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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第4節/2 

2 年齢

(1)総説
 次に,再犯者の実態として,どの年齢層に,どのような特徴が見られるかについて概観する。ここで,特に取り上げた年齢層は,[1]若年者(以下,本節において「若年者」とは,20歳代の者をいう。),[2]少年時(16〜19歳)に刑事裁判で有罪判決を受けた者,及び[3]高齢者(以下,本節において「高齢者」とは,65歳以上の者をいう。)である。
 7-3-4-3図は,50万人再犯者犯歴を対象に,昭和61年(1986年)から平成17年(2005年)までの20年間に1犯目の犯罪を犯していた再犯者が,何歳の時にその1犯目を犯したかを見たものである。

7-3-4-3図 1犯目の年齢層別人員構成比

 20歳代前半に1犯目を犯した者が40%を超え,20歳代後半に1犯目を犯した者と併せて約60%を占めている。
 次に,70万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,1犯目を犯した時の年齢層別に,2犯目までの再犯期間について見たのが7-3-4-4図である。

7-3-4-4図 1犯目の年齢層別・1犯目から2犯目までの再犯期間別人員構成比

 20歳代前半では約47%が,55歳以上では過半数が,高齢者では約4分の3が,2年以内の期間に再犯を犯している。

(2)若年者
 1犯目の裁判時に若年者であった者の人口比(当該裁判年における当該年齢層人口10万人当たりの人員の比率をいう。)の推移(最近30年間)は,7-3-4-5図のとおりである。

7-3-4-5図 1犯目の裁判時に若年者であった者の人口比の推移

 20歳代の人口は平成9年以降減少を続けているが,他方1犯目の裁判時に若年者であった者の人口比は,4年に最近30年間で最低となって以降ほぼ一貫して上昇を続け,17年には,20歳代前半が昭和62年(1987年)の水準に,20歳代後半が59年(1984年)の水準に,それぞれ戻った。
 7-3-4-6図は,70万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,1犯目の裁判時の年齢層別に,その後の再犯の有無を見たものである。

7-3-4-6図 1犯目の年齢層別・再犯の有無別人員構成比

 20歳代前半で1犯目の犯罪を犯した者の41.0%,20歳代後半で1犯目の犯罪を犯した者の28.2%が,その後再犯に及んでおり,他の年齢層に比べて,1犯目の犯罪を犯した者が2犯目以降を犯す比率が高い。特に,20歳代前半で1犯目の犯罪を犯した者の再犯傾向が強いことは,その5年以内再犯率がおおむね25%前後と,他の年齢層と比べて相当高い状態が続いている(前記7-3-3-4図)ことからも確認される。

 次に,20歳代の初入新受刑者を対象に,平成18年の保護処分歴の有無を罪名別に見たのが7-3-4-7図である。

7-3-4-7図 初入新受刑者の年齢層別・罪名別保護処分歴

 20歳代前半の者については,入所罪名にかかわらず,いずれも20歳代後半の者と比べて,保護処分歴のある者の比率が相当高い。中でも,前記7-3-1-1図で示した主要な犯罪である傷害・暴行,窃盗,覚せい剤取締法違反を犯して入所した者に,保護処分歴のある者の比率が高い。この傾向は,平成9年から18年のいずれの年においても同様であって(矯正統計年報による。),20歳代前半において1犯目の犯罪を犯した者においては,少年のころから非行を行っていた者が多いことが分かる。なお,20歳代後半以降,いずれの罪名においても,「保護処分歴あり」の比率は大幅に低下し,年齢が高くなるほど,低くなっている。
 以上より,若年者の再犯者の特徴として,[1]若年者の中でもとりわけ20歳代前半に1犯目の犯罪を犯した者は,他の年齢層において1犯目を犯した者と比べて,特にその後再犯に及ぶ比率が高く,再犯期間も短いこと(少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者については,本項(3)において,20歳代前半に1犯目の犯罪を犯した者との関連で分析する。),[2]そのうち20歳代前半に刑務所に入所した者については,既に少年時の保護処分を受けたことのある者が多く,取り分け傷害・暴行,窃盗,覚せい剤取締法違反を犯して受刑した者についてその比率が高いことが指摘できる。したがって,20歳代前半に1犯目を犯した者に対しては,再犯防止対策を強化し,特に初犯者が身柄を釈放されるなどして再犯を犯す可能性が生じた時から2年以内を重点にこれを行う必要があるといえよう。

(3)少年
 次に,少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者のその後の再犯状況を見る。
 昭和40年以降,基準日までに,少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた3,561人(年齢の内訳は,16歳が29人(0.8%),17歳が231人(6.5%),18歳が776人(21.8%),19歳が2,525人(70.9%))を対象として,総犯歴数別に構成比を見たのが,7-3-4-8図である。

7-3-4-8図 少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者の総犯歴数別構成比

 少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者のうち,約60%の者が,その後再犯に及んでいる。これは,成人の初犯者がその後再犯に及ぶ比率(約3割)と比べて相当高い。その後再犯に及んだ少年の,少年時の刑事裁判で有罪判決を受けた罪名別の構成比を見ると,窃盗が81.1%,覚せい剤取締法違反が76.6%と非常に高い比率を示している。
 さらに,少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者の非行傾向を知るため,家庭裁判所の終局決定が検察官送致であった者の中で,過去に処分歴のある者(業過及び危険運転致死傷を除く。)の比率を,平成14年から18年までの最近5年間を例にして見たところ,72.9%〜75.1%であった(司法統計年報による。)。
 以上のとおり,少年時に刑事裁判で有罪判決を受けた者がその後再犯に及ぶ比率は相当高い。これは,少年の犯罪事件の大部分が,家庭裁判所における少年保護事件として終了していることからしても,少年時に刑事裁判で有罪判決を受ける者は,それまでにも非行を行い,保護処分によって指導を繰り返し受けながら更生できずにいるか,あるいは非行自体が悪質重大であるなど,犯罪・非行傾向がかなり進んでいる者である場合が多いことによるものと考えられる。したがって,これらの者に対しては,より一層強力かつ手厚い再犯防止対策を講じる必要があるであろう。

(4)高齢者
 1犯目の年齢層別・1犯目から2犯目までの再犯期間別人員構成比を見た前記7-3-4-4図によると,高齢者の場合,他の年齢層と比べて,6月を超え1年以内の期間に再犯を犯す者の比率が31.1%と際立って高く,6月以内の者も併せると,約半数の者が1年以内の期間に再犯を犯している。
 また,50万人再犯者犯歴を対象に,多数回再犯者の裁判時年齢層別犯歴の件数構成比の推移を見た前記7-3-3-5図によると,近年において高齢者の占める比率が急速に高まって,平成17年においては20.3%となっており,これに,55歳以上64歳以下の者を併せると64.4%に達している。

 これら多数回高齢再犯者(高齢者で,犯歴の件数が10犯以上の者をいう。以下,本節において同じ。)がどのような罪名の犯罪を犯しているのかを知るため,平成17年における多数回高齢再犯者の罪名別犯歴の件数構成比を,35万人再犯者犯歴を対象として見たのが7-3-4-9図である。

7-3-4-9図 多数回高齢再犯者の罪名別犯歴の件数構成比

 窃盗が51.4%と過半数を占め,件数において続く詐欺を併せると,全体の60%以上を占める。また,覚せい剤取締法違反も10%おり,高齢になってもなお薬物乱用を止めることができない者が相当数含まれている。
 以上より,高齢者の再犯防止対策としては,その再犯期間が短いことから,この短い期間内に再犯防止対策を集中して行うほか,高齢再犯者,取り分け多数回高齢再犯者の多くが窃盗及び詐欺を犯しているという特徴に着目した対策を検討したり,高齢の薬物乱用者に対する特別の処遇を検討したりすることが重要であるといえよう。