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 平成17年版 犯罪白書 第4編/第6章/第3節/1 

第3節 英国

1 少年非行の動向

 英国では,刑事責任年齢は10歳である。成人年齢が18歳であることから,便宜上,10歳以上18歳未満の者を一括して少年と称することとする。刑事手続においては,有罪認定の時点で21歳未満の者について,宣告される処分に関して21歳以上の者とは異なる取扱いがされる場合があるため,便宜上,18歳以上21歳未満の者を青年,21歳以上の者を成人と称することとする。また,少年と区別するため,便宜上,10歳未満の者を子供と称することとする。
 犯罪は,正式起訴犯罪(indictable only offence),中間的犯罪(triable either way offence)及び略式起訴犯罪(summary offence)に分けられている。
 正式起訴犯罪は,最も重い犯罪類型であり,青年及び成人については,訴追(charge)を受けた治安判事裁判所(magistrates’court)から刑事法院(Crown Court)に事件が移送され,刑事法院において審理される。
 中間的犯罪は,中程度の犯罪類型であり,青年及び成人については,治安判事裁判所又は刑事法院において審理される。
 略式起訴犯罪は,最も軽い犯罪類型であり,青年及び成人については,治安判事裁判所において審理される。
 刑事法院においては,被告人が無罪の答弁をした場合には,12人で構成される陪審(jury)による審理が行われ,陪審が評決で有罪無罪を決定し,有罪の場合は裁判官が処分を宣告する。被告人が有罪の答弁をした場合には,陪審による審理は行われず,裁判官により処分が宣告される。
 治安判事裁判所においては,通常,非法律家である治安判事(lay magistrate)3人の合議体又は法律家である地方判事(District Judge)単独で審理を行う。
 正式起訴犯罪及び中間的犯罪(交通犯罪(indictable motoring offence)を除く。以下,本節において同じ。)の検挙人員の推移(最近10年間)を,少年,青少年及び成人の別に見ると,4-6-3-1図のとおりである。

4-6-3-1図 正式起訴・中間的犯罪の少年・青少年・成人別検挙人員の推移(英国)

 検挙人員総数は,1994年以降おおむね減少傾向にあったが,2001年に増加に転じ,2003年は72万1,433人となった。少年検挙人員は,1994年以降横ばい又は減少傾向にあり,2003年は13万6,288人となった。青年検挙人員は,1994年以降横ばい又は減少傾向にあり,2003年は10万9,737人となった。
 正式起訴犯罪及び中間的犯罪並びに特定5罪種の少年,青年及び成人別の検挙人員並びにその人口比(最近10年間)は,4-6-3-2表のとおりである。

4-6-3-2表 正式起訴・中間的犯罪・特定5罪種の少年・青年・成人別検挙人員・人口比(英国)

 正式起訴犯罪及び中間的犯罪について,各年齢層の検挙人員の人口比の推移を見ると,成人人口比は,おおむね横ばい傾向にあるが,少年人口比及び青年人口比は,おおむね低下傾向にあり,2003年は,それぞれ,2480.7,5506.4となった。
 特定5罪種について,各年齢層の検挙人員の人口比を比較すると,各年とも,すべての罪種について,青年人口比が最も高く,次いで,殺人では,成人人口比が高く,強盗,傷害,窃盗及び強姦では,少年人口比が高い。