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 平成21年版 犯罪白書 第2編/第1章 

第2編 犯罪者の処遇

第1章 概要

 この章においては,警察等に検挙された者が,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階で受ける処遇(取扱い)の概要を紹介する(少年事件については,第4編第2章第1節参照)。
 成人犯罪者に対する刑事司法手続の流れは,2-1-1図のとおりである。

2-1-1図 刑事司法手続(成人)の流れ

 警察等が検挙した事件は,微罪処分(刑事訴訟法246条ただし書に基づき,検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な窃盗,詐欺,横領等の成人による事件について,司法警察員が,検察官に送致しない手続を執ることをいう。)の対象となったものや反則金の納付があった道路交通法違反を除き,すべて検察官に送致される。なお,平成20年に微罪処分により処理された人員は,11万4,228人(一般刑法犯では,微罪処分により処理された人員は11万4,204人であり,全検挙人員に対する比率は33.6%)であった(警察庁の統計による。)。
 検察官は,これらの送致事件について捜査を行うほか,必要に応じて自ら事件を認知し,又は告訴・告発を受けて捜査をする。検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の成否,処罰の要否等を考慮して,事件の起訴・不起訴を決める。
 起訴された事件の裁判は,公判手続による場合と略式手続による場合がある。
 公判手続による場合は,公判廷で裁判が行われ,有罪と認定されたときは,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留又は科料の刑が言い渡される。3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金については,情状により,一定期間,刑の執行が猶予されることがあり,その場合,猶予の期間中,保護観察に付されることがある。なお,平成18年10月2日以降,死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件を除き,明白軽微な事件については,即決裁判手続による場合があり,この手続では,懲役又は禁錮の言渡しをする場合は,刑の執行猶予の言渡しをしなければならない。即決裁判手続の流れは,2-1-2図のとおりである。

2-1-2図 即決裁判手続の流れ

 略式手続による場合は,書面審理によって100万円以下の罰金又は科料の裁判が行われる。
 有罪の裁判が確定すると,刑の執行が猶予された場合を除き,検察官の指揮により刑が執行される。懲役,禁錮及び拘留は,刑務所等の刑事施設において執行される。刑事施設では,受刑者の改善更生の意欲を喚起し,社会生活に適応できる能力を育成するため,矯正処遇として,作業をさせ,改善指導や教科指導を行っている。なお,罰金又は科料を完納できない者は,刑事施設に附置された労役場に留置される。
 受刑者は,刑期の満了によって釈放されるが,刑期の満了前であっても,地方更生保護委員会の決定により仮釈放が許されることがあり,仮釈放者は,仮釈放の期間中,保護観察に付される。
 売春防止法違反により補導処分に付された女子は,婦人補導院に収容されるが,地方更生保護委員会の決定により仮退院が許されることがあり,補導処分の残期間中,保護観察に付される。
 保護観察に付された者は,保護観察所の保護観察官及び民間の篤志家である保護司の指導監督・補導援護を受ける。