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 平成21年版 犯罪白書 第7編/第3章/第2節/3 

3 覚せい剤受刑者

(1)調査対象者の入所時の年齢層別構成

 調査対象の覚せい剤取締法違反による受刑者の入所時の年齢層別人員を構成比で,男女別及び初入者と2入者の別に見ると,7-3-2-3-1図のとおりである。
 調査対象者合計540人のうち,男女別では,男子65.7%,女子34.3%,初入者と2入者の別では,初入者50.7%,2入者49.3%であり,入所時の平均年齢は,男子初入者34歳,男子2入者38歳,女子初入者33歳,女子2入者37歳であった。なお,その年齢構成は,平成20年における覚せい剤取締法違反による入所受刑者の年齢構成とほぼ一致している。

7-3-2-3-1図 年齢層別構成比(男女別・入所度数別)

(2)覚せい剤使用の実態

 ア 使用開始年齢等
 7-3-2-3-2図は,男女別に,覚せい剤使用を開始した年齢層別の構成比を見たものである。
 男女共に,15〜19歳で覚せい剤使用を開始した者の構成比が最も高く(男子38.2%,女子50.3%),20〜24歳で使用を開始した者の構成比が次に高い(男子32.5%,女子18.2%)。男女別では,女子は,男子よりも低年齢で使用を開始した者の構成比がやや高い傾向がうかがわれる。

7-3-2-3-2図 覚せい剤使用開始年齢層別構成比(男女別)

 次に,覚せい剤使用開始年齢を,三つの年齢層別に分けて,男女ごとに,初入者と2入者の別に構成比で見ると,7-3-2-3-3図のとおりである。
 覚せい剤使用開始年齢を,初入者と2入者とで比較すると,2入者において,男子では,19歳以下と20〜24歳の各年齢層が,女子では,19歳以下の年齢層の構成比が高い。

7-3-2-3-3図 覚せい剤使用開始年齢層別構成比(男女別・入所度数別)

 前記のとおり,2入者は,初入者と比べ,少年時に既に覚せい剤使用を開始していた者の占める構成比が高いことから,少年時に覚せい剤取締法違反や毒劇法違反・大麻取締法違反での逮捕歴を有する者の比率を,初入者と2入者ごとに,男女別に構成比で見る(併せて,少年時にその他の犯罪での逮捕歴を有する者についても見ることとした。)と,7-3-2-3-4図のとおりである。
 初入者と2入者を比較すると,2入者において,男女共に,少年時に薬物犯罪による逮捕歴のある者の構成比が高い。

7-3-2-3-4図 少年時逮捕歴別構成比(男女別・入所度数別)

 イ 使用頻度及び再使用までの期間
 覚せい剤受刑者の覚せい剤への依存の程度を示すものとして,2入者に限って,本件時における覚せい剤使用頻度を初逮捕(覚せい剤使用による初めての逮捕又は補導をいう。以下,この項において同じ。)時の使用頻度との関連で見る(7-3-2-3-5図のとおり)とともに,初入後に釈放されてからの覚せい剤の再使用開始までの期間を初逮捕後に釈放されてからの再使用開始までの期間との関連で見ると,7-3-2-3-6図のとおりである。
 本件時の覚せい剤使用頻度及び初入後に釈放されてからの再使用開始までの期間は,多様であるが,本件時の使用頻度は,初逮捕時の使用頻度とほぼ同じ程度の者が多く,また,再使用開始までの期間も,初逮捕後の再使用開始までの期間とほぼ同じ程度の者が多かった。

7-3-2-3-5図 覚せい剤使用頻度(初逮捕時・本件時)

7-3-2-3-6図 覚せい剤再使用開始までの期間(初逮捕後釈放・初入後釈放)

 ウ 覚せい剤使用の端緒・動機
 覚せい剤受刑者が本件時に覚せい剤使用に至った端緒(きっかけ)を,男女ごとに初入者と2入者の別に選択率で見ると,7-3-2-3-7図のとおりである(選択率が高い項目に限って示した。)。
 全体的に,他人からの誘惑が端緒であった者が相当多いといえるが,誘惑してきた相手方の別に見ると,男女共に,「友人知人」の比率が最も高く,次順位は,男子では「暴力団関係者・売人」であるが,女子では「交際相手」である。また,「家族や交際相手とのトラブル等」や「職場でのトラブル・失職等」が端緒となった者も少なくない。

7-3-2-3-7図 覚せい剤使用の端緒(男女別・入所度数別)

 次に,本件時の覚せい剤使用の直接的な動機(使用の目的・理由)を,初入者と2入者を区別せず,男女別に選択率で見る(併せて,2入者について,本件時と初入時での動機の一致度についても見ることとした。)と,7-3-2-3-8図のとおりである。
 男子では,「快感を得るため」(54.1%),「嫌なことを忘れるため」(43.9%),「疲れを取るため」(38.0%)が動機であった者の比率が高い。女子では,「嫌なことを忘れるため」(60.0%),「快感を得るため」(49.2%),「疲れを取るため」(40.5%)の順である。

7-3-2-3-8図 覚せい剤使用の動機(男女別)

 エ 共犯者
 7-3-2-3-9図は,本件における共犯者の有無・種別構成比を,男女別に見たものである。
 女子では,共犯者がいた比率が約6割であり,共犯者の種別としては,「交際相手」(29.9%)が多い。

7-3-2-3-9図 共犯者別構成比(男女別)

 オ 有機溶剤乱用経験
 覚せい剤使用者は,一般的に,他の薬物を使用することも多く,また,有機溶剤(シンナー等)の乱用から覚せい剤使用に移る者も少なくないと思われるが,調査対象者について,有機溶剤の乱用経験を有する者の比率を,男女ごとに,初入者と2入者の別に見ると,7-3-2-3-10図のとおりである。
 有機溶剤の乱用経験を有する者の比率は,全体で73.0%と非常に高く,初入者と2入者を比較すると,男女共に,2入者において,有機溶剤乱用経験がある者の比率が高い。
 なお,大麻の使用経験がある者の比率も高く(男子66.3%,女子77.2%),MDMAについても,ある程度の比率(男子30.3%,女子39.1%)に及んでいるが,これらの薬物の使用経験の有無については,初入者と2入者とで目立った差は認められなかった。

7-3-2-3-10図 有機溶剤乱用経験を有する者の比率(男女別・入所度数別)

(3)覚せい剤使用の問題性区分による分析

 前記(2)での分析によると,2入者は,初入者と比べ,覚せい剤の使用開始年齢が低く(7-3-2-3-3図参照),有機溶剤乱用経験を有する比率が高い(7-3-2-3-10図参照)傾向が認められる。
 そこで,調査対象者を,覚せい剤使用開始年齢の区分(早い(A),遅い(B))と,有機溶剤乱用経験の有無の区分(有(1),無(2))との組合せによって,A1群,A2群,B1群,B2群の4群に分け,男女ごとに,初入者と2入者の別に各群の人員の構成比を見ると,7-3-2-3-11図のとおりであり,問題性が重複しているA1群は,2入者において,高い比率を占めていることが確認できる。

7-3-2-3-11図 問題性区分別構成比(男女別・入所度数別)

 さらに,前記の問題性区分による4群ごとに,本件時の覚せい剤の使用頻度と,初入後に釈放されてからの覚せい剤の再使用開始までの期間を見ると,7-3-2-3-12図及び7-3-2-3-13図のとおりである。
 問題性が重複しているA1群において,使用頻度が高い(月に11回以上)者と,再使用までの期間が短い(6月以内)者の占める構成比は,問題性の低いB2群と比べ,顕著に高いことが分かる。

7-3-2-3-12図 覚せい剤使用頻度別構成比(問題性区分別)

7-3-2-3-13図 再使用までの期間別構成比(問題性区分別)

 以上によれば,覚せい剤使用開始年齢が低いこと及び有機溶剤乱用経験を有することは,再犯リスクを高める要因になっているということができる。

(4)覚せい剤使用等に関する意識

 調査対象者の覚せい剤使用や自己イメージ等に関する意識についての回答結果を選択率で,前記の問題性区分による4群ごとに見ると,7-3-2-3-14図のとおりである。
 「[1]覚せい剤が効いたときの快感は,言葉では言いにくいほどである」と,「[2]自分は,生まれつき,スリルや快感を求める気持ちが強い」では,肯定回答した者の比率が,A1群において,B2群と比べて顕著に高く,こうした回答をする者は,覚せい剤への依存傾向が強く,再犯リスクが高いことがうかがわれる。
 「[3]自分は,生まれつき,我慢や辛抱をする力が弱い」と,「[4]自分は,反省したことや,決心したことを忘れてしまいやすい」でも,肯定回答した者の比率が,A1群において,B2群と比べて顕著に高く,自制力や忍耐力の不足が再犯リスクを高めていることがうかがわれる。
 さらに,A1群では,「[5]刑務所生活に懲りて,覚せい剤をやめる人は少ない」についても,肯定回答した者の比率が相当に高く,再犯リスクが高い者に対する,更生を遂げさせるための処遇の困難さがうかがわれる。

7-3-2-3-14図 覚せい剤使用等に関する意識 回答別構成比(問題性区分別)

(5)改善更生のための処遇等に関する意識(2入者)

 7-3-2-3-15図は,2入者に限って,初入時に受けていれば更生に役立ったと考える助言・指導等についての回答結果を,男女別に選択率の高い順(上位8項目)に見たものである。
 男女共に,平成18年度に導入された特別改善指導である「薬物依存離脱指導」を挙げた者が最も多く,「薬物依存離脱指導」に対する覚せい剤受刑者の関心や期待の高さを反映しているものとみられる。このほか,男子では,「就職のこと」(36.0%),「職業訓練や資格・免許の取得」(32.6%)の順であり,女子では,「職業訓練や資格・免許の取得」(「薬物依存離脱指導」と同率の48.4%),「家族関係」(42.9%),「就職のこと」(38.5%)の順となっている。

7-3-2-3-15図 更生に役立つと思う助言・指導等(男女別)

 7-3-2-3-16図は,受刑を経てもなお再犯に至った2入者が更生に失敗して再犯に陥った原因を探るため,初入後に釈放されてからの更生のための取組状況についての2入者の主な回答結果を選択率で,男女別に見たものである。
 更生のためには,「まじめに働く」,「規則正しい生活をする」,「友人知人との付き合い方を変える」ことが必要であると考えていた者が多く,これらの者のうち,前二者については,実行できたと回答している者の方が多いが,「友人知人との付き合い方を変える」については,実行できなかったと回答している者の方が多く,交友関係を良好なものとできなかったことが再犯につながった原因の一つになっていることがうかがわれる。

7-3-2-3-16図 更生のための取組状況(男女別)

(6)まとめ

 覚せい剤受刑者では,覚せい剤の使用開始年齢が低く,又は有機溶剤の乱用経験を有する者は,問題性が大きく,再犯(再入)に陥りやすいことが確認された。また,過去に,使用頻度が高く,又は再使用開始までの期間が短いということから覚せい剤への依存が強かった者は,その後も,強い依存を維持する傾向がうかがわれ,こうした傾向は,低年齢で覚せい剤使用を開始した者など,問題性が大きい者に認められやすいこともうかがわれた。
 さらに,覚せい剤の薬理作用に強い快感をもつ者,自制力・忍耐力や反省心が乏しい者は,再犯に陥りやすい傾向もみられた。
 覚せい剤を使用する端緒としては,「友人知人からの誘惑」など他人からの誘惑を挙げた者が多く,交友関係を良好なものとすることが,再犯を抑止する上で重要であることがうかがわれた。
 刑事施設内における処遇に関しては,初入時に受けていれば更生に役立ったと考える指導等として「薬物依存離脱指導」を挙げる者が最も多く,その充実は,受刑者においても期待していることがうかがわれた。