務付けるほか,共助の要請・受理を行う「中央当局」を指定(我が国の場合は,要請については,法務大臣若しくは国家公安委員会又はこれらがそれぞれ指定する者であり,要請の受理については,法務大臣又はこれが指定する者である。)し,外交ルートを経由することなく,中央当局間で要請を行うものとすることで,捜査共助の迅速化・効率化を図るものである。これらの刑事共助条約・協定を締結した結果,30以上の国・地域との間で,拒否事由がない限り共助の実施を条約・協定上の義務とした上,外交ルートを介さないで共助を実施することができるようになっている。

捜査共助を要請し,又は要請を受託した件数(最近10年間)は,7-4-2-6表のとおりである。刑事共助条約締約国との間では,我が国から外国に対して捜査共助を要請した案件と我が国が外国から捜査共助の要請を受託した案件のいずれについても増加しており,特に平成23年からは外国から捜査共助の要請を受託した案件で大幅な増加が見られる。なお,捜査共助の要請について,我が国から要請する場合,検察庁が依頼する場合と警察等が依頼する場合とがある。


7-4-2-6表 捜査共助件数
7-4-2-6表 捜査共助件数
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司法共助とは,我が国と外国との間で,裁判所の嘱託に基づいて,裁判関係書類の送達や証拠調べに関して協力することをいう。平成24年(2012年)において,外国の裁判所から我が国の裁判所に対して嘱託された刑事司法共助は,書類の送達が15件,証拠調べが3件であり,我が国の裁判所が外国の裁判所又は在外領事等に対して嘱託した刑事司法共助は,書類の送達4件であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。

そのほかの捜査等における国際協力としては,国際刑事警察機構ICPO:International Criminal Police Organization)による刑事警察間における情報交換等の相互協力も行われている。ICPOは,各国の警察機関を構成員とする国際機関であり,刑事警察間における最大限の相互協力の確保・推進及び犯罪の予防・鎮圧に効果的な制度の確立と発展を目的として様々な活動を行っている。ICPOは,事務総局において捜査情報サービス及び捜査データベース等を運用し,被手配者の犯罪行為につき警告を発して各国警察に注意を促す「緑手配書」や,犯罪者が使用する手口,物,仕掛けや隠匿方法に関し,情報提供する「紫手配書」を発行し,犯罪の未然防止,密輸品の水際押収等に活用するなどしている。なお,我が国では,平成21年から入国管理局においても,ICPOの紛失・盗難旅券データベースの情報を出入国管理における水際対策に利用している。そのほか,ICPOは,国際手配制度を開発・発展させ,全加盟国・地域(平成24年(2012年)12月末現在,190か国・地域)の警察の組織力を通じて,国外逃亡被疑者の所在発見,行方不明者の発見等に努めている。

ICPO経由での国際協力件数等(最近10年間)は,7-4-2-7表のとおりである。


7-4-2-7表 ICPO経由の国際協力件数
7-4-2-7表 ICPO経由の国際協力件数
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