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 昭和39年版 犯罪白書 第一編/第三章/五/1 

五 暴力組織関係犯罪

1 暴力組織関係犯罪の現況とすう勢

 昭和三八年に検挙された暴力組織関係者は,全国で五一,〇六五人であって,これを主要罪種別にみると,I-12図に示すように,最も多い罪種は傷害で二九・一%を占め,次いで恐かつ一四・九%,暴行一一・七%,暴力行為七・一%などの順になっている。さらに暴力犯罪,暴力に関連ある犯罪およびその他の犯罪に大別してみると,暴力犯罪は,じつに七六・四%を占めており,これに,暴力に関連ある犯罪を加えた場合全体の八一・九%となる。したがって,暴力組織関係者の犯罪は,暴力的色彩のきわめて強い罪種に集中しているといっても過言ではない。

I-12図 暴力組織関係者罪種別グラフ(昭和38年)

 次に,I-36表によって,主要罪種別にそれぞれの罪種における全検挙人員の中で,暴力組織関係者が占める構成比率を検討すると,昭和三八年において三割以上の構成比率を占めている罪種は暴力行為,殺人および恐かつであり,傷害,脅迫,強盗などがこれに次ぎ,いずれも二割内外である。したがって,これらの罪種が暴力組織関係者になじみやすいものであると考えられるのに対して,窃盗,放火,詐欺などは,いずれも五%以下の構成比率を示しているにすぎず,暴力組織関係者に縁のうすい罪種となっている。

I-36表 暴力犯罪全検挙人員と暴力団所属者(昭和32年〜38年)

 同表によって,さらに最近七年間のすう勢をみると,まず総数の上では,昭和三二年いらい,波状に起伏はあるが,毎年五万人台を保ちつづけてきている。罪種別に検討すると,殺人は波状に推移しているが,構成比率の面で昭和三六年いらい三割台を保持していることが注意される。傷害は昭和三三年をピークとして数の上では,てい滅の傾向にあるが,構成比率はいぜん二割を保っている。暴行はおおむね六,〇〇〇前後の横ばい状態であるが,構成比率は,てい滅傾向にある。恐かつは昭和三七年に一万人の大台を割っており,構成比率も累年てい滅のすう勢にある。脅迫は数の上でも比率の上でも,昭和三三年以来減少を続けている。強盗は同じく昭和三三年以来数の上では,てい滅の傾向にあり,ついに一,〇〇〇人台を下まわるにいたった。強かんも昭和三三年以来数の上でも比率の上でも,しだいに減少している。窃盗,詐欺,放火はそれぞれ横ばい状態にあり,特記すべき変化はみとめられない。
 このように暴力組織関係者の犯罪は,量的にみた場合,最近の七年間においては全般的に横ばい,もしくはてい滅の傾向にあるのであって,この範囲では,むしろよろこばしいすう勢にあるとも考えられるのである。しかしながら暴力組織関係者については,その対象の特殊性からして,単に量的な統計的数字のみをもって,その動向を速断することは不当であって,最近の一部の暴力組織および組織関係者の動向については,注目を要すべきいくつかの徴候がみられており,問題はこの場合,量と並んで質的内容に,多く存在すると考えられる。次項以下に,これらの諸点をさらに詳しく検討しよう。