前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和40年版 犯罪白書 第一編/第二章/七/4 

4 罪名別からみた累犯者および再入受刑者

 最近五年間における有期懲役刑の新受刑者を罪名別にみて,どの罪名に累犯者が多いかをその累計についてみると,I-72表のとおりである。これによると,累犯者の占める比率が高いものは,刑法犯では,住居侵入(七八・六%),賍物関係(六七・七%),窃盗(六五・二%),詐欺(五九・五%),傷害(五五・九%),恐かつ(五一・〇%)であって,これらは累犯者が半数をこえている。

I-72表 罪名別新入受刑者のうち累犯者の占める人員と率等(昭和34〜38年累計)

 特別法犯では,銃砲刀剣類等所持取締法違反が六〇・九%,麻薬取締法違反が五九・三%,売春防止法違反が五八・五%,暴力行為等処罰に関する法律違反が五五・二%で,これらの犯罪は累犯者の占める比率が高い。
 これを新受刑者のうち,刑務所への入所度数三回以上のものについてみると,刑法犯では,住居侵入(六二・三%),賍物関係(四八・八%),窃盗(四六・八%),詐欺(四四・八%)が高率を示し,特別法犯では銃砲刀剣類等所持取締法違反(四一・七%),麻薬取締法違反(三九・一%),が高率を示している。これらの点からみると,累犯または常習犯的傾向が顕著な罪種は,刑法犯では窃盗その他の財産犯,特別法犯では麻薬または暴力犯罪と関連のあるものといえるように思われる。
 もっとも,右の統計は,同一人によって犯罪がくり返されたということを示すものではない。そこで,同一人によってどのような犯罪がくり返されているかをみるために,再入受刑者について,前刑の罪名と再入刑の罪名とが同一のものがどの程度あるかをみると,I-73表のとおりである。この表によると,昭和三六年から昭和:三八年までの平均では,罪名の一致度の比率の高いものは,窃盗の八三・一%,詐欺の五五・六%,傷害の三七・二%,恐かつの二八・六%である。また右の平均において従来の昭和二六年-三〇年,三一年-三五年の平均より一致度の高くなったものに,詐欺,恐かつ,傷害,放火がある。以上のことから,財産犯とくに窃盗,詐欺について常習犯化が強く,また,傷害,恐かつなどの暴力的犯罪に常習的に犯される傾向がうかがわれるということができると思う。

I-73表 再入受刑者の再入刑罪名と前刑罪名との関係(同一罪名の割合)(昭和26〜38年)