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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第4節/1 

1 罪名

 第2節で述べたとおり,再犯防止対策においては,初犯者が2犯目の犯罪に至るのをいかに防止するかという視点が重要である。そこで,まず,本項において,1犯目の犯罪の罪名別に,その後の再犯状況においてどのような特徴があるかを見ることとする。
 7-3-4-1図は,70万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,主な罪名について,1犯目の罪名別に,その後の再犯の有無を見たものである。このうち,再犯のある者については,1犯目と同じ罪名の再犯(以下,本節において「同一再犯」という。)がある者と,1犯目とは異なる罪名の再犯しかない者とを分けて,それぞれの比率を見ることとした。

7-3-4-1図 1犯目の罪名別・再犯の有無別構成比

 再犯に及んだ者の比率が最も高かったのは,1犯目の罪名が窃盗の者(44.7%)であり,次いで,覚せい剤取締法違反の者(41.6%)であった。これらについては,同一再犯に及んだ者の比率が他の罪名の場合と比べて相当高く,同じ罪名の犯罪を繰り返す傾向が認められる。このような傾向は,1犯目の罪名が傷害・暴行や風営適正化法違反の者にも同様に見られる。
 一方,1犯目の罪名が強盗(事後強盗,強盗致死傷及び強盗強姦・同致死を含まない。以下,本項において同じ。)の者及び強姦の者については,再犯に及んだ者の比率は,全体の比率(28.9%)を上回っているが,同一再犯に及んだ者の比率は,それぞれ2.0%と3.0%にとどまっている(なお,性犯罪については本節5項において,より詳細な分析を行うこととする。)。また,1犯目の罪名が殺人の者については,再犯に及んだ者の比率が16.7%,同一再犯に及んだ者の比率が0.9%であり,いずれも他の罪名に比べて相当低かった。
 なお,1犯目と異なる罪名の再犯に及ぶ者が比較的多い罪名を1犯目に犯した者について,どのような罪名の再犯に及んでいるのかを見たところ,特徴的な傾向として,1犯目の罪名が強盗の者については,その後,窃盗や傷害・暴行に及ぶ比率がそれぞれ42.9%と38.9%,1犯目の罪名が詐欺の者については,その後,窃盗に及ぶ者の比率が40.0%(傷害・暴行は24.6%)と,他の罪名に比べて相当高かったことが挙げられる。
 次に,1犯目の罪名と2犯目までの再犯期間との関係について見る。
 再犯期間の長短は,犯罪者に対して,社会内で指導監督や支援を重点的に行うべき期間を検討する上で参考になる。例えば,身柄が釈放されてから6月以内といった短期間のうちに再犯を犯す者の比率が高い罪名については,その期間に監督や支援を集中して行う必要がある。
 70万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,1犯目の罪名別に2犯目(罪名は問わない。)までの再犯期間を見たのが,7-3-4-2図[1]である。なお,同一再犯を繰り返す傾向のある風営適正化法違反,窃盗,覚せい剤取締法違反及び傷害・暴行については,その罪名ごとの傾向を明らかにするため,別途7-3-4-2図[2]において,同一再犯のみを行っている者に限定して見ることとした。

7-3-4-2図 1犯目から2犯目までの再犯期間別構成比

 2犯目までの再犯期間が最も短かったのは,1犯目の罪名が風営適正化法違反の者であり,35.6%の者が1年以内に再犯に及んでいる。このことは,風営適正化法違反のみを繰り返している者に限定した7-3-4-2図[2]を見れば,より明らかである(1年以内に再犯に及んだ者は41.5%)。
 1犯目の罪名が窃盗又は覚せい剤取締法違反の再犯者も,2犯目までの再犯期間が短い傾向が見られた。窃盗については,31.4%が1年以内,半数超の50.8%が2年以内に再犯に及んでおり,これを更に同一再犯のみを行っている者に限定して見ると,2犯目までの再犯期間が更に短く,36.0%が1年以内,57.7%もの者が2年以内に再犯に及んでいる。覚せい剤取締法違反については,27.3%が1年以内,約半数の48.9%が2年以内に再犯に及んでおり,同一再犯のみを行っている者に限定して見ると,更に若干再犯期間が短く,28.1%が1年以内,49.8%が2年以内に再犯に及んでいる。
 これに対し,窃盗,覚せい剤取締法違反と同様に,その後再犯に及ぶ者の比率が高い1犯目の罪名が傷害・暴行の再犯者については,再犯期間が2年以内の者が40%弱,5年を超えた者が35%前後と,比較的再犯期間が長い傾向が見られた。