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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第4章/第4節/1 

第4節 満期釈放者に対する更生緊急保護

1 意義と沿革

 罪を犯した者も,いずれ刑期を終えて社会に戻る。しかし,中には頼るべき身寄りや帰住先がない者も少なくない。仮出獄者及び保護観察付き執行猶予者は,保護観察に付され,その間,必要があれば援護等といった更生のための保護の措置の対象となるが,「自由の身」である満期釈放者は,法律上保護観察など特別の社会内処遇を受けることはなく,したがって,援護等の対象となることもない。しかし,帰住先が定まらず,仮出獄の対象とならなかった満期釈放者が,病気,けがあるいは適当な住居や職業が見つからないといった事情を抱え,かつ,福祉機関等から必要な保護が受けられない場合,その再犯を防止して善良な社会人となることを援護するため,一定の措置を緊急に執る必要がある。これが更生緊急保護である。
 このような事業は,戦前は民間篤志家による慈善事業の色彩の強いものとして行われていたが,昭和25年施行の更生緊急保護法において,「自由の身」である犯罪前歴者に対する更生保護の措置を国の責任で行うことが規定された。更生保護事業法の施行後,更生緊急保護法の廃止(平成8年)に伴って,関連諸規定が更生保護の基本法である犯罪者予防更生法に移され,さらに,平成14年には,更生緊急保護の適用対象を一部広げるとともに,一定の条件の下で期間の延長を可能とする法改正が行われている。