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 平成19年版 犯罪白書 第6編/第6節 

第6節 裁判員制度

 平成16年5月28日に公布された裁判員法は,裁判員制度を創設した。同制度導入の意義は,広く国民が刑事裁判の過程に参加し,裁判の内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解と支持が深まり,司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになることにある。同法律は,一部の規定を除いて,公布の日から起算して5年を超えない範囲内(21年5月27日まで)において政令で定める日から施行される。
 裁判員裁判の対象となる事件は,原則として,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件(1号事件)及び法定合議事件であって,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件(2号事件)である。
 裁判員裁判では,判決等に係る事実の認定,法令の適用及び刑の量定について,裁判官3人及び裁判員6人(争いのない事件で,一定の条件を満たす場合には,裁判官1人及び裁判員4人)の合議体において評議を行い,裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見により評決する(事実の認定等についての評決の結果,賛成する意見が過半数であっても,それが裁判員のみの意見であった場合には,「裁判官及び裁判員の双方の意見を含む」という要件を満たさないため,その評決結果を合議体の判断とすることはできず,その場合は,事実の認定等ができなかったものとして取り扱うこととなる。)。
 裁判員の選任までの流れは,次のとおりである。まず,地方裁判所ごとに,選挙人名簿に登録された者の中から,毎年くじで選定された裁判員候補者名簿が作成される。そして,事件ごとに,裁判員候補者名簿の中から,くじで裁判員候補者を選定し,選任手続のため裁判所に呼び出す。裁判所は,一定の欠格事由,就職禁止事由,事件に関連する不適格事由等に該当する者,一定の辞退事由に該当し裁判所に辞退を認められた者及び検察官又は被告人から理由を示さない不選任請求をされた者を除外した後,裁判員を選任する。
 なお,裁判員選任の具体的な手続や日当等を定めた「裁判員の参加する刑事裁判に関する規則」(平成19年最高裁判所規則第7号)が平成19年6月13日に制定され,同年7月5日に公布された。
 また,平成19年5月22日に,部分判決制度の創設等を内容とする「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律等の一部を改正する法律」(平成19年法律第60号)が成立し,同月30日に公布され,裁判員法の改正に係る部分については同日施行された。部分判決制度とは,裁判員制度の下において,裁判所に同一被告人に対する複数の事件が係属した場合に,裁判員の負担を軽減するため,一部の事件を区分し,区分した事件ごとに審理を担当する裁判員を選任して審理し,有罪・無罪を判断する部分判決をした上,これを踏まえて,新たに選任された裁判員の加わった合議体が全体の事件について,終局の判決を言い渡す制度である。
 裁判員裁判対象事件の罪名別通常第一審終局総人員(最近5年間)は,6-6-1表のとおりである。

6-6-1表 裁判員裁判対象事件の罪名別通常第一審終局総人員

 平成18年においては,終局総人員は,前年比10.9%減少した。18年の終局総人員を罪名別に見ると,強盗致傷が813人(28.2%)と最も多く,次いで殺人675人(23.5%),現住建造物等放火270人(9.4%)の順であった。

 平成18年の通常第一審における裁判員裁判対象事件の有罪人員の罪名別科刑状況は,6-6-2表のとおりである。

6-6-2表 通常第一審裁判員裁判対象事件の罪名別科刑状況

 15年を超える有期懲役刑言渡人員のうち,20年以下が131人であり,罪名別では,殺人が61人と最も多く,次いで,強盗致傷(30人),強姦致死傷(16人)の順であった。また,20年を超え25年以下が17人であり,殺人が8人,強盗致死,強盗致傷,強盗強姦及び強姦致死傷が各2人,銃刀法違反が1人であった。25年を超える有期懲役刑言渡人員は9人であり,強盗致死が5人,強姦致死傷が2人,殺人及び強盗強姦が各1人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。