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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第2章/第1節/1 

第2章 高齢犯罪者の動向等

第1節 検挙

1 一般刑法犯検挙人員の推移

 高齢者による犯罪の増加は著しく,高齢者人口の伸びをはるかに超えて急増し,一般刑法犯の総検挙人員に占める高齢者の比率(高齢者比)も年々高くなっている。
 7-2-1-1図は,最近20年間における,一般刑法犯の年齢層別検挙人員及び総検挙人員に占める各年齢層の構成比の推移を見たものである。

7-2-1-1図 一般刑法犯の年齢層別検挙人員・構成比の推移

 高齢者による犯罪は,その絶対数こそ若い世代に比べて少ないが,近年の増加傾向が極めて目立っている。昭和63年には,高齢者の一般刑法犯検挙人員は9,888人であり,高齢者比は2.5%であったが,平成19年には,それぞれ4万8,605人(20年間で3万8,717人(391.6%)増),13.3%(同10.8ポイント上昇)と大幅に増加・上昇している。
 この間の検挙人員の総数は,増減がありながらも,昭和63年の39万8,208人から平成19年の36万6,002人(20年間で3万2,206人(8.1%)減)と,やや減少している。これを年齢層別に見ると,20〜29歳,30〜49歳の各層は,昭和63年の水準とそれほど変わっていないが,20歳未満の層は,63年の検挙人員が19万3,756人,総検挙人員に占める年齢層の構成比が48.7%だったものから,平成19年にはそれぞれ10万3,921人(同8万9,835人(46.4%)減),28.4%(同20.3ポイント低下)と,高齢者層とは対照的に大幅に減少・低下している。一方,高齢者予備軍ともいうべき50〜64歳の層は,昭和63年の検挙人員が3万9,294人,年齢層の構成比が9.9%だったものから,平成19年にはそれぞれ6万6,395人(同2万7,101人(69.0%)増),18.1%(同8.3ポイント上昇)と目立って増加・上昇している。
 7-2-1-2図は,男女別に一般刑法犯の年齢層別検挙人員の推移(最近20年間)を見たものである。

7-2-1-2図 一般刑法犯の男女別・年齢層別検挙人員の推移

 高齢者の犯罪の大幅な増加は,男女ともに見られる傾向である。女子高齢者の一般刑法犯検挙人員は,昭和63年には3,213人であったが,平成19年には,1万5,350人と約4.8倍に増加している。女子の総検挙人員に占める高齢者の比率(女子高齢者比)も,昭和63年には3.9%であったが,平成19年は19.3%(20年間で15.4ポイント上昇)であった。
 平成19年の一般刑法犯総検挙人員中の女子比は21.7%であるが(1-1-1-6図参照),高齢者層では31.6%を占め,他の年齢層と比較して女子比が高い。
 こうした高齢者による犯罪の増加には,社会全体における急激な高齢化の進行が寄与していることは疑いないが,前章で見たとおり,高齢犯罪者は,高齢者人口の増加率よりもはるかに高い比率で増加している。
 一般刑法犯検挙人員の年齢層別人口比の推移(最近20年間)は,7-2-1-3図のとおりである。

7-2-1-3図 一般刑法犯検挙人員の年齢層別人口比の推移

 高齢者の犯罪は,年齢層別人口比で見ても,平成3年以降,顕著な上昇傾向にあり,特に,ここ数年の上昇は著しい。
 一般的に,一般刑法犯検挙人員の年齢層別人口比は,年齢層が若いほど高い傾向にある。特に,20歳未満の層の検挙人員の人口比の高さは,他の年齢層と比べて群を抜いているが,その推移を見ると,昭和63年には1,624.9であったのが,平成19年には1,390.7と234.2ポイント低下している。これに対し,検挙人員の高齢人口比は,昭和63年に71.7であったものが,平成2年には42.6まで低下し,その後,上昇傾向に転じ,19年には177.0と,昭和63年の約2.5倍の水準にまで上昇している。これは,平成12年当時の30〜49歳の層に迫る勢いであり,13年当時の50〜64歳の層を上回っている。
 注目すべきは,高齢者予備軍ともいうべき50〜64歳の層についても,検挙人員の人口比が目立って上昇していることであり,昭和63年に179.0であったものが,平成2年には107.8まで低下したが,その後,上昇傾向に転じ,19年には246.3と,昭和63年の約1.4倍にまで上昇し,同じ平成19年の30〜49歳の層の検挙人員の人口比(245.9)を追い抜くに至っている。
 このように,社会の高齢化が急速に進む中で,高齢者の犯罪が,高齢者人口の伸びをはるかに超えた高率で増加し,さらにその予備軍ともいうべき年齢層においても著しく増加している現状は,将来的に高齢者犯罪が更に増加する可能性をうかがわせ,看過し得ない状況にある。