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平成25年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/2

2 外国人犯罪の動向
(1)外国人犯罪と刑事手続・退去強制手続の概要

外国人による犯罪についての刑事手続は,日本人による犯罪の場合と異なるところはない。しかし,検挙された外国人が入管法上の退去強制事由に該当する場合には,同時に,退去強制手続の対象にもなる。退去強制手続は,刑事手続とは別個の行政手続であり,刑事手続の進捗状況にかかわらず,退去強制令書の発付までは退去強制手続を進行させることもできるが,刑事手続が先行する場合が多い。犯罪を行った外国人が検挙された場合における刑事手続及び退去強制手続の流れは,おおむね7-2-2-2-1図で示したイメージのとおりである。


7-2-2-2-1図 外国人犯罪における刑事手続と退去強制手続の流れ(イメージ)
7-2-2-2-1図 外国人犯罪における刑事手続と退去強制手続の流れ(イメージ)

退去強制事由に該当する者としては,

<1> 不法入国者,不法上陸者,不法残留者等,出入国管理秩序に違反する者

<2> 一定の刑罰法令違反者や売春等の反社会的行為者

<3> 外国人テロリストや暴力主義的破壊活動者のほか,法務大臣が我が国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者

等が入管法で定められている。前記<2>のうち,一定の刑罰法令違反者とは,

・ 薬物事犯等により,罰金以上の刑に処せられた者

・ 無期懲役又は1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられた者

・ 活動資格を有する者で,殺人・傷害等の粗暴犯,窃盗等の財産犯,偽変造に係る犯罪等により,懲役・禁錮の刑に処せられた者

・ 中長期在留者で,虚偽届出等の罪により,懲役刑に処せられた者

等をいい,これらの刑の言渡しが確定すれば,退去強制事由に該当する。

なお,退去強制事由に該当する場合であっても,法務大臣は,特別に在留を許可すべき事情があると認めるときは,在留特別許可を与えることができ,当該許可を受けた外国人は,引き続き本邦に居住することができる。そのため,不法在留者,薬物事犯で有罪判決を受けた者,1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられた者等でも,在留特別許可により,退去強制されない場合がある。

以下この項で,各種統計資料に基づき,我が国における外国人犯罪の動向を処遇段階ごとに概観する。それに当たっては,グローバル化に伴い来日した外国人による犯罪の特色や時代の推移による変化を見る必要があることから,主として,特別永住者や永住者等を含まない「来日外国人」に係る統計資料によることとする。ただし,来日外国人に係る統計数値が得られないものや永住者を含む動向を見る必要がある場合には,「外国人」に係る統計によることとする。

(2)補導・検挙

ア 一般刑法犯

(ア)全体の動向

7-2-2-2-2図は,来日外国人による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を見るとともに,一般刑法犯全体の検挙件数(総検挙件数)又は検挙人員(総検挙人員)に占める来日外国人の検挙件数又は検挙人員の各比率(来日外国人比)の推移を見たものである(その他の外国人を含む外国人の検挙件数及び検挙人員等については,CD-ROM資料7-1参照)。


7-2-2-2-2図 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数・検挙人員・来日外国人比の推移
7-2-2-2-2図 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数・検挙人員・来日外国人比の推移
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一般刑法犯については,近年,総検挙件数及び総検挙人員が減少傾向にある中で(1-1-1-1図CD-ROM資料1-1参照),来日外国人の検挙件数は平成17年をピークに減少し続け,検挙人員も16年をピークに減少傾向にある。総検挙件数に占める来日外国人の比率も17年をピークに低下し続けているが,総検挙人員に占める来日外国人の比率は,過去20年間を通じて大きな変動はなく,おおむね2%前後で推移している。

平成14年及び24年における来日外国人による一般刑法犯検挙件数の罪名別構成比を見ると,7-2-2-2-3図<1>のとおりである。いずれの年も窃盗が圧倒的に高い比率を占めているが,24年は,14年と比べ,窃盗の比率が13.4pt低下し,傷害・暴行の比率が5.4pt上昇している。


7-2-2-2-3図 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数の罪名別・国籍等別構成比
7-2-2-2-3図 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数の罪名別・国籍等別構成比
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7-2-2-2-3図<2>は,平成14年及び24年における来日外国人による一般刑法犯検挙件数の国籍等別構成比を見たものである。いずれも,地域別ではアジアが,国籍等別では中国(台湾及び香港等を除く。)がそれぞれ最も高い割合を占めている点に変わりはないが,24年は,14年と比べ,ベトナム,韓国及びフィリピンの占める割合が上昇している一方で,ブラジルが約2割から1割弱に低下し,14年では2割近くを占めていたトルコが24年には1%にも満たないなど(CD-ROM参照),国籍等によっては変動が認められる。

来日外国人による一般刑法犯検挙人員の在留資格等別構成比の推移(平成10年以降)は,7-2-2-2-4図のとおりである。12年から正規の在留資格を有する者の占める比率が上昇し,20年以降は9割以上が正規滞在者である。また,「日本人の配偶者等」を含む「その他」の正規滞在者の比率が上昇傾向にあることが特徴的である。なお,「日本人の配偶者等」の検挙人員を把握し得る21年以降では,いずれの年も「その他」の正規滞在者のうち約半数が「日本人の配偶者等」の者であった(警察庁刑事局の資料による。)。


7-2-2-2-4図 来日外国人による一般刑法犯 検挙人員の在留資格等別構成比の推移
7-2-2-2-4図 来日外国人による一般刑法犯 検挙人員の在留資格等別構成比の推移
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(イ)窃盗

7-2-2-2-5図は,来日外国人による一般刑法犯のうち窃盗の検挙件数の推移(最近10年間)を見たものである。


7-2-2-2-5図 来日外国人による窃盗 検挙件数の推移
7-2-2-2-5図 来日外国人による窃盗 検挙件数の推移
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窃盗の総検挙件数が減少し続けている中で(1-1-2-1図参照),来日外国人による窃盗の検挙件数も,平成17年をピークに一貫して減少している。主な手口別で見ると,空き巣,車上・部品ねらいが減少傾向にあるほか,自動販売機ねらい及びすりが激減し,すりは22年以降50件未満で推移している。自動販売機ねらいは,16年には7,000件台に達し最も多い手口であったが,23年以降は1件もない。他方,自動車盗及び万引きは,おおむね横ばいで推移しており,24年では,万引きが,17年以降最も多かった空き巣を上回り,最も検挙件数の多い手口となっている(なお,窃盗の手口別の認知件数全体については,1-1-2-3図<2>参照)。

7-2-2-2-6図は,平成24年における来日外国人による窃盗の検挙件数について,手口別構成比を更に詳細に見たものである。万引きが約3割と最も高く,次いで,空き巣,自動車盗,車上ねらいの順であった。


7-2-2-2-6図 来日外国人による窃盗 検挙件数の手口別構成比
7-2-2-2-6図 来日外国人による窃盗 検挙件数の手口別構成比
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窃盗について,同年における日本人を含む全体の検挙件数の手口別構成比では,万引きは34.1%と来日外国人と同程度の割合であるものの,空き巣の割合が7.8%,自動車盗の割合が2.6%にとどまっている(警察庁の統計による。)。これらと比べると,来日外国人は空き巣及び自動車盗の割合が顕著に高いのが特徴である。

また,平成24年における来日外国人による窃盗について,検挙人員一人当たりの検挙件数は2.93件であり,日本人を含む検挙人員全体の場合(1.86件)に比べて多かった(警察庁の統計による。)。

来日外国人による窃盗の検挙件数の国籍等別構成比を総数と主な手口別に見たのが7-2-2-2-7図である。窃盗全体では,中国(台湾及び香港等を除く。以下本項(2)(イ)において同じ。)が約4割を占めて最も高く,次いで,ブラジル,ベトナムの順であった。主な手口ごとに見ると,侵入窃盗では,中国が約7割を占め,窃盗全体における中国の構成比より著しく高い。自動車盗ではブラジル,万引きでは中国とほぼ並んでベトナムがそれぞれ最も高かった。


7-2-2-2-7図 来日外国人による窃盗 検挙件数の国籍等別構成比(総数・手口別)
7-2-2-2-7図 来日外国人による窃盗 検挙件数の国籍等別構成比(総数・手口別)
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主な国籍等ごとに平成24年における手口別構成比を見ると,中国では,空き巣,車上ねらい及び万引きがそれぞれ2割前後を占めており,多様な手口にわたっている。ベトナムは約8割が万引き,韓国は約半数が空き巣,ブラジルは約4割が自動車盗,車上ねらい及び部品ねらいの車両関連の窃盗であるなど,国籍等によって特定の手口に偏っている(警察庁刑事局の資料による。)。


(ウ)窃盗以外の主な一般刑法犯

7-2-2-2-8図は,来日外国人による窃盗以外の主な一般刑法犯の検挙件数の推移(最近10年間)を見たものである。傷害・暴行及び詐欺がおおむね増加傾向にある一方で,強盗及び文書偽造が減少傾向にある。


7-2-2-2-8図 来日外国人による一般刑法犯(窃盗を除く主要罪名) 検挙件数の推移
7-2-2-2-8図 来日外国人による一般刑法犯(窃盗を除く主要罪名) 検挙件数の推移
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イ 特別法犯

(ア)全体の動向

7-2-2-2-9図は,来日外国人による特別法犯(交通法令違反(平成15年までは交通関係4法令に限る。)を除く。以下この項において同じ。)の送致件数及び送致人員の推移(平成元年以降)を見るとともに,特別法犯全体の送致件数(総送致件数)又は送致人員(総送致人員)に占める来日外国人の送致件数又は送致人員の各比率(来日外国人比)の推移を見たものである(その他の外国人を含む外国人の送致件数及び送致人員等については,CD-ROM資料7-2参照)。


7-2-2-2-9図 来日外国人による特別法犯 送致件数・送致人員・来日外国人比の推移
7-2-2-2-9図 来日外国人による特別法犯 送致件数・送致人員・来日外国人比の推移
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来日外国人による特別法犯の送致件数及び送致人員は,いずれも平成16年に過去最多数を記録した後,減少し続けており,総送致件数と総送致人員に対する各来日外国人比はいずれも低下している。


(イ)主な特別法犯

来日外国人による特別法犯の送致件数について,主な罪名・罪種ごとの推移(最近10年間)を見ると,7-2-2-2-10図のとおりである。


7-2-2-2-10図 来日外国人による入管法違反等 送致件数の推移
7-2-2-2-10図 来日外国人による入管法違反等 送致件数の推移
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入管法違反の送致件数は,平成17年から減少に転じ,以降,大幅に減少を続けている。これは,例年,入管法違反に占める不法残留の割合が著しく高いところ,16年以降,不法滞在者に対する取締りが強化されるなどして不法残留者自体が大幅に減少した(本編第2章第1節1項(2)及び第4章第1節1項参照)ことや入管法65条に基づく身柄引渡し(7-2-2-2-1図参照)の運用が拡大されたことによるものと考えられる。なお,24年における違反態様別の送致件数は,不法残留が1,156件と最も多く,次いで,旅券不携帯・提示拒否625件,不法在留283件,資格外活動244件の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。

また,入管法違反は,例年,来日外国人による特別法犯送致件数に占める割合が最も高く(平成24年は57.6%),来日外国人による特別法犯全体の送致件数等の減少(7-2-2-2-9図参照)は,主に入管法違反の送致件数の減少によるものと考えられる。

薬物関係法令違反の送致件数は,平成16年に大幅に減少した後増減を繰り返したが,20年以降は一貫して減少しており,24年は15年と比べ半減した。なお,罪名別の検挙人員では,麻薬取締法違反と大麻取締法違反が大幅に減少しているが,覚せい剤取締法違反は,16年以降300人台から400人台で推移しており,24年は,328人であった(警察庁刑事局の資料による。)。

(3)検察・裁判

ア 被疑事件の処理

7-2-2-2-11図は,来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員の推移(最近20年間)を見たものである。日本人を含めた全終局処理人員が減少傾向にある中で(CD-ROM資料2-2参照),来日外国人も平成16年をピークに減少傾向にある。


7-2-2-2-11図 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理人員の推移
7-2-2-2-11図 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理人員の推移
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来日外国人被疑事件の公判請求率は,低下傾向にあり,平成24年(32.3%)は,15年(65.4%)から33.1pt低下しているが,全終局処理人員の公判請求率(24年は27.7%)と比較すると,なお高い状況にある(来日外国人の起訴人員等の詳細については,CD-ROM資料7-3及び7-4参照)。

平成24年における来日外国人被疑事件の罪名別の検察庁終局処理人員は,7-2-2-2-12表のとおりである。窃盗及び入管法違反の占める比率が,それぞれ約2割強と高い。


7-2-2-2-12表 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理状況(罪名別)
7-2-2-2-12表 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理状況(罪名別)
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イ 外国人少年事件の処理

7-2-2-2-13図<1>は,検察庁における外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員(一般刑法犯及び道交違反を除く特別法犯に限る。)の推移(最近20年間)を来日外国人犯罪少年とその他の外国人犯罪少年の別に見たものであり,同図<2>から<4>は,これを近年において来日外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員が多い3か国について見たものである。来日外国人犯罪少年もその他の外国人犯罪少年も減少傾向にある。他方,外国人犯罪少年全体に占める来日外国人犯罪少年の比率は,最近20年間は大きく上昇しており,平成20年以降は6割以上で推移している。来日外国人犯罪少年では,13年から20年までブラジルが最も多かったが,21年以降は減少傾向にあり,24年はフィリピンと同程度であった。


7-2-2-2-13図 外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員の推移
7-2-2-2-13図 外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員の推移
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ウ 裁判

7-2-2-2-14図は,被告人通訳事件の通常第一審における有罪人員及び科刑状況(懲役・禁錮に限る。)の推移(最近10年間)を見たものである。有罪人員は,平成16年から減少しており,24年は15年と比較して78.8%減と大幅に減少した。平成24年の執行猶予率は76.8%であり,15年(85.5%)から8.8pt低下している。


7-2-2-2-14図 被告人通訳事件 通常第一審における有罪人員・科刑状況(懲役・禁錮)の推移
7-2-2-2-14図 被告人通訳事件 通常第一審における有罪人員・科刑状況(懲役・禁錮)の推移
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(4)矯正施設入所者・保護観察対象者

ア 刑事施設入所者

平成24年における外国人の入所受刑者は,1,010人(前年比11.1%減)であった(矯正統計年報による。)。

外国人受刑者のうち,日本人と異なる処遇を必要とする者は,刑事施設において,F指標受刑者(2-4-2-2表参照)として,その文化及び生活習慣等に応じた処遇を行っている。平成24年末現在,F指標受刑者の収容人員は,2,122人(男子1,910人,女子212人)であり,前年末比で12.6%減少している(矯正統計年報による。)。なお,10年以降,19年を除き,来日外国人の少なくとも約9割がF指標に指定されている。

次に,各年のF指標入所受刑者人員,そのうち女子及び犯罪傾向が進んでいる者に指定されるB指標の者が占める割合(女子比及びB指標比)の推移(最近20年間)を見ると,7-2-2-2-15図のとおりである。F指標入所受刑者は,平成10年から急増し,16年に1,690人まで増加した後減少を続け,24年は16年と比べ67.5%減となった。日本人を含む入所受刑者全体も,最近減少を続けているが(2-4-1-3図参照),これに占めるF指標入所受刑者の割合は,24年は2.2%と,ピーク時の16年(5.3%)から大きく低下しており,受刑者全体の減少を上回る勢いで減少していることを示している。なお,F指標入所受刑者人員は,男女共に減少傾向にあるものの,女子比は,上昇傾向にある上,24年は17.7%と入所受刑者全体における女子比(9.0%)より8.7pt高い。B指標比は,17年から上昇を続けているが,F指標入所受刑者の再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)が同年から上昇傾向にあることと関連するものとも考えられる(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。


7-2-2-2-15図 F指標入所受刑者人員・女子比・B指標比の推移
7-2-2-2-15図 F指標入所受刑者人員・女子比・B指標比の推移
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平成24年におけるF指標入所受刑者の国籍等を見ると,中国(128人),ベトナム(68人),ブラジル(63人),イラン(36人),韓国・朝鮮とペルー(各27人)の順に多く,地域別ではアジアが約6割を占め,次いで南アメリカ(約2割)となっている。この構成比を14年と比較して見ると,7-2-2-2-16図のとおりである。国籍等別では,14年も24年も中国が最も多かったが,全体に占める割合は41.0%から23.3%と大幅に低下している。地域別では,アジアが占める比率は19.2pt低下している反面,ヨーロッパが9.5pt,アフリカが4.5pt上昇している。また,順位変動は見られるものの,構成比が高い順から6か国等は変わらない一方,これら6か国等が全体に占める割合は79.1%から63.6%へと約16pt低下している。これらのことから,10年前と比べ,F指標入所受刑者の国籍等の多様化,分散化がうかがえる。


7-2-2-2-16図 F指標入所受刑者 国籍等別構成比
7-2-2-2-16図 F指標入所受刑者 国籍等別構成比
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平成24年におけるF指標入所受刑者の罪名別構成比を14年と比較して見ると,7-2-2-2-17図のとおりである。24年においては,F指標入所受刑者総数が14年の半数以下に落ちた一方,覚せい剤取締法違反については,人員は183人と14年(178人)と同程度であったため,構成比では13.7%から33.3%に大きく上昇し,14年の窃盗と入れ替わって最も高くなっている。窃盗の構成比は14年と24年共に3割強と高い。なお,入管法違反は,14年には窃盗に次いで多かったが,24年は,人員では14年の203人から25人に激減し,構成比では15.6%から4.6%に大きく低下している。


7-2-2-2-17図 F指標入所受刑者 罪名別構成比
7-2-2-2-17図 F指標入所受刑者 罪名別構成比
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平成24年のF指標入所受刑者を入所受刑者全体と比べると,F指標入所受刑者の方が,入管法違反の比率が高いのは当然として,覚せい剤取締法違反・麻薬取締法違反の薬物犯の比率も高い。一方で,窃盗及び覚せい剤取締法違反の構成比が高く,両罪で全体の6割前後を占める点は共通である(2-4-1-6図参照)。


イ 少年院入院者

7-2-2-2-18図は,外国人少年院入院者の人員の推移(最近10年間)を国籍等の内訳とともに見たものである。外国人少年院入院者は減少を続け,特に平成23年に激減した。ほとんどの年でブラジルが最も多いが,その比率は,18年から24年にかけては5割強から3割と低下傾向にある。また,フィリピンの24年の構成比は,15年から17.9pt上昇している。


7-2-2-2-18図 外国人の少年院入院者の人員の推移(国籍等別)
7-2-2-2-18図 外国人の少年院入院者の人員の推移(国籍等別)
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7-2-2-2-19図は,平成24年における外国人少年院入院者の非行名別構成比を見たものである。窃盗,傷害,強盗の順に高く,この3つで全体の8割強を占めている。日本人を含む少年院入院者全体では,これら3つが占める割合は6割強である(3-2-4-3図参照)。


7-2-2-2-19図 外国人の少年院入院者の非行名別構成比
7-2-2-2-19図 外国人の少年院入院者の非行名別構成比
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ウ 保護観察対象者

平成24年における外国人の保護観察開始人員は,1,299人(前年比89人減)で,その内訳は,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。)237人,少年院仮退院者58人,仮釈放者940人,保護観察付執行猶予者64人である。国籍等別では,韓国・朝鮮(383人),中国(307人),ブラジル(160人),フィリピン(96人),イラン(89人)の順に多い(CD-ROM資料7-6参照)。来日外国人に限ると,保護観察開始人員は876人で,その内訳は,保護観察処分少年125人,少年院仮退院者43人,仮釈放者690人,保護観察付執行猶予者18人であった(保護統計年報による。)。

平成24年末現在,外国人(永住者及び特別永住者を除く。)の保護観察対象者の人員は703人(前年末比4人減)で,その内訳は,保護観察処分少年152人,少年院仮退院者41人,仮釈放者462人,保護観察付執行猶予者48人であった。保護観察処分少年のうち2人,少年院仮退院者のうち2人,仮釈放者のうち431人,保護観察付執行猶予者のうち4人の合計439人は退去強制事由に該当し,国外退去済みの者が368人,退去強制手続により収容中の者が65人,仮放免中の者が6人であった(法務省保護局の資料による。)。

このように,外国人のうち成人の保護観察対象者の大半を占める仮釈放者のほとんどが退去強制事由に該当し,実質的に我が国内での保護観察処遇を受けることなく国外退去となる反面,保護観察処分少年及び少年院仮退院者については,退去強制事由に該当する者はごくわずかであり,基本的に,日本人と同様,我が国で生活しながら保護観察処遇を受ける者といえる。そこで,外国人の保護観察対象者の特色を見るに当たっては,少年に焦点を絞ることとし,非行名,居住状況,経済状況,就労・就学状況及び教育程度を,日本人少年と比較しつつ見ることとする。

7-2-2-2-20図は,少年の保護観察開始人員の非行名別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。保護観察処分少年においては,外国人,日本人共に,窃盗の構成比が約4割で最も高く,道路交通法違反及び傷害がそれぞれ約15%で続いている。少年院仮退院者においては,外国人,日本人共に窃盗の構成比が4割弱で最も高いが,次いで構成比が高いものは,外国人では強盗,傷害であり,日本人では傷害,道路交通法違反である。


7-2-2-2-20図 少年の保護観察開始人員の非行名別構成比(外国人・日本人別)
7-2-2-2-20図 少年の保護観察開始人員の非行名別構成比(外国人・日本人別)
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7-2-2-2-21図は,少年の保護観察開始人員の居住状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。いずれの保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,「両親と同居」が最も多く,前者では5割弱,後者では4割強を占めるが,外国人の方がその構成比が若干高い。また,親もとを含め親族のもとで居住する者が,いずれも約9割であり,外国人少年についても,日本人と同様,家族や親族との関係の調整が重要であることが分かる。


7-2-2-2-21図 少年の保護観察開始人員の居住状況別構成比(外国人・日本人別)
7-2-2-2-21図 少年の保護観察開始人員の居住状況別構成比(外国人・日本人別)
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7-2-2-2-22図は,少年の保護観察開始人員の経済状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。これは,ほとんどの少年が親や親族のもとで居住するため,家庭の経済状況を示すものと言える。いずれの保護観察処分少年,少年院仮退院者共に「普通」が約7〜8割と大半を占めるが,外国人は日本人と比べ,保護観察処分少年,少年院仮退院者共に「貧困」の比率が高い。


7-2-2-2-22図 少年の保護観察開始人員の経済状況別構成比(外国人・日本人別)
7-2-2-2-22図 少年の保護観察開始人員の経済状況別構成比(外国人・日本人別)
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7-2-2-2-23図は,少年の保護観察開始人員の就労・就学状況別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。保護観察処分少年,少年院仮退院者共に,外国人は,日本人と比べて無職の比率が高く,有職及び学生・生徒の比率が低い。就学・就労状況別の少年の保護観察状況に見られるとおり,無職であることは再犯リスク要因と認められるところ(3-2-5-6図参照),外国人少年についても,就労・就学に向けた指導や支援の必要性がうかがえる。


7-2-2-2-23図 少年の保護観察開始人員の就労・就学状況別構成比(外国人・日本人別)
7-2-2-2-23図 少年の保護観察開始人員の就労・就学状況別構成比(外国人・日本人別)
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7-2-2-2-24図は,少年の保護観察開始人員の教育程度別構成比(平成20年から24年の累計)を,外国人,日本人の別に見たものである。不就学,小学校・中学中退等の我が国でいう義務教育レベルの教育を修了していない者(中学在学中である者を除く。)の比率は,外国人の保護観察処分少年で6.6%,少年院仮退院者で10.0%と高い。義務教育レベルの教育を受けていない層については,日本語の読み書きを含め,日常生活を円滑に送り,安定した仕事に就くために必要とされる基礎学力に欠けることが懸念される。


7-2-2-2-24図 少年の保護観察開始人員の教育程度別構成比(外国人・日本人別)
7-2-2-2-24図 少年の保護観察開始人員の教育程度別構成比(外国人・日本人別)
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(5)外国人の再犯

7-2-2-2-25図は,外国人入所受刑者について,処分歴別の人員,有前科者率(入所受刑者人員に占める有前科者の比率をいう。なお,有前科者は,懲役・禁錮以上の刑(執行猶予を含む。)に処せられたことがある者に限る。以下この項において同じ。)及び再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)の推移(平成8年以降)を見たものである。外国人入所受刑者の人員は,17年をピークに翌年から減少している。有前科者及び再入者の人員も,18年以降減少傾向にあるが,外国人入所受刑者の人員が大きく減少したことに伴い,有前科者率は15年(40.2%)を底に,再入者率は16年(19.3%)を底にいずれも上昇傾向にあり,24年には有前科者率は61.4%,再入者率は36.0%となった(再入者の人員については,CD-ROM参照)。


7-2-2-2-25図 外国人入所受刑者人員(処分歴別)・有前科者率・再入者率の推移
7-2-2-2-25図 外国人入所受刑者人員(処分歴別)・有前科者率・再入者率の推移
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7-2-2-2-26図は,入所受刑者のうち有前科者及び有保護処分歴者(保護処分を受けたことがある者)について,来日外国人,日本人の別に,教育程度別構成比を見たものである。来日外国人は,我が国でいう義務教育レベルの教育を了していない者の比率が14.0%(日本人は1.0%)にも上る一方,高校卒業以上の者の比率も45.2%(同28.7%)と高い。


7-2-2-2-26図 有前科・有保護処分歴入所受刑者の教育程度別構成比(来日外国人・日本人別)
7-2-2-2-26図 有前科・有保護処分歴入所受刑者の教育程度別構成比(来日外国人・日本人別)
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7-2-2-2-27図は,入所受刑者のうち有前科者及び有保護処分歴者について,来日外国人,日本人の別に,犯行時の就労状況別構成比を見たものである。総数では,来日外国人,日本人共に,有職者率(有職者と無職者の合計に対する有職者の比率をいう。以下この項において同じ。)が30%台であり,来日外国人の方がわずかに高い。また,来日外国人の有職者率は,30歳代以上のいずれの年齢層についても日本人より高いが,29歳以下では日本人より低い。なお,日本人は,年齢層が上がるほど有職者率が低くなるが,来日外国人は,29歳以下の有職者率が30歳代及び40歳代より低い。


7-2-2-2-27図 有前科・有保護処分歴入所受刑者の就労状況別構成比(来日外国人・日本人別,年齢層別)
7-2-2-2-27図 有前科・有保護処分歴入所受刑者の就労状況別構成比(来日外国人・日本人別,年齢層別)
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そのほか,来日外国人及び日本人の有職者率を入所度数別に見ると,初入者ではほぼ同程度(それぞれ39.3%,37.1%)にあり,いずれも入所度数が上がるにつれて低下するが,入所度数が2度の者も3度以上の者も,来日外国人の方が日本人よりも有職者率が低い(それぞれ,来日外国人28.2%,21.0%,日本人34.2%,24.7%。法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。

再入者について,来日外国人,日本人の別に,入所度数別の再犯期間別構成比を見ると,7-2-2-2-28図のとおりである。なお,来日外国人には,前刑出所後に退去強制されるなどした者と,在留特別許可等により引き続き本邦に居住していた者がいる。


7-2-2-2-28図 再入者 再犯期間別構成比(来日外国人・日本人別,入所度数別)
7-2-2-2-28図 再入者 再犯期間別構成比(来日外国人・日本人別,入所度数別)
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