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平成24年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/4

4 保護司活動と官民協働

この項においては,保護司調査のうち,関係機関・民間団体との連携の状況や保護司活動に対する意識等について分析する。

(1)関係機関との連携

刑務所出所者等の処遇と社会復帰支援においては,本人やその家族等の多様なニーズに対応するため,様々な機関,団体と連携する必要があることを,第2章において取り上げた。そこで,ここでは,保護司意識調査から見た保護司活動と各種関係機関・民間団体との連携の状況について,連携強化に向けた課題と共に考察する。

最初に,関係機関・民間団体の種類別に,連携の状況についての調査結果を見る。連携状況についての設問では,学校,地方自治体の福祉部門等,矯正施設,病院,ハローワーク(公共職業安定所)等19種類の関係機関・民間団体について,それぞれ,「保護観察対象者の指導や援助において,連携の現状や重要性をどのようにお考えですか」と質問し,四つの選択肢,「連携をよく取っており,特に重要」,「連携をよく取っている」,「連携はあまり取っていないが,今後重要」及び「それ以外(重要でない,分からない等)」から一つを選択してもらった。

7-3-1-4-1図<1>は,「連携をよく取っており,特に重要」又は「連携をよく取っている」が選択された比率が高い項目の順に示したものである。最上位は「学校(小・中・高)」であり,これには,少年の保護観察対象者に学生・生徒が多いこと(3-2-5-5図参照)に加え,平成14年に法務省が中学生サポート・アクションプラン(第2章第3節2項(2)ウ参照)を開始するなど,学校との連携を強化していることなどが反映されていると推察される。以下,「BBS会や更生保護女性会」,「地方自治体の福祉等の関係部門」,「保護司自身の知人等」,「協力雇用主(会)」と続いており,学校,地域行政機関及び更生保護関連団体との連携がよく取られていることが分かる。一方,最上位の項目であっても,連携をよく取っているとした者(「連携をよく取っており,特に重要」又は「連携をよく取っている」を選択した者。以下この項において同じ。)は,全体の半分に達しておらず,連携をあまり取っていない保護司も相当数いることが分かる。


7-3-1-4-1図 保護観察処遇における関係機関・民間団体との連携状況・重要性
7-3-1-4-1図 保護観察処遇における関係機関・民間団体との連携状況・重要性
7-3-1-4-1図 保護観察処遇における関係機関・民間団体との連携状況・重要性

7-3-1-4-1図<2>は,「連携はあまり取っていないが,今後重要」と答えた保護司が占める比率が高い項目を,上から順に八つ示したものである。上位三つは,「出所者等支援や福祉支援を行う社会福祉法人・NPO法人(特定非営利活動法人)」,「ハローワーク」,「自助グループ等」であり,それぞれ6割以上の保護司が「連携はあまり取っていないが,今後重要」と答えたが,連携をよく取っているとした者も1〜2割程度いた。

7-3-1-4-1図<3>は,図<1>における上位6項目について,保護司の経験年数別(7-3-1-2-1表参照)で見たものである。「学校(小・中・高)」においては,連携をよく取っているとした者は,「20年以上」が56.7%,「10年以上(10年以上20年未満をいう。以下この項において同じ。)」が51.9%であるのに対し,「5年未満」は42.0%と低く,同様に,「BBS会や更生保護女性会」では,「20年以上」が57.7%に対し,「5年未満」は40.0%と低いなど,いずれの項目においても,「20年以上」あるいは「10年以上」においては,「5年以上(5年以上10年未満をいう。以下この項において同じ。)」あるいは「5年未満」よりも,連携をよく取っているとした者の割合が高くなった。経験年数と事件担当件数は関係がある(7-3-1-2-4図参照)ことから,各種事件の担当経験を通じて,多様な対象者の課題やニーズに対応するため関係機関・民間団体との連携がなされていることがうかがわれる。

次に,支援の内容別に,関係機関・民間団体との連携の程度を見ることとする。具体的には,「就職や就労継続支援」,「復学や就学継続支援」,「住居確保支援」,「薬物や飲酒問題の克服の支援」等九つの支援場面において,それぞれ関係機関や民間団体との連携(参加)の程度について,「連携できている」,「やや連携できている」,「あまり連携できていない」,「連携できていない」及び「わからない」の五つの選択肢から一つを選んでもらった。その結果は,7-3-1-4-2図のとおりである。「家族や保護者との関係改善の支援」の場面においては,約半数の者が,「連携できている(「やや連携できている」を含む。)」と答えているが,その他の場面においては,「連携できている(「やや連携できている」を含む。)」と回答する者の占める比率はいずれも3割以下であった。多くの保護司が,これらの場面において関係機関や民間団体等と十分な連携ができていないと感じながら処遇を行っていることが分かる。


7-3-1-4-2図 保護観察処遇の支援場面における関係機関・民間団体との連携の程度
7-3-1-4-2図 保護観察処遇の支援場面における関係機関・民間団体との連携の程度

前項では,保護司から見た保護観察対象者の社会復帰上の課題を分析し,就労問題,住居確保,飲酒・薬物問題及び交友関係の改善に対処するためには,公的機関の支援や問題解決のためのプログラムや治療の提供等を求める声が多いことが明らかになったが,これと併せて考えると,関係機関・民間団体との連携の現状は十分ではなく,さらに取り組む余地があると認識している保護司が少なくないことがうかがわれる。なお,経験年数の長い保護司ほど,よく連携している状況にあることから,連携がなされた事例等のノウハウの共有を図ることなどにより,全ての保護司が,必要なときに適切に連携が取れるようにするべく支援を強化する余地があるものと推察できる。

(2)保護司活動に対する意識

保護司活動を通じて感じることとして,<1>保護観察対象者の処遇に関すること,<2>保護司活動のやりがいや負担感に関することについて問い,それぞれ,「そう思う」,「そう思わない」及び「どちらでもない」の三つの選択肢により回答を求めた主な結果は,7-3-1-4-3図のとおりである。


7-3-1-4-3図 保護司活動を通して感じること
7-3-1-4-3図 保護司活動を通して感じること

保護観察対象者の処遇に関する項目の回答を見ると,保護観察対象者に対する謝罪や弁償の指導の観点から,被害者へ橋渡しできる機関等が必要と考えている保護司が多いことがうかがえるほか,専門的知識を持って処遇すべき保護観察対象者の対応や複数の問題を抱える保護観察対象者の対応に困難を感じている保護司が多いことや,助言や支援を必要とする保護観察対象者の家族や保護者が増えていると認識している保護司が多いことが分かる。

また,保護司活動のやりがいや負担感に関する項目からは,約半数の保護司が,保護観察対象者の更生に役立っている,社会の役に立っているという充実感があると答えている一方,充実感を得ていない保護司も2割弱見られ,また,自身及び家族の負担を認識している保護司も少なくないことが分かる。

また,7-3-1-4-4図は,7-3-1-4-3図で取り上げた各項目について,保護司の経験年数別(7-3-1-2-1表参照)に分析し,その中から差が見られた主なものを示したものである。


7-3-1-4-4図 保護司活動を通して感じること(経験年数別)
7-3-1-4-4図 保護司活動を通して感じること(経験年数別)

保護観察対象者の処遇に関する項目において,総じて,経験年数の短い保護司において,保護観察対象者の処遇に困難を感じ,複数の保護司による担当を望む傾向が見られた。また,やりがいや負担感に関する項目においては,総じて,経験年数が長い保護司ほど,充実感を得ており,また,自身や家族の負担感を低く評価していた。逆に,経験年数が短い保護司においては,半数程度の保護司が,充実感を得ていない状況にあり,また,3割程度の保護司が,自身や家族の負担が大きいと感じていた。

なお,やりがい及び負担感について,その内容を把握するため,「保護司として,やりがいを感じたこと,思い出深いこと,苦労されたこと等,お聞かせください。」と自由回答を求めたところ,やりがいについては,「保護観察対象者がだんだんと心を開いてくれているのを実感したとき。」,「来訪や往訪を繰り返すうち,保護観察対象者や家族が成長していくこと。」,「接しているうちに,言動が前向きになっていくこと。」など,面接を重ねるにつれて,保護観察対象者やその家族と信頼関係ができ,更生への変化を感じ取れたときの感慨や,更生して保護観察が無事終了したときの笑顔や感謝の言葉が多く挙げられた。また,保護観察終了後に,「(結婚した,就職した,近くに来たなどの理由で)元保護観察対象者が会いに来てくれたこと。」,「元保護観察対象者やその家族に,偶然町で会うと,声をかけてくれること。」,「まじめに働いている姿や,落ち着いた生活を送っているのを見たとき。」などを「保護司冥利に尽きる」とした回答も多かった。負担感については,「保護者の無関心」,「家族との関係が悪い。」,「保護観察対象者も保護者も規範意識が乏しい。」などの処遇困難な保護観察対象者の対応に関すること,「面接の時間をやりくりしているが,約束を破られる。」,「面接時にうそをつかれた。」など,保護観察対象者の不誠実な態度に関すること,「保護観察対象者に合った仕事を見つけてやれなかった。」,「まじめに面接に来ていた保護観察対象者が,再犯をし,指導の自信をなくした。」,「薬物事犯者を救うことができなかった。」など,改善更生をうまく支援できなかったことに自責の念を抱く内容が,それぞれ散見された。

(3)保護司活動の困難を軽減するための方策

7-3-1-4-5図は,保護司活動をする上での困難を軽減するための方策を探るため,「保護司活動の困難を軽減するため,次の事項はどの程度有効とお考えですか」と質問し,各項目について「特に有効である」,「やや有効である」,「あまり有効でない」及び「有効でない」の四つの選択肢から一つの回答を求めたものである。「報酬制度の導入」を除き,いずれの項目も,「有効」(「特に有効である」又は「やや有効である」をいう。以下この項において同じ。)を選択した保護司が,全体の7割以上を占めているが,特に,「保護観察官の指導や関与の充実」,「保護観察官との連絡体制の充実」及び「保護司同士が知識・経験を共有できる場」は,ほとんどの保護司が「有効」を選択しており,処遇のパートナーである保護観察官及び同じ立場である他の保護司との協力態勢を強化することによって,軽減の方策が見いだされると考えている保護司が多いことがうかがえる。なお,「特に有効である」を選択した保護司の比率に限ってみると,「地方自治体による保護司活動に対する支援」及び「保護司活動への地域社会の理解や協力」も,50%弱と比較的高い値を示しており,保護司がその地域性をより発揮するためには,基盤となる地域社会からのバックアップも重要であることがうかがえる。


7-3-1-4-5図 保護司活動に関する困難の軽減策
7-3-1-4-5図 保護司活動に関する困難の軽減策

また,これらの結果を,保護司の経験年数別で比較したところ,「地方自治体による保護司活動に対する支援」においてのみ差が見られた。この項目では,「10年以上」及び「20年以上」の保護司において,「特に有効である」を選ぶ者の比率(それぞれ,48.8%,52.1%)が,「5年以上」の保護司における同比率(39.6%)に比して高く,「あまり有効でない」を選ぶ保護司の比率は,「10年以上」(8.8%)が,「5年以上」(13.7%)に比して低かった。すなわち,経験年数の長い保護司は,比較的経験年数の短い保護司に比べ,地方自治体による保護司活動に対する支援は有効であると考える人が多い傾向にある。

なお,前記(2)で取り上げた,保護司のやりがいに関する項目のうち,「社会の役に立っているという充実感がある」及び「対象者の更生に役立っているという充実感がある」のいずれか又は双方で「そう思わない」を選んだ保護司(495人)と,それ以外の保護司について,各項目の「特に有効である」を選択する比率で,傾向が異なる項目は,「事件担当や研修参加等の時間的負担の軽減」のみであった。この項目においては,充実感を得ていない保護司が「特に有効である」を選ぶ比率は20.8%で,それ以外の保護司における同比率(15.7%)より高かった。それ以外の項目においては,「特に有効である」を選択する比率に差がないか,差がある場合は,充実感を得ていない保護司において,低かった。充実感を得ていない保護司と,それ以外の保護司について,性別,年齢層,経験年数及び住居地の人口規模における差は見られない。充実感の低さと活動の負担感には一定の関係があると推測されることから,過重負担とならぬよう,保護司が末永くやりがいを持って活動できるように活動に伴う様々な負担の軽減を図るとともに,組織的に行われるものを含めた活動が十分な実績を上げられるように多面的な支援を進めていく必要がある。