前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成18年版 犯罪白書 第6編/第4章/第2節/3 

3 年少者をねらう性犯罪の実態

 年少者を被害者とする性犯罪の実態の一端を知るため,出所受刑者について,受刑の原因となった性犯罪の内容を調査し,性犯罪の被害者に13歳未満の者が含まれている者99人を抽出した。そして,これら99人の受刑の原因となった性犯罪のほか,性犯罪前科及び出所後の性犯罪再犯の各内容を調査し,13歳未満の者(328人)を被害者とする性犯罪310件を抽出し,これらについて,犯行態様等の分析を行った。この調査の対象犯罪は,あくまで前記の基準で抽出したものであり,年少者を被害者とする性犯罪一般につき広く調査したものではないことに留意する必要がある。

(1) 年少者をねらった性犯罪の特徴

 年少者をねらった性犯罪の特徴は,6-4-2-11図のとおりである。

6-4-2-11図 年少者をねらった性犯罪の特徴

 犯行曜日別事件数では,平日の犯行が多く,日曜日及び祝日は少なかった。
 犯行時間帯(被害者に最初に接触した時間)別事件数は,午後2時台から4時台の時間帯に集中しており,他方,午後6時台以降午前6時台までの時間帯は,ほとんど犯行が行われていなかった。
 犯行場所(被害者に最初に接触した場所)別事件数では,路上が最も多く,次いで,住宅敷地内,公園の順であった。
 年齢別被害者数では,満7歳が突出して多い。被害者の性別を見ると,女児が293人(89.3%)で,男児が35人(10.7%)であった。被害者の面識の有無では,面識ありが15人で,面識なしが313人であった。

(2) 犯行手口

 犯行手口としては,被害者に対して最初に何らかの言葉を掛けるもの(173件),又は直接的に被害者の身体に対して接触するもの(124件)がほとんどであったが,深夜に睡眠している被害者宅に侵入するものもあった。
 言葉を掛けるものには,道案内を乞うことを装うもの,着衣の乱れを注意するもの,「かわいい猫がいる。」などと動物の話題で興味を引かせるもの,「有名人に会わせてあげる。」,「お金やお菓子を上げる。」などの誘惑的言辞のものがあった。

(3) まとめ

 最近,性犯罪等で子供が巻き込まれる悲惨な事件が後を絶たない。特に,子供の心身に与える傷は深刻であり,回復困難となっている場合が多い。平成18年6月から7月にかけて,内閣府が実施した「子どもの防犯に関する特別世論調査」において,4人に3人が「身近にいる子供たちが何らかの犯罪に巻き込まれるかもしれない」と不安を感じており,子供を取り巻く環境への不安が増大している。
 本調査で分析した年少者を被害者とする性犯罪の特徴を見る限りでは,犯行は平日が多く,犯行時間帯は午後2時台から4時台に集中し,犯行場所は路上が最も多かった。小学校の下校時間帯の帰宅途中で性犯罪被害に遭いやすく,年少者が1人になったときが特に危険であることがうかがわれる。
 登下校時に子供が犯罪の被害者とならないよう,政府においても,その防犯対策の強化に取り組んでいる。
 子供を犯罪から守るためには,警察等と地域が一体となって取り組む必要があり,各地域において,ボランティア,民間企業等による登下校時の監視,パトロール等が行われている。これらに加え,親等の送迎,集団登下校,スクールバス等の対策が講じられている。今後は更に,危険な場面に遭遇したときの対処スキルを子供に身につけさせるなど,子供の目線に立った上で,犯罪への不安をできるだけ減らすための活動を広く推進していくことが大切であろう。