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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第6章/第2節/2 

2 窃盗(犯罪性の進度に応じた対応や指導が必要)

 窃盗の高齢初犯者の手口のほとんどは万引きである。男性の高齢初犯者のうち,その動機・原因が生活困窮にあるものが半数近くを占めるところ,こうした問題を持つ高齢窃盗事犯者に対しては,就労が不可能な者については直ちに福祉的な援助につなぐ必要があり,また,就労が可能な者についても,就労につなぐまでの一時的な生活の援助が得られるよう,調整を行うことが重要である。その上で,金銭管理指導等の生活指導や,必要に応じ酒害教育等の支援を実施することが必要となろう。ただ,第3章第2節2(3)で見たように,単に対象物の所有や節約を目的として繰り返し万引きに及ぶ女子の場合の問題はまた別であると思われる。その対策は,金銭的なサポートにあるのではなく,むしろ教育的なものにあり,単なる起訴猶予で刑事手続から離してしまうのではなく,被害回復や身元引受人の存在の確認等をした上で,いったん処分としては起訴猶予とするものの,その後も検察官において被疑者となった高齢者や被害者と連絡を取って処分後の経過を観察し,再犯のおそれが払拭できない状況にあれば,事件を再起して起訴を検討するなどの運用も今後検討すべきではないだろうか。
 また,窃盗を繰り返し,かつ,受刑歴を有する者については,社会的にも孤立し,安定した職も持たない傾向が見られることから,積極的な手当てを検討することが肝要なのではないだろうか。更生保護施設においても,社会性を持たせるような訓練・指導を充実させ,また,就職できず,金銭にまつわる問題を解消できない者については,福祉制度を積極的に活用するなどして,再度,犯罪に及ぼうとする気持ちを事前に摘み取っていく努力をすべきではないかと考える。