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 昭和39年版 犯罪白書 第四編/第一章/二/4 

4 交通犯罪

 少年の道路交通法違反検挙人員は,昭和三七年には八一七,八一六人で,少年の特別法犯検挙人員の九七・九%にのぼり,全道交法違反検挙人員の一六・三%にあたっている。道路交通法違反の検挙人員は,このところ年ごとに増加の一途をたどり,昭和三二年を指数一〇〇とすれば,昭和三五年には一七一,昭和三七年には二一四で,わずか五年の間に二倍にふえている。そのほか,少年による業務上の過失致死傷や物件損壊なども少なくなく,少年の交通犯罪は今やカミナリ族の横行などとは違った意味で,きわめて重大な問題になっている。
 このような少年による交通犯罪の激増の実情から,違反少年の実態をは握するため,法務省刑事局の発意によって,同省矯正局,保護局,法務総合研究所および最高裁判所事務総局家庭局の協力で,昭和三七年九月から一二月までの間に,千葉,名古屋,広島の三地方検察庁本庁管内の事件五七二件を対象として,総合的な実態調査が行なわれた。
 調査の対象となったケースは,三犯以上の道路交通法違友者二三二人,業務上過失致死傷などの人身事故者三一四人,車両による物件事故者二六人であるが,IV-23表に示すとおり,道路交通違反者の中には無免許運転八二人(三五・三%),スピード違反九九人(四二・七%),その他五一人(二二・〇%)がみられる。また,人身事故者は前歴のある者一七八人(五六・七%),前歴のない者一三六人(四三・三%)の内訳になっている。

IV-23表 交通違反の種類(昭和37年)

 調査の結果の詳細について述べるわけにゆかないので,その問題点を要約すると次のようになる。
(1) 違反の種類では無免許運転が最も多く,スピード違反がこれに次いでいる。いわゆる「酔払い運転」は一件もみられない。
(2) 年齢構成では,一八才以上が六三%で圧倒的に多く,一七才以下は道交違反,とくに無免許運転が多い。
(3) 身分では,有職者が八二・五%で圧倒的に多く,学生・生徒は一五・九%,無職一・七%である。有職者の中には店員,工員,運転手または同助手などが多いが,仕事の内容をみると,配達,販売,外交などに従事している者が,三七・九%,運転,運送などが二六・六%,製造,修理一九・六%,その他一五・九%となっている。高校卒以上の者が一七・七%であるが,一般にスピード違反が多く,学歴は高いけれども学業成績の悪いのが特徴である。
(4) 無免許運転の中には,仕事のために行なっている者が多く,しかも雇い主や監督に当る者が黙認,助長したとみられるものが少なくない。一般的にいって,道交違反群には雇い主を保護者にしている者が多く,居住環境や生活態度の不良なものが多い。
(5) 道交違反では,「仕事のつごうで急いでいた」というような職務上の要求や道路条件など,本人以外の要因の認められる者も少なくないが,違反および事故の両群を通じて,本人の能力,性格,気分,注意力など違反者側におもな原因があるとみなされる者が多い。
(6) 無免許運転および前歴のある人身事故者には,それぞれ一〇・八%,八・〇%の低知能者がみられ,調査対象全員の六・七%が精神薄弱と診断されている。そのほか,三〇%から四〇%に性格的な問題が認められ,適性検査の結果,運転適性「不適」と判定された者が三二%におよんでいる。したがって,このような違反ないし事故を防ぐためには,運転免許交付の資格試験をもっと科学的に行なうとともに,違反者については,できるかぎり学問的な鑑別を行なって,不適格者が車を運転しないような措置を講ずることが必要である。