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 昭和40年版 犯罪白書 第一編/第二章/七/3 

3 新受刑者からみた累犯者

 有期懲役刑の実刑判決を受け,刑務所に収容された新受刑者(年間新たに入所した者をいう)について累犯者とそうでない者との割合をみてみよう。
 I-6図は,昭和一〇年以降につき新受刑者を累犯・非累犯に分け,その割合をグラフにしたものであるが,これによって明らかなように,戦前の昭和一〇年ないし一六年までは,累犯者と累犯でない者の割合はほぼ等しく,累犯者の比率の最も高かった昭和一五年でも五三%にとどまっていたが,戦争の進展するに伴ない累犯でない者の比率が高まり,昭和一九年には累犯でない者が七四%を示すようになった。この傾向は,戦争直後にも続き,昭和二一年には累犯でない者が七六・八%と戦前戦後を通ずる最高率を示すに至った。これは戦後の混乱期に犯罪者が続出し,その多くが初犯者であったことによるものである。その後は累犯でない者の率は逐年滅少し,昭和二六年には両者の比率が均等になり,昭和二七年以降は逆に累犯者が累犯でない者の率を上回るようになり,昭和二八年からは,ほぼ一定した比率,すなわち,累犯者が五六%ないし五八%を維持して昭和三八年には五六・五%となっている。

I-6図 新受列者中の初犯,累犯別人員と率(昭和10〜38年)

 次に,刑務所への入所度数,すなわち刑の執行を受けるために刑務所に入所したことのある度数を調べてみると,I-70表のとおり,新受刑者のうち初度目は,最近五年間の平均が約四〇%であり,残る約六〇%は二度目以上のものである。この表によると,初度目の者の占める割合が,わずかながら増加しているが,これは業務上過失致死傷等の交通犯罪により禁錮刑の実刑に処せられる者が増加しつつあり,かつこれらの者の大部分が初度目の入所者であることによるものと思われる。

I-70表 新受刑者の入所度数別人員と率(昭和34〜38年)

 ところで,前に自由刑の執行を受け,刑務所を出所した後,一〇年以内にさらに犯罪を犯し,再び刑務所に入所したものを,とくに再入受刑者とよんでいる。最近一〇年間における新受刑者のなかで,右の再入受刑者の占める比率をみると,I-71表のとおり,五六%ないし五八%とほぼ一定した割合を示している。ただ,これを男女別にみると,女子新受刑者のなかでの再入受刑者の比率が昭和三一年の三一・八%から昭和三八年の五一・二%といちじるしく増加しているのが注目される。

I-71表 新受刑者中の再入受刑者数と率(昭和31〜38年)