前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成19年版 犯罪白書 第7編/第1章/1 

第7編 再犯者の実態と対策

第1章 はじめに

1 再犯研究の必要性と重要性

 我が国の一般刑法犯の認知件数は,平成14年に戦後最多を記録した後,4年連続で減少したが,依然として相当高い水準にある。また,窃盗を除く一般刑法犯の認知件数は16年まで増加を続け,その後2年連続して減少したものの,なお高水準にある(第1編第1章参照)。
 このような犯罪情勢をもたらす原因となっている犯罪者の中には,生涯で1回だけ犯罪を犯す者(以下,本章において「初犯者」という。)と繰り返して犯罪を犯す者(以下,本章において「再犯者」という。)が存在する。このうち,再犯者が特に問題なのは,犯罪者に占める人員の比率が比較的低いにもかかわらず,事件数全体に占める事件数の比率は,初犯者のそれに比べて格段に高いからである。例えば,1人で5回犯罪を犯せば,初犯者5人分の犯罪を犯したことに相当する。この事実は,これまで,国内外の複数の実証研究において明らかにされてきた。
 このように,犯罪対策において,再犯の防止は,非常に重要であり,古くから,刑事政策上の重要なテーマの一つとなっている。犯罪対策は,初犯の予防と再犯の防止とに大別されるが,欧米では,それぞれの法制度の下,再犯者に対して,これまで多様な刑事政策上の施策が採られてきた。
 我が国においても,前記犯罪情勢を改善する一つの効果的な方策として,再犯の防止に向けた有効な対策が講じられる必要がある。